released:17 July,2002

希望の国エクソダス

希望の国エクソダス:村上龍著より 「希望の国のエクソダス」取材ノート 村上龍著

ある人から紹介され腰巻きを見て思わず買ってしまった。

期待に違わなかった。

村上龍は「限りなく透明に近いブルー」から私は注目していたが、今回
も為替の話を除いて冒険小説並に一気に興味を持ってよめた。

私にとっては、ITがらみのビジネスモデルとASUNARO,UBASUTEなどのネーミングがお
もしろかった。


最初のころに出てくる「日本にはなんでもあるけど、希望だけがない」というナマ
ムギの発言にビビっと激しく反応!。


以前から思ってたことだけど小説には架空のことのなかに事実がかかれ、ドキュメ
ントには事実がある主観のフィルタでかかれていると思う。

ときには真実が書けないドキュメントもあるだろう。


この小説も取材ノートをあわせて読むと、あ、これは事実なんだなとかおもうところがある。でも結局、私の場合あまり驚くようなギャップは感じなかったけど…。


以下に内容を少し紹介。

3,4年後の近未来、ある事件をきっかけに、全国の中学生の約6割くらいが集団不登校を起こす。彼らは文部省が配備したコンピュータやゲーム機を使って、百万人の一大ネットワークを作ってしまう。

それだけのネットワークがあれば、いろいろなビジネスが可能となる。


たとえば地方のニュースを世界に売るニュース会社だったり、あるいは企業間の情報のハッキングとか、裏のこともやる。そうやって、中学生たちは、ある資金とノウハウをためこんでいく。

そしてついには北海道に自分たちの共同体をつくる。ローカル通貨まで作って。
経済の大停滞が続く中彼らはネットビジネスを駆使して日本の政界、経済界に衝撃を与える一大勢力に成長していく。代表者ぽんチャンは国会でも証言し、その証言がヘッジファンドに狙われた円相場を救う。

私の仕事では、開発してる商品のメインユーザーの高年齢化が激しい。だから、ジェネレーションXがどうとか、ジェネレーションYだとかの話題が良くでてくる。またITも良く話題になる。

そんななかでこの本では以下のようなビジネスモデルが当たり前のようにでてきて、なるほどこれをベースに果てしなくいろいろなモデルが考えられると思った。

この本で出てくるビジネスモデル

ネット上のストーカー・脅迫・嫌がらせ行為を捜索して摘発するサイバー探偵社

なりすましをふせぐ電子IDシステム開発

ネットビジネス専門の弁護士事務所

防犯のソフトを開発し、ハードと一体化させて民間の警備会社などに販売する業務

遺伝子組み替えのシミュレーションデータ処理

産廃処理施設用の有害物質検出ソフトとハードの開発販売

ゲームソフトの開発とCG製作台湾・中国など東アジア諸国の著作権ビジネスの代行

途上国へ寄贈するための中古パソコン市場の整備

風力・地熱発電の開発

土壌・地下水にかかわる調査

超高温プラズマ装置による汚染土壌の改良

環境関連分析装置・測定器の審査と格付け

NPOとNGO、各種環境団体のデータ管理

ネット広告のエージェト

ネット上のフリーウェアのと検索ロボットの審査と格付け

読んでいて気になったキーワードを抜き出すと

「あの国(日本)には何もない、もはや死んだ国だ、日本のことを考えることはない」

「この国にはなんでもある。だが希望だけがない」

「ナマムギ」

数十万の中学生のメンバーズリストの高い商品価値ー中学生しか入れないネットワークシステム

ゲーム機で中学生たちは皆メール端末を持っている

ニュース配信ーミニコミニュース、人手提供

デジタルバイク便 スキャニングサービスからオンラインとオフラインをつなぐビジネスに

プログラムを作る能力のピークは13歳

ベルギーのニュース配信会社ブルタバVltava

地方振興券のICカード化ー偽造

ジョージソロス、ヘッジファンド

UBASUTE

国会での発言ー参考人として NHKジャック

円圏ーアジア通貨基金構想

中国の人口の正確な数字

ローカル通貨イクス

ASUNARO

あわせて取材ノートを読んだ。

やはりこの取材ノートもあわせて読むと、私のように単純に書いていあることが信じられない人にはいいかも?

結構な肩書きの人との対談だから…

「希望の国のエクソダス」取材ノート 村上龍著

本の腰巻より:
日本の危機と可能性を問う13のインタビュー
通貨危機、IT,教育・社会システムの崩壊、老人問題、環境ーーー。
現代日本のすべてを描きつくした小説は、こうして誕生した。

目次をベースにそれぞれの対談のキーワードを上げると

円は没落するか:林康史ー大和證券投資信託 調査本部長付主席研究員

ソロスの通貨の買い方、人民元がポイント、グローバルスタンダードでなかったから日本は繁栄できた、江戸時代

サイバースペースのギャングたち:伊藤穣一 株式会社ネオテニー代表取締役CEO

ネットのブランド、ごみからパスワードを、天才ハッカーのピークは13歳、「核戦争が起こってぐちゃぐちゃになった日本と、今の日本とどっちがいい?」「もちろん核戦争後!」

「円圏」の可能性:関志雄ー野村総合研究所上席エコノミスト

ドル・ペッグの問題

暴走族、チーマー、ギャング:鬼丸、ケンタ、リョウ

「地方」を再生するために:宮脇淳ー北海道大学大学院教授

夕張メロンのブランドを大事にする農協もある、地方自治体の財政は大企業も慎重になるほど深刻化、雪祭りよりよさこいソーラン祭りが人気、北海道は梅雨がないからいい

ヘッジファンドが国を乗っ取る:田中宇ー国際ジャーナリスト

ペッグは2種類有るー通貨を発行しない方式が効果的、人民元がポイント、アメリカ財務省はソロスの顔をうかがっている

コミュニケーションに飢えた子供たち:寺脇研ー文部省政策課長

寺脇さんは文部省の中で異端?「そりゃ異端ですよ」
「私より上の世代から見れば異端かもしれませんが、私より下の世代から見れば、ありうべきモデルの一つにすぎない」
「今の私よりもっと異端的なことしないと、現実においつかなくなるでしょうね」
一番農業体験をしているのは、6歳から12歳のこどもなんです。

「共同体」が滅びる?:金子勝ー法政大学経済学部教授

反グローバリズム、彼ら中学生が老人に対する尊敬の念をもてなかったことが崩壊の原因であるとしたいんです、ネット社会なんていったって農業が廃れたら食は成り立たないのにそのことに気づかない、むしろ韓国が本当におそれているのは北朝鮮が崩壊して(体制でなく農業が破綻すること)大量の難民が押し寄せてくること、日本では誰も近未来の本当のリスクが何であるかを把握できていない、調停者としての「神」はムーディーズやS&P

インターネット・クラッキング:竹中直純ーディジティミニミ代表取締役

何かを操作して次を選ぶとか打ち込むと言うことが一般消費者にはすごく敷居が高い、携帯電話は匿名性が非常に高い

円暴落のシナリオ:北野一ー東京三菱証券エクイティ・リサーチ部チーフストラテジスト
中江史人ースタンダード・チャータード銀行為替資金証券本部営業本部長

1ドル130円になったら日本からタオルを輸出できる、日本における輸出の経済効果の過大評価

老人を捨てるのか:村上正司ー新聞記者

今の日本では娘が自分の親を介護するのが、いちばん軋轢が少ない、まともな老人医療では点滴を抜けというのが合言葉

中学生たちは何を考えているのか:都内私立男子中学3年生

ファミコンーはじめ見たときはハマりましたけど。だんだん新しいのが出てきて、あんまり面白くなくなった、友達同士だとどんどん話して、話題もどんどん出てきてっていう感じですけど親とだとすぐ話題がとまっちゃう、デモもそれ普通だよ

相場のエクスタシー:松村哲ーオーストラリア・コモンウェルス銀行東京支店為替資金部チーフディーラー

ディーリングルームーこれゲームじゃない、ヘッジファンドはもともと日本にあったー特定金銭信託、マネーゲームは人間の本性


フライビッグバードホームページに戻る。