第1章
1.君の風を聞かせて

― 同時刻 ―

森の中を紅い髪の少女が足早にどこかへ向かっている。

「たしか・・もうすぐのはずじゃ・・。」

生い茂った草をかき分けた先に、一軒の小屋が見える、その小屋の前で若草色の髪の青年が薪を割っていた、青年はその少女に気付くと笑顔で手を振る。

「え〜と、セフィ?だっけ、また来てくれたんだね、アイツもよろこぶよ。」

青年はそう言うと小屋のドアを指さす、セフィは小さくお辞儀をすると、ゆっくりドアを開けた。

「(エル・・・・眠っておるのか・・・?。)」

小屋の奥に静かな寝息をたてながら眠っている少女『エル』の姿が見える、セフィはおそるおそるエルの側に近寄り顔のすぐ隣に『ちょこん』と座った。

「お〜い・・・まだ起きぬのか〜・・・?。」

小声で囁き顔をのぞき込む、あちらこちらに擦り傷、セフィを魔物からかばう際に出来た傷跡、セフィはエルの頬を優しく撫でた。

「すまぬな・・・余をかばったばかりに・・・。」

そうつぶやいたその時『ぱくっ』と、頬を撫でていた手にエルが噛みついた。

「ふぁにいっふぇるお?えふぃ、ふぉもあいふぉはふふぇうふぉふぁ、ほ〜ふぇんふぇひょ?。」

手をくわえたままエルがはなしかける。

「ぷぁっ!・・・なにも気に病む事は無いってね、もう、そんな顔しないでよー。」

その行動に驚いていたセフィだが、だんだんとすまなさそうな顔になってくる。

「今、余が生き続けられているのは、あの時生き終わらなかったエルのおかげじゃ・・・。」

「(・・・・難しく考えすぎ・・・。)」

「女のエルを傷だらけにした余の罪は、どんなに償っても償いきれまい・・・・。」

「(堅いなぁ・・・・眠くなりそうだよ・・・。)」

いたって真面目に謝罪しようとするセフィの話を、エルは半分以上、いや、自分が『つまらない』と思った所全てを鼻歌交じりで聞き流していた。

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