released :18 Feb.,2001

高齢者の遊び

これから迎える高齢化社会において、EV(エレクトリックヴィークルの略で電気自動車のこと)を高齢のかたの自由な活動の足に活用してはという、報告や検討が活発にされていますね。

そして、現在、セニアカーという手軽な電動の乗り物も、あるヴォリュームの台数が市場を形成しています。

また、電動アシスト自転車が高齢の方たちの活動圏を広げる道具として好評です。この2つの乗り物には大きな違いがありますね。わかりますか。セニアカーは足腰の衰えのある方に、行動の自由を提供しようというものです。それに対し、電動アシスト自転車について考えてみると、これはかなり元気な高齢の方の活動範囲をさらに広げる道具であり、先のセニアカーとはお客様のニーズは大きく違うんじゃないでしょうか?。

高齢の方の生活って

さらに、高齢の方の多い社会において、たとえばわたしが高齢といわれる年齢になったときを想定して、かつ、まだ、まだ、足腰に衰えのないとき、移動というキーワードでどのような生活がしてみたいかを考えてみると、

1.何かの用事をこなすときは、クルマあるいは公共交通機関を使って移動、そして仕事なり、用足しなどをこなす。

2.もう、ばりばり仕事をしたいわけではないので、仕事はそこそこで趣味やいわゆるなんらかの遊びに時間をさきたいと考える。

そう、こうして考えてみると、EV、セニアカー、電動アシスト自転車などは1の場面で使われるものでしょう。

そこで、ここでは2のような場面で、使われるものとしてのEV(電気で動くクルマ)の実現可能性について考えてみます。

ロジェ・カイヨワの「遊びと人間」(講談社学術文庫)によれば、遊びの要素は「競争」、「運」、「模擬」、「眩暈」だそうである。若い人に人気のあるゲームはこれらの要素がまんべんなく入っていますね。体を動かしたり、汗をかいたりする要素はすくないようだけど。しかし、高齢の方向けの遊び(スポーツ)としてとらえられているゲートボールなどは模擬、眩暈などの要素がぬけてるようですね。

ほかにも、高齢の方の遊びとして囲碁や将棋がありますね、しかし、これも模擬の要素は、確かに、陣取りの形式に一部見られるけど、弱いように感じるし、眩暈の要素はあるとは言いにくそうです。

高齢の方の運動能力のある方にとって、もっと模擬や、眩暈の要素の入った遊びがあっても良いのではと思いませんか?。現在の高齢の方(高齢の方と言っても60歳でもかなり激しいスポーツを若い方とともに楽しんでる方はかなりおられるようですが)で、足腰に自信のある方は基本的に若い方と同じ遊び(スポーツ)を楽しんでおられるようです。スキーやテニスなど。

しかし、一般に年齢とともに、足腰は弱くなり、若い人と同じ遊び(スポーツ)を、楽しむというレベルで実行するのはかなりの努力を必要としますね。そこで一般の高齢の方でも楽しめる適当に「眩暈」の要素まで入った遊び・スポーツ・ゲームが生み出すことができれば、来るべき高齢社会も、私としても大いに楽しめそうな気がします。

そんな高齢社会の実現に向けて、目的を持った移動ではなく、主に遊びやスポーツ、ゲームでの利用を目的とした動作の補助をする電動アシストの道具(衰えた身体機能の拡張器具)を創ることは重要かつ魅力的なことに思えませんか?。

具体的には

先日、タヒチ島近くの島に行く機会があったんですが、そこではファンカーという基本的にスクーターの駆動部分をうまく使った3輪ないし4輪のオープンカーが、遊び(景色を楽しむ、自然を満喫しながら良い景色の場所へ移動することが目的)目的のレンタルカーとして走っていました。

若い人にまじり、高齢の方がこれらを実用性はともかく、のんびり楽しく(パワーが小さく坂を上らないとのアドバイスがあった)乗ってる姿も、よく見られました。しかし、先ほど自然を満喫と書いたが、実際は大きな騒音で走っているのが、残念でしたね。排ガスのにおいも、もちろん興ざめでしたよ。これがEVなどであったら、80点くらいの満足度が120点くらいになるのになあと思いました。これは一つの高齢の人たちの”実用を目的としない移動具”の実現例となるんじゃないですか。

また、最近、若い人の中で人気となった”キックボード”を電動化する、あるいはアシストのみするものならば、これもおなじ例の一つとなるでしょう。

このように高齢社会での高齢の方の用足しのための移動の補助あるいは自由度の確保といったまじめなEV利用促進以外の、遊びを目的とした道具としてのEV(電動クルマ)をつくって広めたら楽しいとは思いませんか。

また、この内容はSEV研究会で発表したものに基づいています。

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