就職 〜探偵への道 ごく一般的な名探偵篇


世の中に仕事は数あれど、誰でもなれるものではない探偵。 しかしあきらめてはいけない、訓練と心がけ次第では名探偵の誉れを受けることも可能かもしれない。 そこで名探偵になるための道を示唆して差し上げようではないか。 何?探偵でもないヤツに言われても信憑性がない? 心配ご無用、古今東西の名探偵のバイブルは手元に山ほどあるのだ。

今回はごく一般的な探偵について述べよう。 『一般的な』というとどうも漠然としてしまうが、 『安楽椅子探偵』と『ハードボイルド』の範疇から外れる人たちと思って戴きたい。 便宜上この三つに分けることにする。

まず探偵といえばほとんどの方がシャーロック・ホームズを思い浮かべるのではなかろうか。 その他にもエラリー・クイーン、エルキュール・ポアロ、ピーター・ウィムジイ卿、ブラウン神父、ぺリイ・メイスン、 サム・ホーソーン、日本でも明智小五郎から法水麟太郎に始まり、金田一耕助、火村英生、犀川創平、中善寺秋彦…きりがない。 単発で事件を解決した人、果ては犬猫まで挙げるときりがないので、ここでは名探偵を目指すこととする。 また名探偵の定義は『事件を複数回正しい解決に導く人々』と定義づける。

さて、まず探偵に必要不可欠なものを挙げてみよう。 まず、観察力、直観力、論理性、膨大な知識である。

観察力は日々の鍛錬次第である。 今すれ違った相手の服の形態、色、香水やコロンの香り、髪型や顔の特徴、 例えば袖口が擦り切れていたりシャツがはみ出しているなどの特徴、身長や体格、現代なら性別の判断も必要だろう。 人だけでなく自動車などの観察もよいだろう。 日頃から観察を心がけておくとよい。 ただし特に男性が女性に対してジロジロ見つめていると要らぬ誤解を受けそうなので気をつけるように。

直観力、これは天性のものもあるのだろうがそれを言っては身もふたもないので後天的に身につくような訓練を考えよう。 簡単である、ESPカードを使えばよい。 ESPカードとはテレビなどでも超能力実験のときに見かけるのではなかろうか、 十字、丸、四角、星、波の五種類の図形が描かれたカードのことだ。 これを用いて日々訓練を施せば直観力が冴えること間違いない。

論理性についても同様に良質の論文をとにかく読みこなせばよい。 起承転結がしっかりとまとまり、なおかつ知識も身につく一石二鳥の訓練である。 医学や法律は必須で後は手当たり次第に読破していけばよい。 ただしオルタナティブ系には手を出さないように。 「この事件の犯人は宇宙人だ」などといえば、名探偵ではなく迷探偵の誉れを受けてしまうではないか。

次に人柄である。探偵である以上は聞き込みを行うケースが多々あるであろう。 そのときに事件の関係者にスムーズに事情を聞くためには人柄が重視される。 誰だって見るからに怪しい外見や乱暴な口調には敬遠したくなるし警戒もする。 そのような状態にさせないような雰囲気やテクニックを持たなければならない。 また名探偵と呼ばれるには先ほども定義したように『複数回』事件に遭遇しなければならない。 何度も偶然に事件に巻き込まれる場合は周囲から『疫病神』のレッテルを貼られる恐れもある。 これを避けるためにも「私が事件に遭遇するのは不幸な偶然なんだよ」と言って納得してもらえるだけの人徳を築きあげておこう。

そこまでの人徳は無理だと思われる方もあきらめることはない。 助手を持てばいいのである。特にお勧めは警察関係者だ。 警察関係者ならどれだけ事件に遭遇しても、それが当たり前であるから『疫病神』呼ばわりされることはない。 (休暇に限って事件に遭遇する場合はこれに当てはまらないかもしれないが) 推理に必要な証言証拠も横流ししてもらえるだろうから好都合この上ない。 無論人徳のある探偵でも警察とつながっておいたほうが便利である。 また助手は警察関係者でなくとも構わない。 とても人当たりがよい、傍若無人に話ができる、話の内容を正確に覚えている、 そのような人が身近にいたらぜひキープしておこう。

最後に日本には厳密に言えば探偵という職業は存在しない。 もっとも近いであろう職業としては興信所の所員、保険会社の調査員、警察などである。 部下に信頼されている警部の息子とか犯罪学のフィールドワーカーという立場もありえるが、 この場合自分の職業を持っておくことが重要である。 社会的信頼という問題にも関わってくる。 いきなり事件現場にヒッキー君がやってきて「犯人はあの人です」と告発しても誰が相手にするだろう。 ある程度の保証はやはり必要となる。 それに加えて探偵が職業として成り立たない以上、別に収入の道を得ておかないと生活できないではないか。 それも何でもよいというわけにはいかない。時間がある程度自由にならなければ調査もろくにできない。 必然的にサラリーマンは却下である。 やはり先人を参考にすると、小説家、教授、助教授、弁護士、医者、拝み屋、神父、ラビなどだろうか。

以上を参考にして探偵への一歩を踏み出していただきたい。

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