更新日2010年7月15日

「アイディアマン」 (A MAN OF IDEAS)

本文テキスト

彼は母親と暮らしていた。母親は口数がすくなく、白髪で、顔が奇妙に灰 色がかった女性だった。彼らが住んでいた家は、小さな森の中にあり、少 し行くと、ワインズバーグのメインストリートが、ワインクリークを横切 っていた。彼の名はジョー・ウエリングといった。彼の父親は、この地方 では相当な有力者で、弁護士であり、コロンバスにある州議会の議員だっ た。

ジョーはといえば、身体が小さく、性格が町のどの人とも違っていた。彼は、 何日間も音もなく静かだが、ある時突然火を噴くという、小さな火山のよう だった。いや、火山とも違う。彼はテンカン持ちのような人だった。テンカ ンの発作が突然起き、目を吊り上げ、手足をぴくぴくさせるという、異様で 不気味な肉体的状況に、いつ陥るかもしれないので、いっしょに歩いている 仲間をびくつかせているような人だった。

彼は、そのような男だった。ただ、ジョー・ウエリングを襲った発作は、 精神的なもので、肉体的なものではなかった。彼はいろいろな思いつきに 取りつかれていて、何かの思いつきが生まれると、手のつけようがなかっ た。言葉が次から次へと口から転がりこぼれ出た。唇には奇妙な笑みが 浮かんでいた。金をかぶせた歯のふちは、光の中で輝いていた。彼は、そ ばにいる人に襲いかかり、まくしたてた。そばにいた人間は、逃れようが なかった。興奮したジョーは、相手の顔に息を吹きかけ、目をのぞき込み、 人差し指を振るわせながら、相手の胸を突き、よく聞くよう要求し、それ を強いた。

当時、スタンダード・オイルカンパニーは、今のように、石油を大型のワ ゴンやトラックで消費者に配達していたわけではなく、食料品店や金物店 のような商店に配達していた。ジョーはワインズバーグや、ワインズバー グを通っている鉄道沿線のいくつかの町で、スタンダード・オイルの代理 人をしていた。彼はお金を集めたり、注文を取ったりというようなことをし ていた。州議会議員である彼の父が、彼のためにこの仕事を手に入れてく れたのだった。

ジョー・ウエリングは、ワインズバーグのあちこちの店に出入りした。無口 で、おそろしくていねいで、商売熱心だった。人は警戒しながら、興味を隠す ことのできない目で彼を見た。彼らは、逃げる準備をしながら、彼がはじけ るのを待っていたのだ。彼を襲う発作は、害のないものだったが、笑い飛ば すことはできなかった。発作は計り知れないものだった。アイディアが浮か ぶと、ジョーは相手を威圧した。彼という人間は、巨大になった。巨大にな った彼は、話しかける男を圧倒し、吹き飛ばした。あらゆる人を吹き飛ばし た。彼の声が聞こえる場所に立つ、あらゆる人をだ。

シルベスター・ウエストのドラッグストアーでは、4人の男が立って競馬の 話をしていた。ウエスリー・モイヤーの雄馬、トニー・ティップは、オハ イオ州のティフィンで行われる6月のレースに出走を予定していたが、それ までで最も手ごわい相手とぶつかるという噂が飛びかっていた。そのハー ネスレースには、偉大なる騎手、ポップ・ギールズが出場するといわれて いた。トニー・ティップは勝てないのではないかという懸念が、ワインズ バーグの空気に重くのしかかっていた。

そのドラッグ・ストアーに、ジョー・ウエリングは、網戸を荒々しく払いのけ て入った。取りつかれたような奇妙な光を目に湛え、彼はエド・トーマスに 襲いかかった。エドはポップ・ギールズを知っていたし、トニー・ティップが 勝てるかどうかについて、彼の予想は重要だと思われていた。

「ワイン・クリーク川の水かさが増しているぞ」

マラトンの戦いでギリシャ軍勝利の知らせをもたらしたフェイディッピデス そっくりに、ジョー・ウエリングは叫んだ。彼は、エド・トーマスの広い胸 にある刺青を、指でトントンと叩いた。

「トラニオン橋のそばでは、橋から11インチ半のところまで水がきているぞ」

彼はわめき続けた。歯の間からヒューヒューとわずかな音をさせ、言葉が矢継 ぎ早に飛びだした。迷惑だがどうすることもできないという表情が、4人の顔 には浮かんでいた。

「ぼくは事実を正確に知っているんだ。いい加減なことは言わない。シニング 金物店に行って、物差しを手に入れ、戻って測ったんだ。目を疑ったよ。知っ てるだろ、ここ十日、雨が降らなかったってこと。最初はどう考えたらいいか、 分からなかったよ。いろんな考えが頭の中を駆け巡ったね。地下水路があるん じゃないかとか、湧き水じゃないかとか。ぼくの考えは地下深くもぐって、探 りまわったね。ぼくは橋の上にすわって、頭を擦った。空に雲はなかった。ひ とつもなかった。通りに出てみれば、すぐに分かることだ。雲はなかった。今 も雲はない。うん、そうだ、雲はあった。どんな事実でも、隠したくはないか らね。地平線近くの西の空に雲はあった。人の手の大きさぐらいの雲だけどね。

「それが水かさが増したことと関係があるとは思わなかったんだ。そうなんだ。 だから、ぼくがどんなに戸惑ったか、わかるだろ。

「そこで、ハッと気がついたんだ。笑ったね。あなたたちだって笑うだろ うね。そう、メディナ郡に雨が降ったからだ。おもしろいだろ、え? 列 車や手紙や電報がなくても、メディナ郡に雨が降ったって分かるんだ。ワ イン・クリーク川は、そこから流れてくるからね。誰もがそのことを知っ ている。小さな愛しいワイン・クリーク川が、我々に知らせをもたらして くれたんだ。おもしろいいじゃないか。笑ったね。あなたたちにも知らせ てあげようと思ったんだ。どうだい、おもしろいじゃないか」

ジョー・ウエリングは向きを変えて、戸口から出て行った。彼はポケット から手帳を取り出すと、立ち止って開いたページに指を走らせた。また、 スタンダード・オイル・カンパニーの代理人の仕事に没頭していた。

「ハーン食料品店は、そろそろ石油が切れる頃だ。行ってみようかな」

彼はぶつぶつ呟きながら、過ぎ去る人に、右、左とお辞儀をしながら、通 りを急いだ。

ジョージ・ウィラードは、ワインズバーグ・イーグル紙で働くようになっ た頃、ジョー・ウィリングに悩まされた。ジョーはジョージがうらやまし かったのだ。彼は自分こそが新聞記者になるために生まれてきたと思って いた。

「私がするべき仕事なんだよ。あたりまえだろ」

彼はドーアティ飼料倉庫 の前の歩道で、ジョージ・ウィラードをつかまえて、はっきりそう言った。 その眼は輝き、指は震えていた。

「もちろん、スタンダード・オイル・カンパニーの仕事の方がもっと儲か るがね。ちょっと言っておきたかったんだよ」彼は続けた。

「君には何の反感も持っていないが、私こそが君の仕事をするべきなんだ。 片手間でもできるからね。私なら、あちこち駆け回って、君には絶対に見 えないものを見つけてくるよ」

 ジョー・ウェリングは、だんだんと興奮し、若い新聞記者を飼料倉庫の 表の壁に圧しつけた。彼は、目をくるくるさせ、細い手で神経質そうに髪 をかき上げた。すっかり自分の考えに取りつかれているようだった。笑み は顔いっぱいに広がり、金歯が輝いていた。

「手帳を取り出せよ」ジョーは命令するように言った。

「手帳をポケットに入れて持ち歩いてるんだろ、え? とっくに知ってるよ。 さあ、こう書くんだ。この前こう考えたんだ。たとえば、崩壊。さて、崩壊 とは何だ。火だよ。火は木材やその他のものを焼きつくす。そんなこと考え たこともないだろ。そうだろうな。この歩道だって、この飼料倉庫だって、 あそこのあの通りの木々だって、みんな火がついている。燃えてるんだよ。 目に見える崩壊が、いつも進行中さ。休むことがない。水やペンキにも食い 止められない。鉄でできているものだったら、どうだろう? さびる。そうだ ろ。それも火のひとつさ。世界には火がついてるんだ。君の新聞記事を そんな風に始めてみろよ。大文字でズバリ書く。“世界は燃えている”と。 みんな目を見張るぞ。みんなが君には才能があると思うだろうな。私はかま わないよ。君をうらやましいとは思わないからね。こんな考えなんて、ちょっ と頭をひねっただけなんだ。私には新聞が作れるんだよ。君はそのことを認め なくちゃいけない。

ジョー・ウェリングは、ぷいと向こうを向くと、足早に去って行った。5、6歩 行ったところで、彼は立ち止り、ふり返った。

「私はこれからも君に意見をするつもりだよ」彼は言った。

「君を一人前の新聞記者にするつもりだ。私自身が新聞を創刊するべきなんだ。 これこそ私がしなければならないことなんだよ。私ならすばらしい新聞記者にな るだろうよ。誰もが知っていることだがね」

ジョージ・ウィラードがワインズバーグ・イーグル紙で働き始めて1年の 間に、ジョー・ウェリングには4つの出来事があった。彼の母親が死んだ こと、ニュー・ウィラード・ハウスに住むようになったこと、恋愛をした こと、それから、ワインズバーグ・ベースボール・クラブを設立したことだ。

ジョーがベースボール・クラブを設立したのは、コーチになりたかったからだ。彼はコーチとして、街の人たちに尊敬されはじめた。

「あいつはすごいやつだ」

ジョーのチームがメディナ郡のチームを打ち負かすと、人々はそう言った。

「あいつはみんなを団結させる。まあ、見てみろよ」

野球場では、ジョー・ウェリングは、一塁の横に立った。彼は興奮して、 身体全体を震わせた。選手たちは全員、思わず彼をじっと見た。相手チーム のピッチャーは、動揺を抑えられなかった。

「今だ、今だ! 今だ! 今だ!」ジョーは興奮して叫んだ。

「オレを見ろ。オレを見るんだ。オレの指を見ろ。オレの手を見ろ。オレ の足を見ろ。オレの目を見ろ。さあ、ここで、みんなでかかるんだ。 オレ を見るんだ。オレを見ていりゃ、ゲームの流れがすべて分かるんだ。オレ といっしょに動くんだ。オレといっしょに動くんだ。オレを見ろ! オレを 見ろ! オレを見ろ!」

ワインズバーグ・チームの走者が塁上にいると、ジョー・ウェリングは 霊能者のようになった。塁上の走者は、自分たちに何が起きているのか を自覚することなく、ジョーを見ては、見えない紐で操られているかの ように、ベースからじりじりと離れ、進んだり戻ったりした。相手チー ムの選手もジョーを見た。彼らは術中にはまっていた。しばらくジョー を見た後、かけられた魔法を解こうとするかのように、誰もがボールを 無茶苦茶に投げつけた。コーチが放つ獣のような雄叫びの中、ワインズ バーグ・チームの走者はホームを駆け抜けた。

ジョー・ウェリングの恋愛事件は、ワインズバーグの人々を刺激した。始 めは、誰もがひそひそ話し、頭を振った。人々は笑おうとしたが、その笑 いには無理があり、不自然だった。ジョーが恋したのは、サラ・キングと いう、やせた、悲しそうな顔つきの女性で、ワインズバーグ墓地の門の向 かい側にあるレンガ造りの家に、父親や兄といっしょに住んでいた。

キング家の二人、父親のエドワードと息子のトムは、ワインズバーグでは 評判が良くなかった。傲慢で危険な人物だといわれていた。彼らは南部の どこかから、ワインズバーグにやって来て、トラニオン道路のそばでリン ゴ酒工場を経営していた。トム・キングはワインズバーグに来る前に、人 を殺していると噂されていた。彼は年齢が27歳で、あし毛のポニーを町の 中で乗り回していた。歯の上に垂れさがった、長い茶色の口ひげをたくわえ、 手には物々しい物騒な杖をいつも持っていた。彼は一度、その杖で犬を殺し たことがあった。靴屋のウィン・ポージの飼い犬で、舗道に立って尻尾を振 っていたのだ。トム・キングは、一撃でその犬を打ち殺した。彼は逮捕され、 10ドルの罰金を払った。

父親のエドワード・キングは、背が低く、通りで人とすれ違うと、奇妙で 陰気な笑いを浮かべた。笑う時には、右手で左のひじを引っ掻いた。この 癖のために、彼のコートの袖はほとんど擦り減っていた。神経質そうにあ たりを見回し、笑いながら通りを歩いている時などは、無口でどう猛な顔 つきの息子以上に危険な雰囲気をただよわせた。

サラ・キングが夕方にジョー・ウェリングと出歩くようになると、人々は 心配し、頭を振った。彼女は背が高く、青白い顔をし、目の下には黒いく まがあった。二人がいっしょにいると、滑稽に見えた。木々の下を二人は 歩き、もっぱらジョーがしゃべった。彼の情熱的で熱烈な求愛の言葉は、 共同墓地の壁の暗がりや、浄水場貯水池から公共広場へと続く丘の木々の 奥の影から聞こえ、さまざまな商店で何度も噂された。ニュー・ウィーラ ード・ハウスのバーでも、人々はジョーの求愛を笑い話にした。笑いが終 わると、沈黙があった。ジョーが監督をするワインズバーグ野球チームが、 勝ち続けていたので、町の人々は彼に一目置き始めていたのだ。良くない ことが起きると感じながら、人々は不安な気持ちで笑い、じっとしていた。

いつするのかと町の人たちをやきもきさせていたが、キング家の二人と ジョー・ウェリングとの話し合いは、土曜日の午後遅く、ニュー・ウィ ラード・ハウスのジョー・ウェリングの部屋で行われた。その様子はジ ョージ・ウィラードが目撃した。それはこんなふうだった。

若い新聞記者のジョージ・ウィラードが、夕食をすませて部屋に戻る時、 トム・キングとその父親が、薄暗がりの中、ジョーの部屋に座っているの を見た。息子のトムは手に物々しい杖を持ち、ドアの近くに座っていた。 父親のエドワード・キングは、落ち着かない様子で歩き回り、右手で左の ひじを引っ掻いていた。廊下には人気はなく、静まりかえっていた。

ジョージ・ウィラードは、自分の部屋に行き、机の前に座った。原稿を書 こうとしたが、手が震えてペンを持つことができなかった。彼もまた、落 ち着かない様子で、部屋の中を歩き回った。ワインズバーグの他の人たち と同じように、彼も当惑して、どうしていいか分からなかったのだ。

ジョー・ウェリングが、駅のプラット・ホームからニュー・ウィラード・ハ ウスに向かった時は、7時半だった。急速に暗くなろうとしていた。彼は雑草 や牧草を、両手にいっぱい持っていた。身体が震えるほど怖かったのだが、草 を持ち、プラット・ホームを小走りに歩いている小柄で元気な姿を見ていると、 ジョージ・ウィラードは、可笑しくなった。

若い新聞記者のジョージ・ウィラードは、不安と恐怖にふるえながら、ジ ョー・ウェリングが二人のキング氏と話している部屋のドアの外、廊下に ひっそりとたたずんでいた。罵る声や、父親のキング氏の神経質そうにク ックッと笑う声が聞こえたが、何も聞こえなくなった。突然、ジョー・ウ ェリングの、よく通る鋭い声が噴き出した。ジョージ・ウィラードは笑っ た。彼には理解できた。ジョー・ウェリングが目の前のあらゆる男を圧倒 したように、彼は今部屋の中にいる二人の男を怒涛の言葉で打ちのめして いたのだ。廊下で聞いていた彼は、驚いたまま、行ったり来たりした。

部屋の中でジョージ・ウィラードは、トム・キングのうなるような脅しを、 気にもかけていなかった。自分のアイディアに没頭し、ドアを閉めた。ラン プに灯りをともすと、手に持っていた雑草や牧草を床に広げた。

「これはすごいものなんですよ」彼は厳かに話した。

「これについてはジョージ・ウィラードに話して、記事にしてもらうつもり です。あなた方がここにいてくれて嬉しく思います。サラもいてくれたらな あ。これまでもあなた方の家に行って、僕のアイディアを聞いてもらうつも りだったんです。面白いアイディアですからね。サラが行かせてくれなかっ たんです。けんかをするって言うんです。ばかげてますよね、そんなこと」

ジョー・ウェリングは、当惑した二人の男たちの前を慌ただしく往ったり 来たりしながら、話し始めた。

「いいですか、思い違いはしないでください」彼は声を大にして語った。

「これは大きなことなのです」その声は、興奮のあまり、上ずっていた。

「黙って聞いていていてください。興味がわいてきますよ。分かってるん です、興味がわくって。こう仮定します。すべての小麦、トウモロコシ、 カラスムギ、エンドウ豆、ジャガイモが、何らかの奇跡で一掃されたとし ます。さて、我々は、ほら、ここ、この郡にいます。我々の周囲は高い塀 で囲まれています。このように仮定します。誰もその塀を越えられない。 地上のあらゆる収穫物はだめになっていて、こんな野生のもの、こんな 雑草以外、何も残らない。我々はおしまいでしょうか。どうです。我々 はおしまいでしょうか」

トム・キングは、ふたたび、うなり声をあげた。しばらくの間、部屋から は、何も聞こえなかった。それからジョーが、また、急に自分の考えを説 明し始めた。

「当分は、困るでしょう。それは認めます。認めなければならないと思っ ています。ごまかすことはできない。我々はつらい目に合うでしょう。肥 った胃袋がいくつもぺしゃんこになるでしょう。だけど、我々はそんなこ とでくじけたりしません。そう断言します」

トム・キングは朗らかに笑い、エドワード・キングの神経質そうな笑い声が、 寒々と、家中に響き渡った。ジョー・ウェリングは、息もつかずに続けた

「我々は、当然、新しい野菜や果物を育てるようになります。すぐに失った ものすべてを取り戻すでしょう。いいですか、私は新しいものは古いものと 同じと言っているのではありません。そんなことはない。多分、古いものよ り良質かもしれませんし、それほど良くないかもしれません。面白いでしょ う。どうです。このことについて考えてみてください。頭が働き始めたんじ ゃありませんか」

部屋の中が静かになった。それから、また、父親のエドワード・キングが、 神経質そうに笑った。

「いやあ、サラがここにいてくれたらなあ」ジョー・ウェリングは大声で そう言った。

「どうです、お宅へ行きませんか。彼女にこの話をしたいんです」

部屋の中から椅子を引き摺る音がした。ジョージ・ウィラードが部屋に戻 ったのは、この時だった。彼は窓から身を乗り出し、ジョー・ウェリング がキング家の二人とともに通りを歩いて行くのを見た。トム・キングは、 この小さな男に歩調を合わせるために、極端に大股で歩かなければならな かった。彼は大股で歩きながら、身を乗り出して耳を傾けていた。夢中に なり、魅せられていたのだ。

ジョー・ウェリングは再び興奮して話した。

「トウワタを例にとってみましょう」彼は叫んだ。

「トウワタを使って、いろいろなことができるかもしれないでしょう。ち ょっと信じられないことです。あなた方に考えてもらいたいんです。私は あなた方二人に、考えてもらいたいんです。新しい野菜の世界が始まろう としているのが分かるでしょう。面白いじゃありませんか。これはちょっ とした思いつきです。サラに会ったらびっくりしますよ。彼女はこの思い つきを理解してくれますからね。興味を持ってくれます。サラはいつもい ろんな思いつきに興味を持ってくれるんです。サラが相手だと、頭が良す ぎるぐらいでなければね。そうでしょう。あなた方もご存じのはずだ」

〜「アイディアマン」終わり〜







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