読後感想





おかげさまで「とりもどされた改心」を読了いたしました。
みなさまからお寄せいただいた読後感想メールを
ここに紹介させていただきました。



更新日1999年10月08日




● あとがき ●

 今年の五月に両神山に行った時のことだ。登山口でテントを張って翌朝早く から登ろうと計画し、秩父の渓谷を車で上流へと上っていった。深い山の中だ が、観光開発はされているようで、道路そばにオートキャンプ場があった。夏 だけ運営のようだが、これ幸いとテントを張り、テーブル、椅子、バーベキュ ーコンロと、登山に来たのかキャンプに来たのかわからなくなった。食事を終 え、ウイスキーの水割りを飲みながら薄暗い空を横切る稜線を目で追っている と、一台の車が止まった。中から人が降りてこちらに近づいてくる。閉鎖中の キャンプ場にテントを張っているのだ、何をいいに来たのか、いわれなくても 分かる。
 ここは夏だけ開放しているキャンプ場だから別の方法を考えてくれという。 すぐに出て行けということだろう。正論だ。ただ、酔った状態で暗い山道を運 転するのは気が重かった。だが、相手は容赦してくれない。山岳救助隊のワッ ペンを懐中電灯で照らしながら、まだ制服で来ていないうちにとか、手錠とか、 出てくる言葉は尋常でない。あなたは誰なのですかと訊ねると、埼玉県警と書 かれた白い板切れを黄門様の印ろうのごとく突きつけてくる。警察の方ですか と強く訊ねると、何もいわずに去って行った。言動からして警察でないとは分 かるが、もともと悪いのはこちらなので、テントをたたんでその場を立ち去っ た。
 ベン・プライスが、正義をふりかざして、スペンサーの正体見破ったとばか りに、ジミーを逮捕していたらどうなっただろう。考えただけでも寒々とする し、そんな物語を誰が読みたいだろうか。
 正しいことをして人を不幸にする例はよくある。善行は屁のようなものだ、 気持ちのいいのは本人だけで、回りはただ臭いだけと誰かがいっていたが、こ れはいい過ぎとしても、自己主張を正義の名で行っている人を結構目にするし、 それを支持する人も多くいる。正しいことをしているのだから反論のしようが ない。世の中善人だらけで、みんなが良い子になりたがっている。良い子で良 い行いをしていれば、誰にも文句をいわれることはないし、何よりも大きな顔 をして生きていける。
 ジミーを逮捕することで、ベン・プライスの名声は高まり、社会正義は達成 される。では、どうしてそうしなかったのだろう。それは彼が自分で考え行動 する、自立した人間だったからではなかろうか。
 閉息感という言葉は今という時代を表すキーワードのひとつになっているが、 現実が息苦しいのは、目先の利益を考えるあまり、自分で考え行動することを せず、社会の作り上げた価値基準に全てをゆだねているからではなかろうか。 みんながどうすれば良い子になれるか、大きな顔ができるか、そればかりに苦 心し、現実世界は読みたくない物語ばかりが作られていく。私自身ときどきそ んな物語に荷担している自分を見出して嫌になることがあるが、嫌になるのは 私だけではないはずだ。読みたくない物語は、誰にとっても身近に存在する現 実だ。現実は至る所に罠がしかけられている。
 誰に何と罵られようと、自分で考え行動する自立した人間になること、先の 見えない不安定な今ほど、個の自立が求められている時代はない。それは分か っている。だが、そうそう簡単に自立などできるものではない。できないなが らも、現実という罠にはまった自分を救おうともがいているのも現実だ。大切 なのは罠にはまっていると気づくことで、そこから抜け出せるか抜け出せない かは別にして、抜けだそうと悪戦苦闘することなのではないか。
 この物語を読んで、いつにない解放感があったのは、現実というもやの中で 喘ぐ中、一瞬にしても出口が垣間見えたからかもしれない。





「とりもどされた改心」を大変楽しみました。有難うございました。 英語の実力向上に、翻訳の妙味、ストーリーの楽しさ、また「あとがき」のコメント を含め素晴らしいものでした。 次ぎのストーリーを楽しみにしています。よろしくお願いいたします。 山岸宜公




途中から参加しているのですが、面白かったです。
一回の量もちょっと物足りないくらいで続けて読むにはちょうど良いと思います。

匿名希望25才




ご苦労様でした。

この物語のあらすじは知っていましたが英文を読むのは初めてで、毎回楽しく読ませていただきました。私は今年1月から internet,e-mail の世界に入った newcomer ですが、いいメルマガに出会うことができて、幸せ者だと感謝しています。これからも続けていってくださるようお願いします。
また、最終回のまとめの文章、含蓄のある文章で、考えさせられました。物語の途中でも時折、このような文章を載せていただけたらと思います。




メールマガジン「英米文学の名作」をいつも読ませていただいています.

今回「とりもどされた改心」の最終回を読んで,一番の感想は,
「ジミーが逮捕されずに,ほっとした」という感じです.あとがきで書かれていた,

「この物語を読んで、いつにない解放感があったのは、現実というもやの中で喘ぐ中、一瞬にしても出口が垣間見えたからかもしれない。」

ということにも,非常に共感を覚えました.
私は今,大学院生で,英語の論文を読んだり,英語の講演を聴いたり,またそのうち国際会議での発表をしたり...と,英語学習の必要性に迫られて,このメールマガジンの購読を始めました.
英語学習用のメールマガジンは多数ありますが,このマガジンは内容的に興味を持って読めたので,有り難かったです.

今後も続けて購読させていただきますので,よろしくお願いします.




とても面白く読ませていただきました。

英語力がないので、辞書を引きながら読むのは苦痛ですし、辞書を引きながらだとおもしろさも半減してしまいます。そのくせ、やはり原文でのおもしろさもある程度味わってみたいと思います。
というわけで、この企画はこれらの要求を満たしてくれるものとして、また、長さも一気に読める程度で大いに有り難い存在です。
どうかこれからもよろしく。

浅見勝彦




量を2倍にしてほしかったです。あとがきが面白かったです。
これからの健闘を心から祈っています!

世田谷区 あぴょん13




起承転結という言葉が好きです。この短編ためにあるような言葉だなと感じました。しかもすがすがしい「結」で大変良かったです。また、楽しみにしています。






O.ヘンリーは日本語でだいたい読んだつもりだったのですが、若いころのことなので、記憶が曖昧になっていて、この物語は、読んだような、読まないようなという感じでした。
それにしても、原文で読むというのはいいですねえ! O.ヘンリーのことですから、最後まで安心して読めました。そのうえ、英語の格好の錆落としになりました。
それに、意外に(失礼!)よかったのが、「あとがき」です。
今後も期待しています。

日本語、英語を問わず、読書がままならぬ環境なので、このレターをいつも首を長くして待っています。
西府 章




O.ヘンリーは大昔学生の頃少し読んだことがあり、「とりもどされた改心」 は懐かしく叉面白く読ませて頂きました。全文翻訳は大変骨の折れる仕事と思います。クリマスキャロルは長すぎて無理とのことですが、今度は、全訳ではなく重要なまた、難しい部分だけの部分訳にされたら如何ですか?そうすれば、時間は可成り短縮できるのではないでしょうか。
読書にもリズムがあり、あまり長くなると間延びして興味を失う恐れもある とおもいますが。
斎藤 矗一




 初めまして。いつも楽しく拝見しています。
今までにいくつかO.Henryの作品を読んだことがありますが、心地好い読後感の 残る作品が多いですよね。

 今の世の中には、偽善や歪んだ価値観が蔓延っているように私には思われます。こんな時代に生きる私達にとって、真の善行の定義を探し求めたり、自ら進んで正義を行おうとすることは、言葉で言い表せるほど簡単な物ではないと思います。だからこそ、多くの人々の心は安易な方向に傾きやすく、他人の価値観に同調するだけで、自分の意見を持とうとしなかったり、目先の利益や快楽だけを探求するに留まったり、固定観念から抜け出そうとせずに、物事の見方を誤ったりしてしまうのではないでしょうか?
 誰もが良い子になる必要はないと私は思います。大切なことは、自分自身の内面をときどき振り返って、自分の考え方はほんとうに正しいのか、自分の行いは人間として恥じない物か、自分は見方を誤ってはいないのかなどと自問してみることではないでしょうか?もし、自分の中に正すべき点を見出したなら、それを直視して正そうという意識を持つことが、純粋な正義に出会う第一歩なのだと私は考えます。
 社会で取り沙汰されるのは、表面的な事柄ばかりです。ゆえにそこに生きる人々も、自然と表面ばかりを気にするようになるのでしょうが、重要な物はたいてい奥深くに隠されている物です。人々がもっと内面に目を向けるようになれば、歪んだ見方も偽善も、いずれは無くなっていくように私には思われるのですがいかがでしょうか?

 O.Henryの作品から、少し考えさせられました。次の作品も期待しております。




 「取り戻された改心」とても面白かったです。特に主人公が女性に一目惚れしてから急速に変わっていく所と、最後のどんでん返し。ジミー・バレンタインならあの金庫を開けられると思いながらも開けてしまっては彼の正体がばれてしまうのでハラハラどきどきしながら読みました。最後に刑事が彼を逮捕せずに立ち去った所は、とてもさわやかな思いがしました。
ところで、英語の読解力のない私が読み進んで行けるのかと不安でした。最初のころは何度読んでもわからず難儀しましたが、不思議なことに何度も繰り返してやっているうちに、少しずつ意味が何となくわかる様になったではありませんか。一度でわからなくても二度三度と読み返していると、段々意味がつかめて行けるのです。文節を区切って理解することに慣れたからなのでしょうか。とにかく英語の文章におっくうがらずに触れて行こうという気になったことはたしかです。

次の作品も期待しています。
KENICHI KAWASE




とても面白かったです。大変でしょうけれど,ぜひ続けて下されば大変ありがたいです。
今の程度の長さと頻度がちょうどいいです。テクストが長くなりすぎるというのならば,短編だけで結構。あるいは、思い切って,詩などに踏み込んでみることは不可能でしょうか。独断と偏見を振りかざして詩を鑑賞,評価するのも 面白いと思います。
いずれにせよ、止めないでください。毎回楽しみにしているファンが確実にいます。今年は暑い,暑い。ご健康大切にご自愛ください。 gone




とうとう、最終回を向かえ、ちょっと淋しい気分を味わってます。 結構、為になる表現も多く物語なので先が楽しみでした。 次の作品も楽しみにしてますので、よろしくお願いします。
K.Morita.





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