序章

600年前、死の星が太陽を覆う「死食」が発生し、その年に新しく生まれた命はすべて奪われた。
人も、動物も、植物も、そして魔物までもが例外なく、すべて・・・・・。

そんな中、たったひとりの赤ん坊だけが奇跡的にも生き残った。
死に魅入られ、死の運命を背負ったその子は、後に魔王としてこの世に君臨した。

やがて魔王の時代に終止符が打たれ、世界がようやく荒廃から立ち直ろうとしていた頃。
時は300年前。

再び「死食」が世界を覆い、600年前と同じように一人の赤ん坊だけが一命をとりとめた。
魔王の記憶が蘇った人々はその赤ん坊を殺そうとしたが、宿命がその子の命を終わらせることを
決して許さなかった。

その子は死の息吹に耐え、死の運命を跳ね返した。
彼は後に聖王となり、世界に平和と秩序をもたらした。

ところがそれから300年後、三度目の「死食」が世界を覆った。
「死食」の影響によってアビスゲートと呼ばれる魔界の門が半ば開かれ、世界に再び混乱と
無秩序が広がり始めた。

そして過去二回の「死食」と同じように、ひとりの赤ん坊がこの世に生を受けた。

・・・・・・・・ひとりのはずだった。

しかし、運命の赤ん坊はふたり居たのだ。

ひとりは東の国、真っ直ぐの黒い髪を持つ、浅黒い肌をした男の子。
もうひとりは西の国、くるくるした亜麻色の巻き毛を持つ、白い肌をした女の子。

正反対の土地で、正反対の容姿を持つ、「運命に生かされた」この赤ん坊達。

果たして宿命と呼ぶにふさわしいこの子らは聖王の生まれ変わりなのか、
魔王の生まれ変わりなのか・・・・・。

・・・・・それとも・・・・・・・・。

三度目の「死食」からすでに15年の月日が流れていた。



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