推理 〜ビクトル・ユーゴーの性格


ビクトル・ユーゴーと聞いて大半の方は「誰だっけ?」首を傾げられるかもしれない。 文学に明るい方なら「『レ・ミゼラブル(ああ無情)』の著者だ」と気が付かれるだろうか。 雑学に詳しい方なら「ああ、『世界一短い往復書簡』ね」と思い当たられるかもしれない。 『レ・ミゼラブル』のあらすじは割愛するが、『世界一短い往復書簡』のことを述べよう。 今回はそれをもとにユーゴーの性格を推理しよう。 世の中には他にも彼に関する文献はあるかもしれないが、今回は触れない。だって面倒じゃん。

ユーゴーが『レ・ミゼラブル』を出版したときその本の売れ行きを心配して出版社に問い合わせた。
「?」
それを見た出版社は次のように返事をした。
「!」
つまり、
「売れ行きはどう?」
「驚くほど売れたよ!」
という意味だったということだそうな。

ここから何が推測できるか。

まず誰でも気がつくだろうが、ユーゴーは面倒くさがりだということである。 いかな文豪とは言え、己の作品の売れ行きは最も気になるところであろう。 それを下手したら誤解されるかもしれない「?」の一文字で問い合わせを済ませようというのだから、 これを面倒くさがりと言わずして何と言おう。 「売れ行きはどう?」と言いたくても出版社の社員はユーゴーと同等のウイットを持ち合わせているとは限らない。
「原稿料まだ?」(1862年のフランスではどういう契約が一般的だったのか知らないが)
「次の小説の案ができたから見てくれない?」
「今度、飲みに行かない?」
どうとでも取れるではないか。
故に結論その1、ユーゴーは面倒くさがりやさん。

そして返事が「!」であった。ユーゴーはそれを見て安堵した。 待て待て、それが「驚くほど売れたよ!」とどうして解釈できるのだ。 「全然売れねぇ!」という出版社の悲鳴だと解釈はしないのか。 ましてや、前述のような勘違いの結果だとは考えだにしないのか。
「原稿料まだ?」→「もうちょっと待って!」
「次の小説の案ができたから見てくれない?」→「今度ね!」
「今度、飲みに行かない?」→「綺麗なおねーちゃんがいるとこ希望!」
「!」を見て安心するその脳の構造が知りたい。ま、文豪と評される人物だ、並みの脳ではあるまいが。
結論その2、ユーゴーは楽天家。

この短いエピソードから見えるユーゴーの人物像は『ウイットに富んだ面倒くさがりな楽天家』である。 随分『レ・ミゼラブル』の印象とはかけ離れたお方のようだ。

余談だが私は『ああ無情』という題を初めて聞いたとき「アーム城」だと脳内変換をした。 「アーム城」、「奇岩城」とか「奇面城」みたいに怪盗や探偵が活躍する冒険小説だと思ったのである。 アームはオウムガイの親戚のようなもので、そういう渦巻きの形の城を舞台に繰り広げられる血湧き肉踊る活劇…。 母に本を買ってもらって初めて己の勘違いに気がついた。ま、甘酸っぱい思い出である。

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