My Sweet Sweet Betterhalf♪

1.AKT コスモス・ガール

「きゃ・・・・・・っ!」
アイテム士のコスモスが、岩場で派手にすっころびそうになる。
体が小さいので、アイテム入りの袋が重かったのだろうか。
いや、その前に彼女は相当なドジだった・・・・・。

「あぶな・・・・・・・・・・・っ!!」
ひとりの見習い戦士が左腕を伸ばす。
ちょうどおなかのあたりが引っかかり、そのおかげでコスモスとアイテムの数々は、
なんとか地面と「こんにちわ」せずに済んだ。

「たすかったあ・・・・・・・・・。」
と安堵のため息を漏らすコスモス。
思わず体の力がどっと抜け、見習い戦士の左腕にずん、と重みがのしかかる。

「ぐ・・・・・・・・・・・・・・・っ」
見習い戦士は呻いた。

「おい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・重い・・・・・・・・・・・・・・ッ。(-_-;)」

ふと頭を上げてみると、そこには見習い戦士のずきんの中から長い金の髪を
のぞかせている見慣れた顔の少年がいた。

コスモスは「きょとん」という顔で少年を見つめ、やがてはっと気が付いた。
「あっ、そうだ。 ポーション!!!」
コスモスは、がばっと跳ね起き、前にぶら下げているバッグの中身を確認した。
「良かったあ・・・・・無事だった・・・・・。」

少年はコスモスのことを(忙しい奴・・・・)と思った。
見ている間にくるくると動作が変わり、表情が変わる。
しかし、だんだんと腹が立ってきた。

「・・・・・・おい。 おまえ、オレになんか言い忘れてないか?(-_-#)」

「あ・ら?」
その言葉にコスモスはやっと事の次第を把握し、とびっきりの笑顔を少年に向けた。
「えっと・・・・・ローウェル君・・・・・ですよね。 ありがとうございました!!」

どっきーん。
どきどきどき・・・・・・・・・・・。

「あれ・・・・・・・?」
途端にローウェルの胸の動悸が激しくなる。

今まで女の子に対して、こんなにどきどきしたことなかったのに・・・・・どうしてなんだろう。
ローウェルは自問自答した。
コスモスはにこにこしたままローウェルを見上げている。

「こっ、これから気を付けろよ。」
ローウェルは気恥ずかしくなり、赤くなった自分の顔を見られないようにそっぽをむいて
言った。

「はーい♪」
コスモスはスキップしながら、あちらの方へ駆けていった。

・・・・・が少し離れたところで
「きゃー。」
というコスモスの悲鳴と、ガシャバキという大きな音が聞こえてきた。

「またか・・・・・・・・。 かなりボケ入ってるな、あの子・・・・・。」
(でもあの笑顔、ちょっと・・・・気になるかも。 それにすんごく・・・・やわらかかった。)
ローウェルはひとり、ほくそえんだ。

これが四年前。
オレがコスモスという女の子を初めて意識した日・・・・・・・・・・・・・・。


2.AKT ローウェルの焦り

「ボケってなによ。 ボケって。」
コスモスがローウェルの頭をこつん、と こづく。

「でも・・・・・・・・・・・・・・まあ、たしかにドジばっかりだったわね。」
コスモスはおどけて舌をぺろっと出した。
「だろ?」
狭い部屋の中で向かい合ったふたりは、顔を見合わせて、くすくすと笑う。

今日は雨。
さして急ぐ用もない・・・・・時にはこんなバトルの無い日もある。

コスモスに好きだと言ってもう何ヶ月、いや、何年経つのだろう。
ローウェルは未だはっきりとした返事をもらっていない・・・・。

(一体、オレはおまえのなんなんだ・・・・・・・・・?)

ローウェルはバトルのない日はこうしてコスモスの部屋に遊びに来ては、
談笑していた。
はたから見ていると、本当の恋人同士のようだ。

しかし今日のローウェルは、少し違っていた。

(コスモス・・・・・。
なあ、おまえ気づいてんのか?
オレ、あの時からおまえのこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。)

「でも大分呪文もマスターしたんだよ。」
魔法の書を手に持ち、えへへと笑うコスモス。

「ローウェル、いっぱいマスターレベル持ってていいなあ・・・・・。」

(・・・・雨の音とコスモスの声だけが聞こえる・・・・・。
オレの心臓の鼓動の音まで聞こえてしまいそうなほど・・・・・・・・。)

「でもCTが長くって、やになっ・・・・・・・・・・・・」
ふと、コスモスが何かしら異様な雰囲気に気が付き、読んでいた魔法の書から目を離す。

なに・・・・・・・・その目・・・・・・・。

(ローウェルがわたしを見ている。 ・・・・・いつもと違う目・・・・・。
まるで肉食の獣が小動物をねらうような・・・・・。)
コスモスは本能的に身の危険を感じ、背筋をぞくっとさせた。

次の瞬間、コスモスの腕はローウェルの元に引っ張られ、バランスを崩したはずみで
魔法の書が床に落ちる。
ローウェルの腕がコスモスの体をベッドの上に押さえつける。
コスモスは強く抱きしめられ、身動きが取れなくなった。
ローウェルの熱い吐息がコスモスのくちびるにかかる。

「ねえ・・・・・・・・・。」
ローウェルはコスモスを抱きしめたまま潤んだ瞳で彼女を見つめて言った。
コスモスはおびえた小鳥のような瞳をしている。
「いつになったらオレはおまえの一番になれるの・・・・・!?」
「ロー・・・・・・・・・・」

(こんなに・・・オレがこんなにおまえを愛しているのに!!)

ローウェルの焦りは最高調にまで達し。
それを表現するのはただ彼女に乱暴なくちづけをすることだけだった。
こうなるともう止まらない。
乱暴な愛はますます加速する。

「コスモス・・・・・・・・・」
ローウェルは彼女をいっそう強く抱きしめ、思いあまって彼女の首筋にくちづけようとする。
「い・・・・・・・・・」
コスモスは、やっとのことで自由の利く右手をわなわなとふるわせながら・・・・・。
「い・・・・・・・・・・やっ!!!」

ぱしっ!!

ローウェルのほほを打った。
コスモスの二つの瞳にはいっぱいの涙がたまっていた。
しかし、次の瞬間、後悔の念が彼女の心の中に沸き起こった。
「あ・・・・・・・・・・」

ローウェルは一瞬、カッ、と頭に血が上りコスモスを睨みつけた。
しかしそれから、打たれたほほに手を当ててうつむいた。
そしてくすくす・・・・・・・・・・・と笑い始めた。
自虐的な笑いだった。

「・・・・・これがあんたの答えなんだ・・・・・。」


3.AKT 嫌いになんて・・・・なれない

「わかったよ。 もうつきまとわない。 ・・・・・・・・・二度と!!」
そう冷たく言い放ってローウェルはコスモスに背を向け、部屋から出ていこうとする。

ちがう
ちがうのよ、ローウェル・・・・・

行かないで・・・・・・・・・

ローウェル・・・・・

ローウェル!

ローウェルっっ!!!

コスモスは力を振り絞ってローウェルに向かって心の中で叫ぶ。
あまりのショックで体が小刻みに震える。
声が出ない・・・・・でも・・・・・。

「ろっ・・・・・LAUWEL!!!!」

コスモスは声を振り絞って叫ぶ。

ローウェルは悲しい顔をしながら、振り向いた。
目の前には、ふるえながらうつむいているコスモスの姿があった。
(小さな肩をふるわせてオレの名を呼ぶ可愛いコスモス・・・・・・・・・。)
急に彼女へのいとおしさがローウェルの胸にこみあげてくる。

「おいで・・・・・・・。」
ローウェルはためらいつつも、コスモスに向かってやさしく両手を広げた。

「あ・・・・・・・」
コスモスはおぼつかない足取りでローウェル腕の中に飛び込んだ。
そして彼の服の袖をぎゅっ、と握りしめ、こらえきれず泣き出した。
「・・・・・・・わああああーん・・・・・ローウェル・・・・・」
そのはずみでローウェルの背中が、とん・・・・・と、壁に当たった。

「わっ・・・・わたしを・・・・わたしを・・・・きらい・・・・・になら・・・・ないで」

(オレはなにやってんだ・・・・・・・・。 コスモス泣かせて・・・・・・・・・。)
「嫌いになんて・・・・・・・・なれないよ・・・・・・・・・・」

ローウェルはひとつ大きなため息をつき、壁にもたれたまま、ずるずる力無く
しゃがみこんでしまった。
コスモスをその腕の中にかかえたまま・・・・・・・・。

「うっ・・・・・・うああああ・・・・・・・・・ん・・・・・」
「ごめんよ・・・・・・・・」

雨だけが静かに降り続いている・・・・・・・。


4.AKT わたしをすきでいてね

それから何分経っただろう。
腕の中のコスモスは、少し平静を取り戻していた。
ローウェルは、コスモスの髪をやさしくなでた。

「わたし・・・・・・わたし・・・・・・・・」
「もういいよ・・・・・なにも言わなくても。 ごめんね。 コスモス・・・・・。」
ふわふわの金の髪がローウェルの指を通り抜ける。
「オレ、いつまでたっても二番目だから・・・・つい、イライラして・・・・・。」
「ローウェル?」
コスモスがローウェルを見上げる。

「違うの・・・・・もうずっと前からローウェルは一番なのよ?」
「えっ・・・・・?」


あの方はラムザの思い人。
わたしがいくら好きでもけっして叶うことのない思い・・・・。
いつまでたっても、あこがれの方・・・・・・・・。

でもあなたは違う。
いつもわたしのそばにいて、心の支えになってくれているのよ・・・・・・。


「だったらなぜ・・・・・。」
ローウェルは必死だ。
「なぜオレを拒んだの?」

「だって・・・・・・・・・。」
「だって・・・・?」
気が焦るのを押さえつつ・・・・ローウェルは優しく問いつめる。
 
「だって・・・・怖かったんだもん・・・・・ローウェル・・・・・」
コスモスがまたべそをかく。

「・・・・・・・?????」
はァ? 怖いィ!???
ローウェルはほほを人差し指でぽりぽりと掻いた。
だいたい男ってのは基本的に・・・・ごにょごにょ。
いや、ま、いっか・・・・・・。

「ごめんよ。 コスモスの気持ちも考えないで・・・・・・。」
ローウェルはぎゅっ、と強く彼女を抱きしめた。
「ううん・・・・」
コスモスはローウェルに抱かれながらぽつりぽつりと話し出した。

「ローウェルのことは好き・・・・・。 そうなってもいいと思ってる・・・・・。
でも今は・・・・まだ・・・・・・・・いや・・・・・・。」
「わかった。 待つよ。」

可愛いコスモスのためなら、なんだって。
いつまで待てばいいのかオレ、わかんないけど、お前が「大人」になる日まで・・・。
オレ、待ってるから・・・・。
ずっと、待ってるから・・・・・。

ローウェルはコスモスの顔を見、弾んだ声で言った。
「それじゃ、オレ、いいんだね? コスモスのそばにずっといて、いいんだね?」
 オレのこと、嫌いなんじゃないんだね?」
コスモスははちきれんばかりの笑顔で答えた。
「ええ! ええ! ローウェル!!」

「わたしをはなさないでね!!」
「もちろん!!」
二人はひしと抱き合い、笑い合った。

ローウェルはひとり呟いた。

つまり「男」になるのが早すぎたワケね・・・・・。
やっぱりまだまだ子供なんだな・・・・・。
うー・・・・焦るんじゃなかった・・・・。

でもまあ、一番であることはわかった。
そうだよ、まだまだ先は長いんだ。
そしてにっこりと、とびきりの笑顔で、コスモスに笑いかけた。

「大好きだよ。」
「わたしも。」

コスモスが無邪気な笑顔でローウェルに言う。
「ローウェル。 ずっとずっとわたしをすきでいてね。」

ああ、この笑顔にオレはまいっちゃったんだろうな。
ローウェルは思った。
「ああ、約束する。」

その言葉を聞いたコスモスは、部屋の中を両足でぴょんぴょん跳ね回った。
「♪♪♪」

はあ・・・・・・やっぱり子供だ・・・・・・・。
ローウェルは頭を抱える。

こんな子供にオレは何をしてたんだか・・・・・。
我ながら・・・・・・・・自己嫌悪・・・・・・・・。

それから、コスモスの姿を見て、くす・・・・・と笑ってしまった。
あれから4年は経つのに・・・・おまえちっとも変わってないんだな・・・・。

初めてお前に触れたあの平原、綺麗な水色のドレスで一緒に踊ったり、
おまえが見習い戦士の時は、オレがいつも助けてやってたんだぞ・・・・・・。

いつでもおまえはオレに希望をくれた。
そのとびきりの笑顔で。

5.AKT My Sweet Betterhalf

ローウェルはその夜、夢を見た。

夕やけに広がるなだらかな丘。
仕事を終え、我が家に続く一本道をローウェルが歩いてくる。
コスモスはその腕にしっかりとちいさな赤ちゃんを抱いている。
3人は仲良く家路に向かっていく。

それでもいつかは・・・・・。
それでもいつかは彼女が永遠の伴侶(Betterhalf)になってくれる。

その日をオレは気長に待つとしますか・・・・・・・。




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