Raindrops Memories

バシャ!

地面を蹴ると雨の音が聞こえる。
マンダリア平原に土砂降りの雨が降る。
暗い空に雷鳴が轟き、稲妻が閃光(ひか)っている。

「囲まれるぞ! 背中合わせに円陣を組め!!」
アグリアスが叫ぶ。

ぼく達は今、マンダリア平原でランダムバトルをしている。
隣にアグリアス様の息づかいを感じている。

アグリアス・・・・・・・・・・様・・・・・・・・・・・。
貴女に初めて出逢ったのも、こんな土砂降りの雨の日だった・・・・・・。



オーボンヌ修道院。
降りしきる雨。
ディリータにさらわれるオヴェリア様。

「申し訳ございませぬ。 オヴェリア様は必ず私が・・・・・・!」

雨粒を滴らせている黄金の糸・・・・・・・・・。
琥珀色の瞳を雨にぬらし、頭をうなだれている貴女の姿。
貴女の瞳をぬらしたのは、雨なのだろうか・・・・それとも・・・・・。

バリアスの谷で追われている貴女。
「ラムザ殿、どうしてここに!?」
驚いたような貴女の顔。
あの時も雨が降っていた・・・・・。

そして・・・・・・・・。

「いまさら疑うものか!! 私はお前を信じるッ!!」
ゴルゴラルダ処刑場で貴女がぼくに叫んだ言葉・・・・・。

あの時・・・・・・・・・・。
あの時ぼくは・・・・・嬉しかった。
「貴女に」信じてもらえたから・・・・・。

だから今度は・・・・ぼくが貴女を・・・・・・・・・
貴女の苦しみを癒してあげたい・・・・・・・・・・と思った・・・・・・・・

ただ貴女のそばに居たいと願った・・・・・・・。



モンクのローウェルが波動撃を放つ。
ナイトのカーツがパワーブレイクをする。
白魔道士のハリーがケアルラを唱える。
アグリアスが聖剣を振り下ろし、無双稲妻突きを放つ。
ラムザが剣を上段に構える。

「次のターンで終わらせるぞ!」
再びアグリアスがみんなに向かって叫ぶ。

「はいッ!」
ぼくは応える。

雨はいつかあがるもの。
明けない夜はない。
幸せと不幸せは隣り合わせ。

いつか幸せな日が来ることを・・・・・ぼくは・・・・・・・信じているッ!

「やぁぁぁぁぁっっッッ!!!」
ラムザが剣を振り下ろす。
モンスターの口に血泡が吹き出す。
そしてそのまま、モンスターは絶命してしまった。

ランダムバトルが終了した瞬間、今まで空を覆っていた黒い雲がさあっと流れていった。
「雨が・・・・・・・・・あがった・・・・・・・・・」

目の前に、緑の平原と澄み切った青空が広がる。
みんな雨でびしょびしょだ。
眩しい太陽の光が、再びぼくらを照らす。

「太陽の光が目に痛いよ・・・・・・・・」
アグリアスはそう言って、にっこりとラムザに微笑みかけた。

ラムザは太陽に照らされたアグリアスがきらきら眩しくて、目を細めて言った。

「ええ、眩しいです。」

(貴女が・・・・・・・・・・・)

雨粒を滴らせているアグリアスの黄金の糸は躍動感に溢れていた。
初めて出逢ったあの時とは違う、生命の輝きをラムザは感じた。


ラムザの恋は、こうして始まった。




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