実在だと錯覚  

私たちの人生が混沌としているのは、欲望と恐れに突き動かされて行動しているからでしょう。実在ではないものを実在だと思っているから、そのようにふるまうのでしょうが、実在ではないものを実在ではないと、きちんと知っていたら、欲望も恐れもなくなるのではないかと思うのです。

生き物が生き物を捕食して生き延びる自然の摂理は、残酷だと思いがちですが、残酷だと思う人間のふるまいの方が、よほど残酷です。人間がそれほどまでに残酷になるのは、欲望と恐れがあるからでしょう。欲望と恐れがあるのは、自分を実在だと勘違いして、自分や世の中に執着するからです。

自分が消滅する死が、最大の懸念である人間にとっては、死は最も避けるべきことでしょうが、死は必要です。正しく死ぬことは、実在ではない人間にとっては、必要なのです。にもかかわらず、自分を実在と勘違いしている人間は、できるかぎりの永続を欲望します。

私たちは、永続という偽りを欲望して、死という真実を恐れています。私たちがしなければいけないのは、真実を欲望して、偽りを恐れることでしょう。私たち人間に「苦」があるのは、このような間違った態度が原因ではないかと思うのです。



読んだ内容は

面白かった まあまあ つまらなかった

メッセージなどのある方は下記にお書き込み下さい。ない方はそのまま、送信ボタンを押して下さい。
 (返信をご希望の方はメールアドレスをお書き添え下さい)



Top ページへ