released:Aug. 26,1999

空へ

ジョンクラカワー著

梅津正彦訳

文芸春秋社

 

最近、読んだノンフィクションで面白いのがあったので紹介します。それは昨年(’98年)の5月、エヴェレストの遭難のとき、ジャーナリストがその登山隊に同行しており、その遭難の時を含めた登山の様子をドキュメンタリーとというか、日記の様な形で書いたものです。本の帯に書かれている言葉によれば「全米で爆発的ベストセラー」とのことです。

 

私は普段遅読のほうで200〜300ページの本でも1、2週間かかるし、ちょっと難しい内容ならぼちぼち1、2ヶ月かかってしまうほうなのですが、この本は読み出してから結局1週間ほどかかりましたが、実際呼んでいたのは正味2日くらいでした。そのくらい面白く、冒険小説を読むのと同じくらい早く読んでしまいました。

 

なにが、そんなに面白かったかというと、まずは、山ものは私は昔「アルプス登頂記」をよんでマッターホルンやナンガバルバットをめざす登山の物語を興味を持って読み、死ぬまでにマッターホルンはぜひ見て見たいとおもって、出張時チャンスがあった時、まず最初に訪れたくらいだということで、それだけで興味があったということ。そして、遭難という誰でもが好奇心を持つことがテーマであること。しかも、つい最近、日本人の難波康子さんが遭難したことが、新聞その他でずいぶん報道された事が記憶に新しいということが、まず背景としてあると思います。

 

そして読みだしてみると、現状のエヴェレスト登山は営業登山と称する、いわゆるツアーのような、お金をガイドに払って登るスタイルが確立しており、その様子が新鮮な驚きで「へえー、そうなんだぁ」ということが次々出てくるのが、非常に面白かったです。例えばツアーの料金は¥780万($65,000)くらい、ツアーガイドに対し、参加したエヴェレスト登頂を目指す人は顧客(登山隊あるいはチームではない)と表現されているし、シェルパたちが顧客たちが訪れる前に各キャンプごとに酸素ボンベを事前に運んだり、ルートに事前にロープを張っていったりする様子や、アタックする日は各グループが集中するので渋滞!!をさけるといったエピソードが紹介される、という具合です。そしてツアー主催者は評判を得る為に顧客の全員登頂にこだわったりもします。しかも、顧客は6000、7000m級の登山の経験をある程度豊富に積んだ人のみが、エヴェレストという世界最高峰に登っているに決まっていると思っていた私の常識に反し、乏しい経験の者もこのような冒険に挑んでいる(安全!にともいえる状態で)事実は驚きでした。このような準備万端の状況では、ある顧客は第4キャンプからインターネットでメールを送ったりしているくらいである。そのためには余計な機材をシェルパたちが運ぶ事になるのだが。

 

また、、酸素に頼る登頂は望ましくないが、酸素を吸わないという事はいかに危険と隣り合わせかという事も詳しく述べられてもいます。

 

これだけ、準備周到で一見安全にみえる登山でもやはり自然の力はものずごく、後半の遭難の記述、寒さの情景描写などはマクリーンの冒険小説の一説を読んでいるようです。

 

これ以上内容について述べるのは、これから読む方たちには、興味半減なのでこのへんにしますが、最後にこれだけ一気に読めたという事は訳がかなりよかったのでは?と思うという事を付け加えておきます。

 


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