グレイブ家の執事

 

「じゃあ・・・ここでいいです、ありがとうございました・・・。」

その少女はまだ幼さの残る腕に『音声ディスク』を抱え、居住区画へ消えていった、少女の名は『マァサ』、行方不明の執事ブランドを探しに依頼をうけたサオリたちと共にラグオルに降りた、そして。

「やりきれないよね・・・これで彼女、独りぼっちだ・・・。」

メディカルセンターのすぐそば、『街』が見渡せる立体歩道で飛び交うエアロモービルの光を見つめながらサオリが呟く。

「ふむ、独りねぇ、どぅだろ?。」

となりで『固形レーション』をつまみながらエステルが言った。

「どぅだろって・・・あの子にはもう頼れる人がいないんだよ?、エス、帰っても・・・迎えてくれる人が・・いないんだよ・・。」

エステルはその言葉にも変わらず口を動かしている、ふいにハンターギルドの方から声がした。

「ほら、お前らの取り分、もってきたぜ。」

振り返る二人、バンクカードをもってハギが歩いてくる。

「サオリ、まだ沈んでんのか?。」

エステルが目で返答する。

「ま、こ〜いう時は食って寝て忘れろや、咲雷とさいじが何時もの店に行ってるってよ。」

サオリは首を横に振る。

「ふむ、ま、イイサ、いこか?ハギくん。」

エステルが半ば強引にハギの首に腕を回し引きずるように街の方に歩いていく。

「いいのかよ?エス?。」

「きにしな〜い、ま、なるようになるサ。」

ハギは一度だけ振り返った、サオリはまだあらぬ方向を見つめていた。
 

<一週間後・ハンターギルド>

「このNo・18の依頼、受けたいんだけど?。」

まだ少し気になっていた、しかし『自分の仕事』を放棄するわけにはいかない、サオリはいつもどうりギルドで仕事を探していた。

「しばらくお待ちを、ハイ、登録できます・・・あ・・。?」

受付嬢が困った顔をする。

「あの、この依頼は複数のハンターが必要です、最低でも後一人。」

サオリは心当たりを思い出そうとするが・・・。

「エス・・・ウォルス・・・カワ・・・だめだ、みんな『出てる』。」

そんなとき、不意に後ろから声がした。

「あの・・・私じゃだめでしょうか?。」

ふりかえるサオリ、そこには、まだ着慣れてないソウルフレームを纏った少女がサオリの返事を待っていた。

「ああ、マァサ・グレイブさんですね、Eランクですが、サオリさんがAAランクのハンターだからお二人でなら依頼は受けられますが?。」

受付嬢は事務的に話を進める、サオリはマァサを見つめくちを開く。

「なんで、『ハンター』を?。」

マァサは恥ずかしそうにしながらもはっきりした口調で。

「単純ですよね、でも、ハンターって、あの時のサオリさんたちって、『強く』見えたから、『強く』なったら両親やブランドも安心するかな?って思ったから・・・。」

サオリは再び受付を始める、そして。

「さ、いこうか、マァサ、『強さ』をさがしに、ね。」

「ハイッ!。」

少女は、いや、二人は笑顔を取り戻し、ギルドを後にした。
 

『おまけ』

その様子を物陰でみていたエステルとハギ。

「のぞき〜は女〜のロマン〜です〜ってね。」

鼻歌交じりに様子を伺うエステル。

「エス・・・趣味悪いなぁ・・・お前。」

ハギが呆れ顔でそう言うと。

「ムジナの心はスケベごころってね、君もここにいる時点で『同罪』さ。」

「くっ・・・・。」

それ以上なにも言えなくなるハギ。

「しっかし二人ともかあいいなぁ〜、さらっちまうかなっ。」

「おいおい・・・・。」

 

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