私とキャンプ

2001.1.29
3年ほど前からファミリーキャンプを始めた。
車をRV車に買い替えると同時にキャンプ道具を半年くらいかけて準備した。
Y介が3才、R紗が1才の1998年春、初キャンプの場所は忘れもしない千葉県のイレブンオートキャンプ場だった。
私がまだ小学生だった頃、近所の子供会のイベントで父に連れられ何度か英彦山(ひこさん)のキャンプ場へバンガローキャンプに行ったことがある。
断片的にしか覚えてはいないが、とても楽しかった記憶が今も胸に蘇ってくる。
私の大事な思い出の一つだ。
川でつかまえた小魚を塩焼きにして食べたこと、飯盒炊飯の煤で手が真っ黒になったこと、やけに水っぽくて黄色いカレーがとても美味しかったこと、夜空の満天の星に息を呑んだこと・・・。
いつもは恐い父だったが、キャンプの思い出に残っている父はいつも笑っていた。
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愛車です。あれから30年近くが経ち、もう一度キャンプに行きたい、子供たちに自分と同じ楽しさを味合わせてやりたいという思いが日毎に強くなってきた私は、車を買い替える時に迷わずRV車を選んだ。
気候の良い時期を選べば1才の娘でも充分テントで寝させることができそうだ。
「よし、キャンプやろう!」
それからの私は本や雑誌を読み漁り、休日ごとにホームセンターやアウトドア用品店を回り始めた。
当初10万円を予算に準備を始めたのだが、テントやシュラフ、ガスバーナーやランタン、テーブルに椅子と実に様々な道具を買い集めた結果、いつのまにか軽く予算をオーバーしていった。
妻には常々「お金がかかるのは最初だけだから。あとは数千円のテントサイト使用料のみでお安く遊べるよ。家族の思い出も一杯出来るし!」と言い訳めいた説明をしたものだった。
ある程度基本的な装備が整った1998年春(手元の古い手帳をみてみると5月23日(土)となっている)、満を持して一泊二日の初キャンプを敢行した。
場所は千葉県の房総半島の真中辺りにあるイレブンオートキャンプ場。
ガイドブックをくまなく調べて決めた場所だった。
それ程遠くなくて自然が一杯でサイトの広い所、というような感じで探した記憶があるが、結局そのガイドブックに載っていたこのキャンプ場の写真が芝生一杯のサイトだったのを気に入ったように思う。
これから長くキャンプを続ける為には、特に妻がキャンプというものに好印象を持ってくれないことには始まらない。
自然の豊かなキャンプ場を選ぶことはもちろんだが、それよりも虫の少ない時期(真夏以外)と場所(真夏であれば高原、高地)に気を配ったキャンプ場選びが最初からのポイントだった。
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初キャンプは一言でいって「ヘトヘトに疲れた」キャンプとなった。
テントやタープがうまく設営できず、ひょっとすると2時間近くかかったかもしれない。
後からやってきた近くのサイトのキャンパー達が次々と私を尻目にサイトを作り上げていく。
私は恥ずかしいやら悔しいやらで、気ばかりがあせるばかりであった。
やっとのことで自分たちのサイトの設営が終わると、もう夕食の準備を始めなければならない時間になっている。
夕食が済んだらシャワーだ寝る準備だと夜まで慌しいことといったらなかった。
翌朝目を覚まして朝食を済ませると、昨日の午後あれだけ苦労して設営したテントやタープの撤収である。
まったく「トホホ…」という感じだ。
初めてシュラフにくるまってテントで一夜を明かした私の体はバリバリにこわばってしまい、この撤収と車への積み込みがとても辛かった。
妻や2人の子供たちはいざ知らず、少なくとも私は自然を楽しむゆとりすら持てぬまま初の一泊二日キャンプを終えたのである。
これ以降キャンプは必ず二泊三日とすることにした。
二日目に思いっきり遊べるパターンにしたおかげで、キャンプ場をベースに近くの観光地へ足を伸ばす余裕が生まれた。
言うほどの回数をこなしたわけではないが、テントやタープの設営も随分とはかどるようにもなり、設営時の苦労もなくなった。
自分たちに与えられたスペースのどこにテントを立てようか、どこをキッチンスペースにしようかとあれこれ考えながら、設営さえも楽しめるようになってきた。
最初の頃は苦労していたバーベキュー用の炭火おこしも、今では少しの火種で効率良く炭に火を移せるようになったし、人間て進歩する生き物だなぁなんて思ってしまうのである。
子供たちを寝かせつけた後、妻とワインを飲んでゆったりと自然のなかで夜を楽しむなんていう、初めてのキャンプの時には考えられないほどの余裕も持てるようになってきた。
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だが、やはり自然はあなどれない。
昨年の秋、東京から福岡に転勤してきて初めてキャンプに行ったときは、海沿いのキャンプ場ということもあってか二日目の夜に暴風雨にあってしまった。
テントやタープの設営強度には自信があったので、「これならいけるな」と高をくくっていた私であったが、そのうち子供たちを寝かせ付けていた妻が「ちょっ、ちょっと!テントの中がすっごい雨漏りしてる!!」と飛び出してきた。
急いでガムテープとビニール袋で応急処置を施そうとしたが、雨も風もどんどん強くなり、次第にテントの中は水浸しだ。
キャンプに慣れてきていたつもりの私もこの時ばかりは一瞬途方に暮れた心持ちになったが、「子供たちを車に移そう。まずはシュラフから・・・」と気持ちを切り替え、暴風雨の夜の中、妻と二人びしょびしょになりながら眠ったままの子供たちとテントの中のものを全て車に移したのであった。
回りのサイトもタープが吹き飛ばされたり、慌ててテントを撤収したりと大騒ぎの一夜となっていた。
私のサイトはテントもタープも吹き飛ばされるようなことはなかったのだが、まさか雨漏りとは・・・。
荒れ狂う風(まさにそんな感じだった)を受けてちぎれんばかりにバタついていた我が家のコールマン・ヘキサタープは、風が強くなり始めた頃からロープとぺグの間にクッション用のゴムロープをかませて補強していた。
そのおかげで風の勢いをうまくゴムが吸収してくれたのか、ぺグが抜けて吹っ飛ぶこともなく済んだのであった。
時折ぺグのゆるみを点検しつつ、ドライバーズシートに身を沈めて一夜を明かした私は、まさかの雨漏りにかなりのショックを受けながらも、堅牢なテントやタープの設営手際に少なからず満足もしていたのだった。
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1才で初キャンプに連れ出したR紗もすでに4才になり、3才だったY介は今春から花の小学1年生だ。
我が家のファミリーキャンプもこれから4、5年間が本番と思っている(もしかしたら3、4年かな・・・)。
九州では温泉をキーワードにしたキャンプを満喫しようと今から春が待ち遠しい限りだ。
そして、小さい頃父と行ったキャンプが今でも私の大事な思い出として残っているように、Y介やR紗にとってもこのファミリーキャンプが楽しい思い出になって欲しいと願うばかりである。
もちろん、私自身も妻と子供たちの4人で過ごすキャンプをこれからも思いっきり楽しむつもりだ。
2001.1.29
Written by あらかぶ亭アジ介
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【キャンプの記録】
第1回
日程:1998年5月23日〜24日
場所:千葉県・イレブンオートキャンプ場
第2回
日程:1998年8月10日〜12日
場所:栃木県・キャンプラビット
第3回
日程:1999年4月30日〜5月2日
場所:茨城県・上野沼やすらぎの里
第4回
日程:2000年10月7日〜9日
場所:佐賀県・波戸岬キャンプ場
第5回
日程:2001年5月12日〜13日
場所:山口県・秋吉台オートキャンプ場
第6回
日程:2001年7月20日〜22日
場所:熊本県・阿蘇ファンタジーの森オートキャンプ場
第7回
日程:2001年8月16日(デイ・キャンプ)
場所:福岡県・真名子木の香ランド