軌跡ちゃん日記

その日はウォルスの『任務』も無く、『G・A』の詰所でみんなでステアさんの焼いたクッキーを囲んでお話をしてました、そのとき『K』さんが春に桃色の花が咲く木の事を話してくれました。

「キセキちゃん、ぼくらの入学式の日、学園にも桜が咲いていたね、もしかしたらその木って桜かなあ?。」

その、らんちゃんの言葉にあたしはどうしてもその木を見てみたくなりウォルスに連れていってくれるようにお願いしました。

「ああ、いいぜ、どうせ暇だしな。」

トラスタァクの街から少し歩いた高台の上にその木は街を見つめるように立っていました、確かに桜の木でした。

「さすがに花は咲いていないなあ・・・。」

らんちゃんはためいきをつきました、今は夏も過ぎ風も涼しい時期です。

「来年、またこようよ、らんちゃん。」

とは言ったもののあたしも少しがっかりしました、その時ウォルスが。

「俺の『記憶』でいいなら、みせてやる。」

と言って『ジルコニア』を取り出してロストを解放しました、次の瞬間、あたしとらんちゃんの目の前に美しい桃色の花をつけた木が立っていました。

「ジルコニアは『虚偽・幻影』の力を持っている、まがいものでわるいが・・。」

ウォルスはあたしたちの方を見ませんでした、あたしとらんちゃんが、涙を流してたのに気付いてたんだと思いました、あたしは不覚にもクラスメイトの事を思い出していました。

しばらくして『記憶の幻影』も消え、街にもどりました、らんちゃんも『あたしたちの世界』の事を思い出していたのかなあ。

「いつか、帰れるといいな。」

その、ウォルスの言葉にあたしは少し複雑な気持ちだったけど・・・、『あの木』を見にいって良かったと思いました。

いつか、今度はあの校庭の桜を『三人』で見れたらいいなあ・・・。

異世界生活412日目 いちみね きせき

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