2001年11月4日(日)
福ノ浦漁港 6:30〜11:30
中汐、干潮5:12
サヨリが釣りたい!
思いだけはますます強くなる。
何がだめなんだろう?
私の仕掛けは出来合いのカゴ浮きセットである。
コマセを入れるカゴと赤い大きな浮きがくっついたものの先にラインが伸びてあたり浮きがセットしてある。
その先に30cmほどのハリスをつなげて、針は赤袖4号となっている。
回りの人達の仕掛けを手にとって見たわけではないが、だいたい皆同じような感じだ。
なぜ自分だけがこうも仕掛けがからまったり、釣れないのだろう?
一つ気になっていたことがあった。
そもそも私にサヨリ釣りを教えてくれたあのおじさんとの会話の中で「じゃあ、今度私もサヨリ釣りしてみようかな。仕掛けはよく釣具屋でセットみたいなやつ売ってますもんねえ」と言ったら、
「あんなセットじゃエンピツサヨリしか釣れんよ」とおじさんは言っていた。
あんなセットじゃ駄目駄目・・・なんか気になっていたのであった。
さすがに昨晩「明日も行きたい」と言うと、妻はあきれていたようだった。
こんなことができるのも、海に近いところに住んでいるからだよな〜と思う。
普段の休日は何の予定も無ければ10:00過ぎくらいまでは妻の洗濯や掃除が続くので、明け方から午前中の釣りというのはそれほど家庭を犠牲にするという感じではない。
海まで15分程度という近さがあればこそ、できることではあるのだが。
あのサヨリおじさんがこんなことも言っていた。
「あんた前原からか。近いなー。前原ならこの辺の海はあんたん家の生け簀みたいなもんやないか、ガハハッ」
そうなのである。
極端な話、我が家の生け簀に魚を掬いに行く感覚で釣りに行くことができるロケーションなのである!?
今日こそはと期するものがあったのだが、やはり釣れない。
ボラが掛かったがハリス0.8号なので持ち上げたら切れた。
目立った釣果(?)はそれぐらいである。
回りの人達はボツボツ釣れているようだが、私にはこない。
それに今日もよく仕掛けが絡まる・・・。
「もう帰ろうかなぁ」
そう考えていた時だった。
いきなり知らないおじさんが私の前に現れて、「カゴとアタリ浮きはこの位離して、ハリスはこの位長くして」と私に指示を出し始めた。
年の頃は60過ぎくらいで、道場六三郎そっくりのおじさんである。
(これは本物)
何が何だかわからないうちにそのおじさんの言う通りに仕掛けを作りなおす私。
付けていた針を見て「こんなんじゃ駄目」と周りをきょろきょろ見渡して、捨てられていたサビキ仕掛けの針とハリスを拾ってきて、それを私の仕掛けに結んでくれた。
「よし、これで釣れる。投げてみなさい」そう言うのである。
何が何だかわからないが、わらにもすがりたい状態だった私は「はい」と素直に従う。
そうして第2投めでいきなりヒット!
「サヨリだ!」
バシャバシャッと30mほど先の方で水飛沫が上がる。
なんということだろう、あれだけ釣りたくて釣りたくて、けれど釣れなかったサヨリが、ちょっとカゴとアタリ浮きの距離を変えて、こともあろうにその場に捨てられていたサビキ仕掛けの針と糸を使った仕掛けで簡単に釣れてしまうとは・・・。
このおっさんは釣りの神様か!?
「釣りの神様ですか?」
本当に声に出して聞いてみた。
そんな私を無視して神様はまだ周りをきょろきょろ見渡してはサビキの針を拾っている。
「ハリスは持ってないんかね」
「1.5号がここに・・・」
拾った針をハリスに結んでくれている。
この神様は驚くことにさっきからハリスを歯で簡単に噛み切っていた。恐る恐るはさみを手渡す私。
また新しい仕掛けができた。
今度は最終段がサルカンから2本のハリスが伸びている形になっていた。40cmと80cmくらいである。
「このリールは付けかえることができるんかね?」次に神様が聞いてきた。
私はすべてのリールを左手巻きに付け替えているのだ。
購入した時は右手巻きになっている。神様は右手巻きに変えられるかと言っているのだ。
「できますよ」と私が言うと、やおらリールを弄くり始め、あっという間に右手巻きに変えてしまう神様。
唖然としている私を横目に、
「カゴにマキエ詰めて」
「あ、はい」
「今日は車に釣り道具積んどらん。釣りばっかり行ってって家のもんに言われるからな。けどやりとうなった」
それから私の竿でもくもくと釣り始める神様。
私も勉強だと割り切ってせっせとカゴにマキエを詰める。
コマセのアミが残り少なかったので神様は数投しかできなかったが、神様の投げ込んだ浮きの周りはにわかにサヨリが集まって、アタリ浮きが色々な反応を見せていた。
その瞬間を捕らえて小さく合せを入れる神様。
針が錆びてて掛かりが悪いらしく、1尾も釣れなかったが非常に勉強になった。
見取り稽古というやつだ。
サヨリの口は結構固いので、きっちり合せを入れなくてはいけないということ。
ただし、合せの強さは使用しているハリスの号数によって変えないと駄目だということ、等も教わった。
「もうアミが無くなりました」
「おお、そうかね」
そうして、釣竿を私に返した神様は、私のお礼の言葉を背中に受けながらどこへともなく消えていったのであった。
福ノ浦がサヨリ釣りで有名なところだと言うことを聞いて、この3連休に初めて挑戦したサヨリ釣り。
3連休に3連ちゃんで通ってついに手にしたサヨリはたった1尾だったが、なんだかこの釣りにはまってしまいそうな予感がするのだった・・・。
■今日の釣果:サヨリ(30cm 1尾)
塩焼きにして頂いてみたが、上品な味で極上だった。
家族4人で1尾のサヨリに群がり、つつきあって食べた(笑)。
刺身はもっと美味しいらしいので、今度釣れたらやってみよう。
ここで、私なりに神様の仕掛けと私が購入した出来合いの仕掛けとの違いを考察してみよう。
その最たる違いはカゴ浮きとアタリ浮きの距離である。
神様の仕掛けの方がかなり長い。
そうすることで不思議と仕掛けの絡まりが無くなった。
ここ福ノ浦では皆最低でも40m以上投げ飛ばしている。
いきおい仕掛けの絡まる率は上がってしまうので、それぞれの部位を長く取ってからまりを防ぐ必要があるのだろうか?
間違いなく言えるのは、市販の仕掛けセットはこれほどの遠投を想定したものではないはずだということだ。
市販の仕掛けはせいぜいちょい投げでエンピツサヨリを釣る仕掛けなのだと、私なりに解釈した次第である。
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