文学shortコラム (アメリカ文学)


南部文学

 南部文学とは、アメリカ南部に基盤を持った文学のことですが、なぜ南部文学という固有のジャンルがあるのかというと、その地域に根ざした特殊性があるからです。

これまで見てきたアメリカ的なものは、すべて南部を除外した考え方でした。夢を求めて「充足した逃避」を繰り返し、常に移動しているのがアメリカ人でしたが、農耕中心の南部は、自分の故郷、土地、住む場所への強い帰属意識があります。個人主義、独立自尊の精神がアメリカ的だとすれば、自分の家族、住んでいる社会、共同体の一員としての意識を大切にするのが南部の特徴です。また、アメリカ人は未来を見つめ、ひたすら自己の可能性を追求しようとしますが、南部は自分たちの祖先や自分たちの歴史を強く意識しています。このあたりは「風と共に去りぬ」を見ればよく分かります。

 ピューリタンの最初のプリマス植民地建設が1620年でしたが、南部のヴァージニア州ジェームズタウンには、1607年にはすでに植民地が形成されていました。1614年にはヴァージニア産のたばこがロンドンに出荷されて人気を得ています。1619年には初めてのアフリカ奴隷が到着しています。このように南部は北部よりも早くから発展していますし、奴隷制度に支えられて、農業を基盤とした経済体制が確立していきます。独特の伝統的な社会を持ち、繁栄を謳歌していたのが南部ですが、南北戦争に敗れて、北部の植民地となって差別を体験し、自分たちの文化や伝統を自らが否定してしまいます。このような複雑な体験が特異な文化的風土を作り、南部的気質をもった南部人を生みました。それが文学に反映されていくことになります。

 個人主義、物質主義、産業中心主義、都市化というように、南部はさまざまにアメリカ化されていきますが、南北戦争前のより人間的であったと彼らが考える旧南部の伝統を再評価しようという運動、いわゆる南部ルネッサンスが、20世紀になって生まれています。

 ここでいうアメリカ南部とは、ヴァージニア、メリーランド、ノース・カロライナ、サウス・カロライナ、ジョージア、ケンタッキー、テネシー、ルイジアナ、ミシシッピー、アラバマ、ミズーリー、アーカンソー、フロリダ、ウェスト・バージニア、テキサス東部です。




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