MAYBE SOMEDAY

二ブルへイムにラムザ達がやってきてから早いもので、数ヶ月の月日が流れた。

6月のある晴れた日。
教会のベルが鳴る。
今日はローウェルとコスモスの結婚式。

白いタキシードを着たローウェルは男性陣に囲まれていた。
金色の長い髪が白いタキシードの上で輝いている。

「はい、おめでと。 では祝福のキッスをば。」
ハリーがふざけてローウェルのほほにキッスする。
「よせやい。」
ローウェルは照れて逃げようとする。
「まあまあ、そう言わずに。」
カーツが笑いながら、がっしりローウェルの肩をつかむ。

「うふ・・・・。」
コスモスは純白の薔薇のウェディングブーケを手に持ち、
ミニ丈のパウダーピンクのウェディングドレスを着て、にっこりと微笑んでいた。

「コスモスさん、素敵ぃ〜♪ いいな、いいな♪ ワタシたちもいつかは・・・・・。(*^_^*)」
アルマとラファは、すでに「ジューンブライドに憧れる乙女モード」に突入している。
ふたりの瞳がきらきらと輝いている。

「あぁ〜ん、コスモス(*^_^*) なんてキュートのぉ♪ ミニのドレスなんてっ♪♪」
クッキーが興奮した面もちで、そう言った。

今日は特別な日。
ゲストに招かれた女性陣は、精一杯ドレスアップして、花嫁に負けないぐらい華やかだ。

「あら、クッキーも、とっても綺麗じゃない。」
そう言ったのはテイシア。

そういうテイシアもいつものおろし髪をアップにしていて、とても美しい。
コスモスに先はこされたものの、彼女のゴールも近そうだ。

彼らから少し離れた木陰にラムザとアグリアスはいた。

(女の人ってお化粧でずいぶん変わるんだな・・・・・・・・。
ぼくも早く結婚したいなあ・・・・・・・・・。)

隣にいるアグリアスが自分の花嫁になったとき、どんなに美しくなるだろう。
そんなことを想像して、ラムザはひとりほほを赤く染める。
しかし、アグリアスは・・・・なぜかコスモスたちの方をぼおっ、とただ見つめているだけだ。
ラムザは、コスモスがこちらをちらちら見ているのに気が付いた。

「コスモス・・・・・・・・・・?」
・・・・・そうか、アグリアスのことを・・・・・・・・・・。

ラムザは隣にいるアグリアスにそっと耳打ちした。
「コスモスが貴女の言葉を待っている・・・・・・。 行ってあげて・・・・・・・。」

とくん・・・・・・・・っ。
アグリアスの心臓が、瞬間、高鳴る。

「・・・・・・・・・・。」
ラムザに軽く、とんっ、と背中を押され、アグリアスは前に進んだ。
高いかかとの靴に慣れないのか、少し、よろめきながら。
パウダーピンクの花嫁は、ゆっくりと近づいてくるアグリアスを見つめている。

「コスモス・・・・・・・。 おめでとう・・・・・・。 とても綺麗だよ。」
「アグリアス様・・・・・・・・・・・・。」
花嫁は目元に涙を浮かばせ、しかし、嬉しそうに微笑んだ。

遠い日のあの夜、私に愛を告げてくれた少女。
今、私の手をはなれて愛しいひとの元へ行くのだね・・・・・・・・。

「あなたを・・・・・・・・・お慕い申しております・・・・・・・・・。」

あの言葉、驚いたけど、嬉しかった。

アグリアスが先ほどコスモスから少し離れていたのは・・・・自分の心の中に
なにか言いようのない寂しさが溢れてきてどうしようもなかったから・・・・・。

妹のように愛らしい・・・・・・・・・・・・・コスモス。

「どうか、幸せに・・・。」
そう言ったアグリアスの目の前に、純白のウェディングブーケが差し出される。

「次は貴女とラムザの番です。」

パウダーピンクの花嫁は、にっこり微笑んでアグリアスにウェディングブーケを手渡すと、
白いタキシードの新郎の元へ駆けていった。

恋に恋する女の子は、もう卒業。
今は本当の愛を知る女性になったのだ。

アグリアスはその様子を見てすこし涙ぐんだ。

いつの間にかアグリアスの隣にはラムザがいた。
ラムザは何も言わず、アグリアスの肩をそっと優しく抱いた。
アグリアスは愛する人の肩に静かにもたれかかった。

コスモスは、ぴょんっ、と飛び跳ね、愛しいローウェルの胸に飛び込む。

「ローウェル、ずっとずっとわたしをすきでいてね! はなさないでね!」



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