【2004年3学期】
はじめに
今まで1学期(5月)はコンピュータの歴史と発達のお話。2学期(12月)では情報社会の中で私たちは正しい情報を得るために判断力が必要であること、また技術の面ではセキュリテイの問題などにも注意を払っていく必要性があること、などをお話してきました。
3回目の今日は、情報社会において、私たちが最低限度知っておきたい法律ということで、少し退屈で堅いお話をすることにいたします。
-------------------------------------------------
そこで最初にクイズです。
クイズ(1)
Aさんは新聞で「偽札事件」が話題になっていることから、試しにスキャナで1万円札をコピーしてみました。あまり上手に出来たので記念にパネルに入れて壁に飾ってあります。
答え:×(バツ)
O通貨及証券模造取締法(明治28年)
通貨、その他の証券類と紛らわしい外観のものを製造したり、販売(使用)したりしてはいけません。また、貨幣は鋳つぶしたり損壊してもいけません。
----------------------------------------------------
クイズ(2)
Bさんが新しいコンピュータを買いました。もちろんWindowsXPです。この中の一部のソフトをコピーしました。万一に備え大切に保管してあります。
答え:○(マル)
マスターを所有している場合に限りバックアップを取ることができます。
但しこれを頒布、販売などをすることはできません。
マスターの所有権を失った場合、バックアップも所有することはできません。
○著作権法(2971年1月1日施行、その後ひんぱんに改正)
解説:ソフトウエアは著作物と考えられています。著作物は作られた時点で自動的に発生するものです。
1.他人の作った画像(写真)、音楽、映像(ビデオ)、アニメなどを自分のホームページに利用する際には、制作者の許諾がいるのはもちろん、テレビ両面をデータとして保存(キャプチャ)したり、新聞や雑誌をスキャナで読み込んだ画像も無断で使うことは許されません。
2.写真については、自分で撮ったものでも、肖像権やパブリシティ権(公開、周知させる)の侵害になることかあります。
3.漫画やアニメのキャラクタについても同様に、たとえ自分が模写して描いたものでも勝手に使うことは許されません。
4.ホームページで他人の音楽をストリーム配信したり、音楽データをダウンロードしたり、歌詞を掲載したりすることは、複製や公衆送信に該当するため、著作権者の許可がいります。
5.録画ビデオテープ、DVDなど(いわゆるプロテクトされているもの)
同法の三〇条では、たとえ、私的使用であっても、暗号化などのプロテクトはずし、すなわち技術的保護手段の回避はしてはならないと規定しています。一方、ゲーム機用のエミュレータ(ゲーム機と同じ動作をパソコンにさせるプログラム)を使って、パソ コン上で自分所有のゲーム機用ソフトを走らせていいかといっ たことは微妙な開題ですが、現状ではゲームソフトのバックアッ プ用ということで許されるようです。
-----------------------------------------------------
それでは次に「使用許諾権」についておはなしします。
●使用許諾権
ソフトをインストールするとき「ソフトウエア製品使用許諾同意書」という画面が出てきますが、知っていますか?
同意する 同意しない
プログラムソフトは、それを買ったのではなく、使用する権利にたいしてお金を支払っているのです。
●ソフトウェア契約の原型とは
・ 1974年(昭和49年)
今から31年前になります。世界初のパソコン「アルテア」をエド・ロバーツという人が開発しました。
二人の少年がいました。名前がビルとポール。彼らはシアトル、レイクサイドスクール(私立学園)に通う名門校の生徒でした。学園にはプログラミンググループがありゲームのプログラムが盛んでした。
シアトルコンピュータカンパニー(CCC)は彼らにバグ取りのため大型のコンピュータを自由に使わせていました。
そして、ビル・ゲイツとポール・アレンはこの「アルテア」というコンピュータのためのBASIC言語を開発し、「月着陸船ゲーム」というソフトを作りました。ゲームが動きました。
そこで、二人は「アルテア」のロバーツとBASIC言語に関するライセンス契約を結びました。
この時、ソフトウェアを売り渡さず、使用する権利(使用権)を販売したのです。アルテア用に開発したBASICは、当時主流だった「8080」搭載のパソコンならどれでも共通だったので、アルテア1台毎にライセンス料を頂くというこの方法は、その後のソフトウェア契約の原型となったのです。
●翌年1975年アメリカはベトナム戦争を終える。
いま、世界のコンピュータマシンを作っている全てのメーカーはマイクロソフト社と使用許諾の契約をして、パソコンの中にWindowsを組み入れているのです。
その後、日本でもソフトウエアメーカーはこの方法を取り入れ現在に至っています。
ですから、ソフトウエアを買ってきて組み入れようとするとこの画面を見ることになるのです。
私たちはソフトを買ったのではなく、法律的には使用する権利を買ったわけなのです。
おわりに
情報技術の発達で私たちの生活は大きく変わってきました。
教育の場では遠くにいる先生の授業を受けることができたり、また、医療の分野では達い場所の緊急患者に、医療現場から指示を与える遠隔医療システムなども益々普及しています。
図の6ではオンライン・カラオケの写真がありますが最新ヒット曲もすぐ追加できる。と書いてあります。
一方コンピュータを利用した犯罪の増加やネットワークの故障や事故の発生も社会的な混乱の元になっています。
これらの普及とともに人々の「情報社会ストレス」による健康への配慮も必要となってきています。
機械に頼らない人間本来の「人と人とのコミュニケーション」がきわめて大切な時代をむかえているといえます。
教科書の締めくくりでは
1.情報活用の実践力
2.情報の科学的な理解
3.情報社会に参画する態度などをあげています。
新しい世紀はみなさんの時代です。「情報A」での学習を今後も継続していくようお願いして、私の話を終わります。
------------------------------------------------------------
<<その他の参考資料>>
●青色発光ダイオード判決
目亜化学工業という会社(徳島県)の社員、中村さんは会社で働いているときに青色発光ダイオードを発明した。
当時会社はこの発明に対し礼金として「2万円」を支給。その後あまりに不当な処置だとしてこの発明を正当に評価するよう裁判を起こした。平成16年1月特許権訴訟として200億円を支払うよう命じた。
●出会い系サイト規制法
出会い系サイトを利用した援助交際の勧誘は犯罪です。事業者はサイト利用者が18歳未満でないことを確認しなければなりません。「お小遣いくれればお茶してもいいよ」などと誘った児童も処罰の対象となります。
●不正アクセス行為の禁止等に問する法律(2000年2月13日施行)この法律の三条@は明解で、「何人も、不正アクセス行為をしてはならない」と規定しています。ここで不正行為とは、他人のユーザ名やパスワードを不正に利用したり、セキュリティ・ホールを攻撃したりして、コンピュータに不正侵入をはかることを指します。他人にパスワードを教えるのもいけません。罰則は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。
●音楽CDのダビング?
著作権法30条で定めるところの「私的使用のための複製」の範囲内であれば問題ありません。(私的利用:個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること)
●コピープロテクトの施された音楽その他のメディアのコピーは違法?
プロテクトなどの「技術的保護手段の回避」を意図的に行うのでなければ複製権の侵害には当たらない可能性が高い。但し、個々のケースにより判断基準が変わる。
●MP3って違法なの?
MP3そのものは違法ではありません。自分に著作権のない音楽などのMP3ファイルをウェブページで配布したり、「WinMX」などのファイル共有ソフトで公開することが著作権の侵害となります。
●無断でリンクをしたら著作物を侵害したことになるか?
リンクは原則として自由に行ってよい。 リンクを行う際に許諾の必要はありません。また逆に禁止もできないというのが「インターネット」の基本的な考え方です。