山形米沢の12ヶ月

1月 冬のイワシ雲

 「地球にやさしい」という言葉をよく聞く。地球環境の変化、とりわけ温暖化を防ごうということらしいが、46億年の歴史を持つ地球は、誕生時には生物が住めないほどの高温で、大気の96%は二酸化炭素だった。地球環境は、激変に激変を重ねて今日に至ったわけで、地球にしてみれば、今大騒ぎしている変化などないに等しい。やさしくしてもらわなくても地球は困らない。困るのは人間だ。地球を思いやっているようで、自分たちのことを考えているだけだ。だいたい地球にやさしくするほど人間は偉大なのか。無自覚にそのような言葉を使う人間のメンタリティの方が、環境問題より余程問題だという気がする。

 米沢スキー場のスキー場開きは、毎年12月12日に行われる。雪のゲレンデで神主さんがお祓いをし、関係者一同が柏手を叩いて安全を祈願する。安全祈願祭が終わると、リフトが動き、スキーシーズンが始まる。ところが、一昨年は雪が全くなく、ゲレンデは緑一面だった。ふと見上げると、青い空はどこまでも高く、いわし雲が風に流れていた。秋の大運動会。心地よい風も吹いていた。

 その前の年の年末年始には、団体客など、かなりの予約が入った。そこで送迎用に、700ccの大型スノーモービルを無理して購入した。その時は250ccのモービルはまだ盗まれていなかったので、これで客の送迎は万全だと思っていたら、雪が降らず、何の役にも立たなかった。私にはよくあることだが、ショックだった。

 冬にいわし雲を見たこの年は、年始開けに東北にある大学の医学部スキー部の大会が米沢スキー場で予定されていた。雪がなければ大会は当然中止になる。またか、まいったなあ、と思っていたら、雪は年末から降り始めた。よかった。吹雪も苦にせず降りしきる雪の中、モービルをフル稼働させた。  林間コースに雪だまりができ、モービルが転倒するほどの悪天候が続いたが、雪がある方がありがたい、と最初の頃は思っていた。ところが、吹雪はおさまらず、雪は延々と降り続き、積もりに積もり、電信柱の電話線に手が届きそうになるまでになった。こんなに降ったのは記憶にないと、近くのペンションのオーナーがいう。雪かきは難を極め、建物のあちこちが雪で壊れた。

 地球にやさしいというよりも、人にやさしい地球であって欲しい。


コメント欄 (返信をご希望の方はメールアドレスをお書き添え下さい)





Top ページ