ハンターの右腕

 

『暇潰しと好奇心』だった、深く考えてもいなかった、ただ『豪刀ゾーク』に会ってみたかった、その先の結末なんて想像もできなかった。

ハンターなら知らない者はいないだろう、その男は伝説の刀を所有し、高齢ながらも『最強』のハンターと呼ばれていた.....

その彼が行方不明で一緒に探して欲しい、と、彼のサポートユニット『シノ』が俺たちに直に依頼してきた。

なんでもウォルスとバーニィも一緒らしい、ラグオル古代遺跡、降りたった俺とシノ、そしてエステル、しかし事態は最悪に限りなく近いものだった。

「この反応は・・・・間違いありません、ゾークの『カムイ』です。」

シノはその無表情な顔からは想像できないほど、焦っていたんだと思う。

「クッ!!なんだってこんなに化け物共が大勢っ!!邪魔をするなああ!!。」

そう、明らかにいつもとは違う化け物の多さにエステルもてこずっていた。

「!!!これは・・・『カムイ』、折られて・・。」

普通の状況ではなかった、壁に一面の刀傷、『何と?』というより『何があったのか?』という言葉が頭をよぎる。

「どのみち、急がないとやばいってねぇ、さくちん!シノ!走って!!。」

俺たちは化け物共をくぐりぬけ走り続けた、『ヤシャ』、『サンゲ』、折れた刀が見つかるたびにあきらかにシノは不安になっていたとおもう、そして俺たちも・・・。

「ウォルスちゃん、まさかとは思うけど・・・。」

そしてゾークの反応が強まった細い通路に二人の男が倒れていた、シノは二人に駆け寄る。

「バーニィ様!、ウォルス様!、いったい何があったのですか!?。」

急いで二人に『レスタ』をかける、最初に気ずいたのはバーニィだった。

「シノ・・・きちまったか・・・スマネェ・・・ゾークを守れなかった・・・・。」

反応は通路の先に続いていた、エステルがふたりを抱きかかえながらレスタをかけつづける。

「さくちん、シノ、ここはぼくにまかして、はやくっ!!。」

俺たちはまたほそい通路を走り出した。

「ツキヤ様、これが不安という感情なのでしょうか・・・?。」

そして通路を抜け、二人がみたものは数百という化け物の死体の中心にたたずむハンターが肩でいきをきらしている姿だった。

「ゾーク!!。」

そのシノの声に振り向くゾーク、シノをみつめるとその場に崩れ落ちた。

「ああ・・・なんでこんな事に・・。」

シノの瞳に涙は無かった、ただ、俺には泣いているように見えた。

「お前は・・・?。」

俺はゾークのその問に自分の名とここにきた経緯を話した、発した言葉までは覚えていない。

「パイオニア2に戻り・・伝えてくれ・・・この星は危険だ・・強大な悪意に・・包まれている・・・。」

ゾークは重傷で俺とシノの見分けもつかないほどだったのだろう、右手に握っていた刀をおれに手渡すと・・・それが最後の言葉だった。

俺はシノにその刀を手渡そうとした、しかしシノは横に首をふった。

「これはゾークの望むことではないけれど・・・側にいたいのです・・その刀は依頼達成の証として・・・ゾーク・・・今お側に・・・。」

シノは微笑みを浮かべていた、無いはずの表情で、俺とエステルはウォルス達をメディカルセンターに運ぶといつもの立体交差で物思いに・・・・いや、更けている暇は無いことに気づいていた。

「さくちん、このまま星を離れる訳にはいかね〜よなぁ・・・。」

ゾークの死は『敵』たる者への確信になっていった、俺は握り締めた『アギト』に誓った。

「全てを終わらしてやる・・・俺たちの始まりの為に・・・。」

 

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