「私は・・・ダメです、きっとアナの邪魔になる。」
「あんでよ?アナはカチュアちゃんに『ベタぼれ』だあぜ?。」
カチュアは立ち止まりツキヤに掴みかかるような勢いで言い放った。
「ダメなんです!!アナは『エンノイア』なんです、私みたいな・・・・普通の人間とは違う、ツキさんだって昨日のアナを見たでしょう!!まだ私と同い歳なのに、あの・・・竜と戦えて。」
カチュアは一度目を伏せ、再びツキヤを見つめる。
「・・・まるで『竜破』の力に引きずられるように・・・特別な力、私には無い!!。」
それはツキヤも感じていた、たぶんカチュアの言っている力とは別だが、たしかにアナには『力』がある、しかしそれは特別な物ではなく・・・。
「なあ、カチュアちゃん。」
カチュアは自分の言葉に割って入ってきたツキヤに『びくっ』と反応した、しかしその瞳は真っ直ぐツキヤに向けられていた。
「ヒーローを作るのはヒロインの仕事なんだぜ?カチュアちゃんみたいに可愛いけりゃなおいい、近くに大切な人がいるからヒーローはかっこ良くいられる。」
ツキヤのいきなりの言葉に戸惑うカチュア、おどけたように微笑みツキヤが続けた。
「あいつは、アナは特別さ、『英雄』てやつが俺の思っている存在ならあいつは限りなくそのものだよ、大切な物を知り、真摯でひたむきで、人間を一生懸命生きている。」
ツキヤの両手がカチュアの両頬に伸び、優しく包む。
「でもな、あいつのその『力』の出所ってやつはさ・・・・。」
言葉を途中で止めてその手で『くしゃくしゃ』とカチュアの頭をなでる、カチュアは不思議そうに、でも心地よさそうにその行為を受ける。
「ん、ここでいいぜ、カチュアちゃん、街道も近いし。」
ツキヤは街道の方を向くとカチュアの頭から手を離し歩き出した、しかし、少し離れた所で振り返ると、カチュアへ、それが別れの言葉だった。
「アナはさ、『強い英雄』になりたいんじゃなくて『英雄が強い』からなりたいんだぜ、もし聞いたこと無いなら聞いてみなよ、あいつが英雄に憧れる理由をさ、きっとあいつの『理由』はカチュアちゃんの背中を押してくれるっ。」
「ツキさん・・・・。」
手を振りつつツキヤはカチュアから離れていく、カチュアはだんだん小さくなるツキヤの後ろ姿に深く頭を下げた。 |