文学shortコラム (アメリカ文学)


シャーウッド・アンダーソン(1876-1941)

 アンダーソンは、農業中心の社会から工業中心の社会へと変わっていく19世紀後半のアメリカで、その変化の一番激しかった中西部のオハイオで生まれ育ちました。彼は中西部の牧歌的な世界と、その一見平和な生活の表面下に潜む人間の心理や衝動を描いた作家です。また、機械文明の侵入によって人々の生活やものの考え方が変わっていく姿や、精神の荒廃も描きました。19世紀から20世紀にかけてのアメリカ社会の変化を描いたといってもいいかもしれません。

 代表作のひとつ「ワインズバーグ・オハイオ」(1919)では、登場人物は例外なく、孤独、愛の欠如、疎外に悩んでいます。その悩みはそれぞれが一人で悩んでいるため、みんながそれぞれの深い自己の殻の中に閉じこもり、他者の状況や町全体についての認識をもてずにいます。

 ピューリタン的抑圧と田舎町の因習の中、町の住人は鬱屈した欲望を奇矯な行動で爆発させます。愛と理解を求めるこのような衝動は、性的色彩を帯び、性が孤独な人間同士の理解を助ける神秘的な力をそなえているかのように描かれています。

 「プア・ホワイト」(1920)では、農業の機械化により、田園の美しい自然が荒らされていく姿や、金儲けがすべてに優先し、これまでの価値観が崩れ、町の人々の精神が荒廃していく姿を描いています。

 この作家は近年読まれ始めたということですが、この小説世界にある中西部の田舎町の閉息状況と現代とに共通したところがあるからでしょう。




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