私と船越
2001.01.15
私が初めて船越漁港を訪れたのは、昨年(2000年)の11月のことである。
(船越漁港。可也山山頂より)
その前の月にY介を連れて西区の海釣り公園で釣りデビューを果たし、「こりゃあ、おもろい」と続けざまに3週末連続海釣り公園へ通った。
3回ともY介と二人連れである。
まだ夜の明けきらぬうちから自宅を出発し、途中コンビニへ寄ってカラ揚げを買う。
コンビニの駐車場で妻が前日に作っておいてくれたおにぎりとカラ揚げをパクついて、もうそこから海釣り公園まで5分程の道のりだ。
Y介は釣りも楽しみのようだったが、そのように父親と二人で暗いうちにドライブに出かけ、コンビニの駐車場で朝ご飯を食べていると夜が明けてくる、といった事をとても楽しんでいた。
これまでに経験したことの無い、少しばかりのワイルドさが子供心を刺激するのだろう。
私自身も成長したY介(といってもまだ幼稚園の年長さん)と男同士の遊びを共有しているというような喜びを感じていた。
私と一緒に遊ぶことが出来るまでに成長してくれた息子を目を細めてみるような思いである。
公園で遊ぶのとは一味も二味も違うものだ。
◇   ◇   ◇
真ん中に見えるのがY介Y介と私は安物の”入門セット”なる釣り道具一式2人分を購入し、相変わらず私は事前に色々な本を買いこんで研究ののち、海釣り公園デビューを果たした。
我々がトライした釣りは、サビキ釣りというものであった。
カゴにコマセのアミエビを詰め込んで、疑似餌のついた仕掛けを海底付近でさびくだけでいいこの釣り方はファミリーフィッシングの代名詞的な釣り方で、おもに回遊魚のアジやイワシが釣れてくる。
Y介もコマセを詰めて、リールのベールを起こし、仕掛けを底まで沈めてベールを戻し、底を切って竿をさびいてアタリを待つ、といった一連の動きを教えるとすぐに一人で出来るようになった。
さすがに釣れた魚を針からはずしたり、もつれた仕掛けを直すのは私の仕事であるが、そういったことに時間が取られるからと言い訳の一つもしたくなるぐらいに3回の海釣り公園釣果はY介のほうが上だった。
20cmくらいのアジが主だが、他にバリ(Y介)、メジナ(私)、メバル(私)、アラカブ(Y介)、コノシロ(Y介)、ウミタナゴ(Y介)、ボラ(Y介、海面でバラシ)などのさまざまな魚が釣れ、デビュー間もない私とY介と、家で帰りを待つ妻とR紗をとても楽しませてくれた。
ただ、もう11月も中旬になるとサビキ釣りの季節は終わりを迎える。
冬になると沿岸からの釣りでは魚種が減り、多くのファミリーフィッシングは来春までシーズンオフとなる。
そこで私が目をつけたのが漁港の防波堤での根魚(ロックフィッシュ)狙いであった。
根魚といえば、例えばアラカブ(カサゴ)やメバルなどで、多くは夜釣りに分がある。
冬のあいだも防波堤から手軽に釣ることができるありがたいお魚さんたちだ。
しかもこれらの根魚は白身で食味も最高ときている。
◇   ◇   ◇
自宅から車で10〜20分、少々遠くても30分以内に10ヶ所以上の漁港が点在する地の利を活かせば、平日の夜に釣りを行なうことはそれ程無理なことではないだろう。
土日の休みに家族を置いて一人で釣りに出かけることはしたくないが、平日の夜であれば家族とのあつれきを最小限に押さえることもできそうだ。
夜釣りで、なおかつ一般の漁港となればY介を連れて行くのはあきらめなければならない。
海釣り公園はライフジャケットが無料で貸し出ししており、トイレも売店もある。
幼稚園児との二人連れの釣行はそういう施設の整ったところでないとまだ難しいし、ましてや夜釣りである。
というわけで、私は前原近辺の夜釣りスポットを探し始めた。
11月中旬の休日の午後、ドライブがてらにY介を助手席に乗せて、”福岡釣り場マップ”を片手に糸島半島の沿岸をうろついた。
そのマップに載っていた船越・綿積神社裏というポイントをさがして迷い出たのが船越漁港だった。
やけにだだっ広い空き地に車は止め放題で(もちろんタダ)、空き地の近くから長い防波堤が沖へ延びていた。
釣り人が4、5人いた。
閑散とした印象であった。
◇   ◇   ◇
船越波止Y介を連れてその防波堤をぶらついてみた。
長い防波堤だ。
私にとってはここが肝心なポイントなのだが、私のような初心者を受け入れてくれる雰囲気がこの防波堤にはなんとなく感じ取れる。
多分、釣り人が少なかったからそんな気分がしたのだろう。
「よし、ここに通ってみよう!」と思えたのである。
車に釣り道具を載せてあったので、市販のチョイ投げ仕掛けをセットし、エサの代わりにルアー用のワームを付けて沖に投げてみた。
しばらくリールを巻きつづけてみたが、根がかりする様子は無い。
砂底のようだ。
再度仕掛けを投げ入れて、Y介にゆっくりリールを巻きつづけるよう命じて竿を渡した。
私はバスロッドにジグヘッドを直結し、ワームをつけて防波堤の際をフォーリングさせてみる。
底に着いたら竿先をプルプル震わせて根魚を誘う。
アタリがなければソーッと仕掛けを持ち上げてみる。
そしてまたフォーリング。
すべて本やインターネットで仕入れた根魚のルアー釣法である。
もちろん、実践は今日が初めてだ。
そろそろ日が暮れてきた。
Y介は仕掛けを根掛かりさせてしまい、釣りを止めて防波堤を行ったり来たりして遊んでいる。
私はY介が海に落っこちやしないか気にしながらも、せっせとルアーで波止際を探り歩いてみた。
辺りが夕闇にまぎれ始めた頃、「ブルブルッ!」ついにアタリがきた。
波止際でのアタリは合わせの後すぐに際から引き離さないといけない。
彼ら根魚はエサを咥えるとすぐにもとの穴倉にもぐり込もうとするからだ。
もぐり込んだら最後、えらを張って穴からは大抵出てこない。
釣り人は糸を切るしかなくなるのだ。
実践経験ゼロの私がそんな際でうまく釣り上げることが出来るはずもなく、案の定潜り込まれてしまったが、ブルブルッときた時の感触、その感触が手元にきた時の高ぶる気持ちは最高だった。
その日はそれで帰ったが、私の釣り熱は俄然高まってきた。
「あの誘い方が良かったんじゃないか、今度はこういう風にすれば良いんじゃないか・・・」
人が釣りにはまっていく時というのは大抵こんな感じなのだろう。
私もご多分に漏れず、それからしばらくはバスロッドに3.5gジグヘッドを装着したリグで際狙いのアラカブ釣りにどっぷりとはまっていくのであった。
◇   ◇   ◇
船越漁協近く私は船越漁港へ通い始めた。
Y介と連れ立って初めて訪れた11月中旬の休日以来、今日(2001年1月15日)まで毎週最低1回は通ってきた。
それは主に金曜の夜、自宅で夕食をかき込んでからいそいそと防寒着を着こみ出漁とあいなるのであるが、潮の干満時間などおかまいなしで、とにかく海に行って釣り糸を垂らすことが出来ればそれでよかった(それは今も基本的に変わっていないが)。
船越の防波堤に立ち、海に向かって釣り糸を垂れているとき、意識は釣り竿を持つ手元に置いて目は竿先を見やる。
ふと空を見上げると、澄みきった冬の夜空に満天の星が輝いていることがある。
流れ星がこんなに頻繁に見えることを初めて知った。
この数ヶ月の船越通いで私自身の釣りにも多少の変化(進歩?)が起きている。
一つは釣り道具が増えた(笑)。
釣りのターゲットがアラカブからメバルに変わった。
際底狙いのルアーによる落とし込みではアラカブくらいしか釣れないことに気付き、磯竿での胴付き探り釣り(エサはアオムシ、オキアミ)をメインの釣り方にした。
磯竿による探り釣りは、ルアーと同様に魚のアタリがダイレクトに手元に伝わってくる。
これが私の趣味に合った。
平行して投げ釣り(ブッコミ釣り)を導入した。
防波堤を探り歩いているあいだ置き竿にしておき、時々仕掛けを回収するとおもわぬ獲物が掛かっていることがある。
これまでにはタコやアナゴが釣れた。
この投げは本当は暖かくなってきたときのチヌ狙い用である。
「今はメバル、いつかはチヌ」というのが現在の私の目標なのだ。
◇   ◇   ◇
胴付き探りでも相変わらずアラカブが多く釣れ、メバルはめったに釣れることがなかったが、「今日もアラカブか…」と車に向かう途中、防波堤の根元(常夜灯付近)でルアーのキャスティングでメバルを釣っている人を何度か見かけるようになった。
2〜3人の人に会っただろうか、みんな結構メバルを釣っている。
そのつど話を伺い、仕掛けやタックルを見せてもらったが、中にはメバルのついでに40cmくらいのシーバスまで釣っている人もいた。
「これもやってみたい・・・」そう考えるようになったのも自然の成り行きで、最近私もメバル専用超ライトタックルを購入し、徐々に成果が出てくるようになってきた次第である。
こうして、船越漁港というフィールドで私の釣りは少しずつ進化をとげ、なおかつバリエーションを増やしてきた。
ベースにあるのは、あまりお金をかけずにお手軽に、である。
ポリシーは撒き餌をしない。
エサ釣りはオキアミかアオムシ(一番安い。ただしこれは絶対ではない)で頑張る。
ソルトルアーはライトタックルに絞る(他に手を出すとまたタックルにお金がかかる!)。
そうして「いつかはチヌやシーバスを釣る」気でいるのである。
ながらく私のホームグランドであった船越に先週一旦見切りをつけ、深江漁港にその場は移したが、ズブの初心者の私を暖かく迎え入れてくれ、釣りや海の色々なことを教えてくれた船越の防波堤を私はいつまでも忘れることはないだろう。
ありがとう、船越。
暖かい春が来たら、また戻ってきます。
その時はどうか私にチヌを釣らせて下さい。
船越・久家波止
2001.01.15
Written by あらかぶ亭アジ介
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【船越漁港での実績魚種一覧】
2000年11月中旬〜2001年1月初旬
 ・ アラカブ(カサゴ)〜26cm・・・ルアー、胴付き探り
 ・ メバル 〜15cm・・・ルアー、胴付き探り
 ・ アイナメ 〜21cm・・・胴付き探り
 ・ タコ(種別不明)・・・ブッコミ
 ・ アナゴ 〜40cm・・・ブッコミ
 ・ ハゼ 〜16cm・・・ブッコミ
 ・ カニ(種別不明)10cm(甲羅) … 胴付き探り
  (上記、すべて美味しく頂戴しました。)