●作家・山崎豊子さんの地をはう取材の結晶
  (そう記、2000年1月発行の「家族新聞」第9号より)

『沈まぬ太陽』『大地の子』『白い巨塔』『華麗なる一族』『不毛地帯』など、
数々のベストセラー小説を発表されている作家の山崎豊子さんの自宅にうかがって、
お話をきく機会を得ました。

1999年、ちょうど、『沈まぬ太陽』が大ベストセラーとなっているときで、
1時間の約束だったのですが、なんと倍の2時間にわたって
お話をうかがうことができました。

『沈まぬ太陽』では、主人公の家族とのかかわりも1つの重要なテーマとなっています。
家族を引き裂く冷酷な資本の横暴にも屈せず、
「空の安全」を求めて、巨大航空会社とたたかう主人公の姿に感銘を受け、
3部構成全5巻の長編にもかかわらず、一気に読ませます。

山崎さん自身、泣きながら書かれたという主人公と家族が離ればなれに引き裂かれるシーンや、
520人もの尊い命を奪った“史上最悪のジャンボ機墜落事故”に綿密な取材で迫り、
ドキュメント的小説手法で描く圧巻の『御巣鷹山篇』 など、
家族を奪われた遺族の悲しみと、犠牲者の“声なき声”をも描ききり、
主人公の「空の安全」を求めるたたかいに、一層の重みを持って胸に迫ってきます。

『沈まぬ太陽』執筆中のエピソードなど、いろいろお聞きしましたが、
一部マスコミによる、航空会社側に立った悪意に満ちた攻撃なども
ありますので、控えておきます。

山崎さんの作品は、映像化(映画、テレビ)されることが多いのですが、
「『白い巨塔』『華麗なる一族』『不毛地帯』など
私の作品を映画化してくださった山本薩夫監督が生きてらっしゃったら、
『沈まぬ太陽』もきっと映画にしてくださったのではないかと思いますね」
と語ってくださいました。じつは私も同じことを思っていたので意気投合しました。

山崎さんは、これまでの作品の中でもっとも取材がたいへんだったと振り返り、
「今でも夢でうなされるのは、原稿を書いている姿ではなくて、
地をはうような取材をしている自分の姿なんです」と言われていました。
75歳にして、エネルギッシュな山崎さんのお話をうかがって、
ちょうど半分の年齢の自分の方が、エネルギーをたくさんもらいました。



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