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山形米沢の12ヶ月
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英国にBBGLという団体がある。朝食付宿(B&B)になっているかつての領主屋敷の
中で、庭が特に美しいB&Bを、BBGLとして認定している団体だ。イングリッシュ・
ガーデン
がブームだった約10年前、出版社の依頼でBBGLの庭や建物の写真を撮って回ったこと
がある。
空港でレンタカーを借り、2週間かけて1日500キロ近くを走り、50軒以上の写真を
撮ったが、出版直前に大手の出版社から全く同じ企画の本が出て日の目をみなかっ
た。
残念だったし、無報酬になったが、貴重な体験をさせてもらった。
ロンドンから車でほんの数時間行くだけで、緑なす台地は広がり、所々羊が草を食
む風景がごく普通に見られる。近くの町に入ると、そこにはシェークスピアの世界そ
のままの町並みを思わせる中世のたたずまいがあった。BBGLの建物は木造もあれば、
石造り、煉瓦造りもあり、壮大なものや豪華なものなどさまざまだが、一様に歴史や
伝統を感じさせてくれる。強盗対策のためか、撮影させてくれないほど貴重な什器や
装飾品などもあった。客室も同様で、一流ホテルに泊まるよりもずっと豊かな気分が
味わえる。なにしろ実際の領主屋敷だったのだから、想像力を上手く働かせれば歴
史の中の人物になることも可能だ。ただ、予約がなければ空室でも絶対に泊めてくれ
ない。英国は根強い保守社会なのだ。
スコットランドを除き、短期間で湖水地方を含む英国のほぼ全土を回れたのは、整
備された道路網のおかげだ。高速道路は無料だから安心して乗り回せる。英国の知人
は、ガソリンの半分は税金なのだから当然だという。日本もそうだ。車検時の車両重
量税、毎年の自動車税も払っている。それでも高速道路は無料どころか、鉄道運賃よ
り高い。高速道路が無料になれば人や物の移動が今以上に活発になり、暮らしはもっ
と豊かになるだろう。田舎暮らしも身近になり、心身ともに充実した生活が可能だ。
高額の高速道路はそれを阻む現代の関所ではないか。その関所を撤廃すれば新しい未
来が必ず待っている。中世から近世への扉が関所の撤廃で開かれたように、高速道路
の無料化で未来の扉は開かれるのだ。などと力説しても、日本人の知人のほとんど
は、
高速道路の無料化?そりゃ無理だ、と言う。勤勉で善良な人々よ、私たちはもっと豊
かに暮らせるのです、などと熱くなっても、誰にも相手にされないでいる。