●歪んだ学校教育や早期教育が子どもを苦しめている
  (1995年1月発行の「家族新聞」第3号より)

1994年は、「子どもの権利条約」が日本で発効された年であり、国際家族年でもありました。
しかし、94年は、いじめ自殺事件や妻子殺害事件など子どもをめぐる痛ましい事件が相次ぎました。

◆不登校が10年前の3倍増

データでみても、いじめ、校内暴力、体罰教職員、高校中途退学者などがのきなみ増加し、
10年前は2万人だった小・中学生の不登校が6万人にのぼり過去最悪を記録しています。
そして、就学前の問題としては、育児不安の広がりを背景とした乳幼児の虐待が増加。
また、育児不安にともなうもう一方の極には、「早期教育ブーム」のエスカレートがあります。

◆不安と孤独と競争の子育て

このように、日本の子育ては、「不安と孤独と競争」の中に放り出され、
多くの場合、子育てに喜びをかみしめる状態になっていません。

先日、東久留米市の教育団体の主催で、
教育評論家の増田孝雄さんの講演があったので、参加しました。
ちひろは、まだ2歳ですから、小・中学校の問題を身近に感じるというわけにはいかないのですが、
政府・文部省による教育の名に値しない、差別と選別のつめこみ教育、管理主義教育に
あらためて怒りを燃やしました。以下、長くなりますが、講演の要約です。

◆“個性を生かし”意図的に低学年から大量の“落ちこぼれづくり”

93年4月、戦後6度目の変更となる新学習指導要領が小学校で実施された。
その内容は、国語でも算数でも、はじめから教師が教えきれず、
子どもたちも学びきれないようにつくられている。
しかも、わからない子がいても、それは子どもの“個性”であり、
教師がどの子にもわかるまで教えようとするのは、
子どもの“個性”を殺すので誤りであるという「新学力観」までセットされている。
「個性を生かす」と称して、低学年から意図的に大量の「落ちこぼれ」をつくりだし、
わかる喜びを奪うことで子どもの人権を傷つけ、否定していく恐ろしい差別教育が展開されている。

◆教える時間は6分の1、習う漢字は倍増

たとえば、1年生で習う「ひらがな」と、2年生の「九・九」は、以前、両方とも半年かけて教えていたのに、
現在は1カ月間そこそこでしか教えることができなくされている。
教える内容は以前と変わらないのに、教師が子どもに教える時間だけが、
以前の数分の1に減らされている。

他の例では、1年生が習う新しい漢字の数は40字から現在80字に倍増。
2年生の漢字も80字から160字に倍増している。
常識的に考えて、普通はやさしい字からむずかしい字を習っていくのが当然だが、そうなっていない。
たとえば、日曜日の「曜」の字は2年生で教えて、「習」は3年生。
「議」は4年で「義」は5年。「我」や「私」は6年。
こうした傾向は、他の教科でも同じ。子どもがわかろうとわかるまいと、できようとできまいと、
おかまいなしに教科書をどんどん先に進めなければならないようにされている。

◆いじめの発生源は政府・文部省によるいじめ

いまの子どもの「落ちこぼれ」は、一部の教師のクラスや、
特定の地域の学校などでおきている問題ではない。全国津々浦々でおきている。
根本的な責任が、個々の教師や学校にあるのではなく、
政府・文部省の教育政策−−とくに教育の内容やしくみを全国一律に強制してきた
学習指導要領にあることは、疑う余地がない。

つめこみ教育に比例して、生徒の非行の増加している。
深刻ないじめや自殺を生み出すほど過酷な点数競争と管理主義教育。
政府・文部省のやっていることは、教育ではなく、子ども狂わせる「狂育」である。
文部省自身が教育の名のもとに、子どもの人権を抑圧し、子どもをいじめている。

◆子どもに最善の利益を!

子どもの権利条約は、 「子どものかかわるすべての活動において…
子どもの最善の利益が第一義的に考慮される」(第3条)と 述べている。

戦後最悪といわれる今回の新学習指導要領は、
「子どもの最善の利益」とは、まったく相いれないもの。
私たちには、新学習指導要領につらぬかれている差別と選別の能力主義から
子どもと教育を守る責務がある。

以上、長い要約になりましたが、このような学校教育における異常な状況が、
“乳幼児教育”にも影響を与えています。

◆“胎内”で「お受験」勉強

テレビで幼児の塾のCMが登場し、有名小学校の「お受験」を題材にしたテレビドラマが
高視聴率をあげ(わが家も見ていましたが)、わが家にも早期教育をすすめる
ダイレクトメールがくりかえし送られてきます。
「マイナス1歳からの天才児教育」などと「胎内」にまで、
受験競争が浸食してきている異常な時代です。

◆早期教育による発達の歪み

個々のケースの具体的分析抜きで早期教育すべてを全面否定するのは誤りですが、
子どもの自我が育っていない段階での早期教育は、膨大な情報を、子どもの自発性抜きに、
一方的にインプットすることにならざるをえません。

家庭研究所の調査データによると、早期教育された3歳児のケースで、すでに
子どもの社会性、自発性、運動性に問題が生じています。

早期教育は、子どもの人間的な自立と、
主体的な学習を疎外するものになる可能性が高いということです。(そう)



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