意識の不朽化-Mindcloneの可能性

AIは不老不死につながるか?


不老不死は古代より人類の夢でありました。万里の長城建設を命じたあの秦の始皇帝(B.C.259ー210)も、不老長寿の秘薬を求めて徐福率いる調査隊を日本を含む東海上の未知の地に派遣しました。

始皇帝の願いは叶いませんでしたが、人類の長年の夢である不老不死は、生命の要であるマインドあるいは意識に関する限り、いま単なる夢から実現可能性のある目標に変容しようとしています。Googleの研究者 Kurzweil によると、チューリング試験(Alan Turingが考案した試験法で、人工知能が生物学的人間と区別可能か否かを調べる)をパス出来るヒトレベルの知能を持つ機械は2029年までに開発出来る見込みであります。Kurzweilを含む未来学者は、ヒトのマインド(心)をコンピューターにアップロードすることで人間のデジタルな不老不死化(digital immortality)を2045年までに達成可能との見通しを示しています。


デジタルな不老不死化はマインドクローン(ヒトのマインドのデジタル版で、永久に存続可能)によって実現できると考えられています。その為には、ー人の人間の脳に含まれる全ての情報を完全な形でファイル化し(マインドファイル)、それを特別のコンピューター(マインドウエア)で処理しヒトの意識/マインドを体外で再生する作業が必要となります。
これらのステップのうち既に進展の見られたものは皆無であります。目標への路程(ロードマップ)のまだごく初期の段階にあるといえましよう。しかし、サイバー科学の研究は指数関数的に進歩しています。ゴール(マインドクローニング)までの時間は予想より短縮できる可能性が十分考えられます。

Mindfile → Mindware → Mindclone

マインドクローニングに至る3つのステップのうち、最初のステップ(脳のスキャン・アップロード)は残りの2ステップより複雑でより大きな困難を伴うと予想されます。
ヒトの脳は150~330億個のニューロン(神経細胞)から構成されており、各二ューロンはシナプスによって数千の他のニューロンとつながって、脳全体では約100兆個のシナプスが形成されていると考えられています。これら膨大な数のシナプスを擁するニューロンが、電気的信号と化学的伝達物質(そしておそらくは何らかの未知の要因*)を利用して情報を伝受し、意識(マインド)を生み出していると考えられます。(*Stuart Hameroffらの"Orchestrated Objective Reduction"理論によるとニューロンの微小管振動も意識に深く関与している)

そのような複雑な混合体をどのようにしたら有効かつ完全にスキャンし保存することが可能でしようか? 最近になってBCI(脳・コンピーターインターフェース)あるいはBMI(脳・マシンインターフェース)についての研究が開始されました。これらは、脳から発せられるコマンド信号を埋め込み型装置(インプラント)によって電気信号に変換して体外に導出し、日常生活で用いる装置の操作が身体障害者にも出来るようにしようとするものです。こうした分野での成果や経験が蓄積されることでヒトの意識やマインドの理解がー層進展し、更には脳のイメージング、マッピング、スキャニングの為の多彩で革新的な技術により斉らされる知見と組み合わさって、マインドファイル作成という目標に到達する道が開拓されていくものと期待されます。

マインドファイル作成が可能になるまであとどのくらいの年月を要するかは分かりません。10数年くらいで可能になるかもしれませんし、数10年かかるかもしれません。その長さは人類が投下する資源や努力の程度によって変って来るものと思われます。更には、不老不死を熱望する個人や革新の気に富む企業の熱意に大きく左右されるものと考えられます。現在20歳の人にはその平均寿命が尽きる前に実現する可能性が高いですが、いわゆる「団塊の世代」(昭和22年 から24 年の期間に生まれた世代)には余り時間がありません。存命中に実現するかどうかぎりぎりのところにあります。マインドファイル実現に向けた積極的な努力・貢献が望まれる世代でありましょう。

マインドファイルが得られたなら、次のステップはマインドファイル再生システム(「マインドウェア」)の開発であります。マインドウェアはマインド再生のためのソフト/アルゴリズムとマインドの意図する行動/動作実行のために連結された装置より構成されることになると思われます。視聴覚機器やメカニック機器の発達のおかけで、従来ヒトには備わっていない機能や能力がマインドウェア(マインドファイルを具現化するもの)によって発揮される可能性が十分考えられ、「スーパー人間」(空飛ぶ人間、水中で生活できる人間、など)の誕生が考えられます。更に、マインドウェアに特殊なモジュールを付加すれば、特別な機能・能力(スーパー計算能力、スーパー論理推論能力、多言語能力、など)を付与することも可能となるでしょう


ヒトはこのようにしてそう遠くない未来にそのマインド(意識)を永遠に保ち、新たな機能・能力を獲得することが可能になると思われます。


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