エレベーター





 A氏はいつものように6時半丁度にエレベーターに足を踏み入れた。

 おや、今日は一人か。珍しいこともあるもんだ……

 したがって自ら最上階のボタンを押さねばならない。

 足元に目を落したまま人差し指をのばした。足裏に快い上昇感を感じ、A氏は目を閉じた……

 おやっ変だな……

  いつまでたっても停止しないのだ。A氏はだんだん不安になってきた。不安は足元からじわじわ這い上がってくる。思わず受話器の印の付いた「非常ボタン」を押した。

 エレベーターが止まらないんです!

 何階のボタンを押しましたか?

 1番上だと思うけど。

 はは~ん、それは銀河行きですよ。よく見て押してください。まだまだかかりますよ!ごゆっくり。では……

 そそ、そんな.....

 不安はやがて……絶望……暗黒銀河にどんどん吸い込まれていく。

 とあるプラネタリウム館で、一人のサラリーマンがビクンと目を覚まし椅子から転げ落ちそうになった……