今日(4月24日)、ソニーのLIBRIe(リブリエ)が発売されました。電子ペーパーを採用した携帯型電子書籍専用端末としては、松下からΣ Bookが2ヶ月先行して発売されています(実際には、さらに前にモニター販売されていた)。シャープや東芝なども意欲的に取り組んでいる模様。とりあえず、LIBRIeとΣ Bookの両方とも、正式な発売日に自費で購入したので、簡単な批評をば。といっても、特徴や詳細なスペックは、それぞれの公式Web サイトや各種IT関連のニュースサイトで得られるので、そちらを参照していただきたいと思います。
で、いきなり結論から言ってしまうと、現状では、どちらも単なる高価なオモチャ。トータルで言えば、価格に見合った利便性は得られません。ですが、どちらかを選べと言われたら、私はΣ Bookを選ぶと思います。
まあどちらも一長一短があるのですが、特にLIBRIeには、後発でありながら、専用端末としては見過ごせない欠点があります。その点、Σ Bookの方は、スペックとしてはLIBRIeに見劣りする(同程度の価格帯なので、結果としてコストパフォーマンスが悪く感じられる)ことは否めませんが、専用端末としての基本はしっかりと押さえています。
そこまでいうLIBRIeの欠点とは何かと言うと、一旦電源を切ると、読める状態になるまでにすごく時間が掛かるという事です。その時に挿してあるメモリースティックの状況にもよる様ですが、挿していない状態でも、今計ったところ30秒弱掛かりました。
電子ペーパーの利点の1つとして、書き替え時以外はほとんど電力を必要としないという特長が必ずあげられるのですから(というか、その特長を備えている表示デバイスを電子ペーパーと呼ぶと言ってもいいかもしれない)、電源オフにしなければよいのでは、と思われるかもしれません。その通りです。ですが、LIBRIeは、設定した時間(最長で30分)が経過すると自動的に「スタンバイ」状態になり、さらに時間が経過すると勝手に電源が切れてしまうのです。スタンバイ状態では、すぐに読める状態に戻せるので問題無いのですが…。Σ Bookでも、長い間ほうっておくと画面がクリアされますが、何かボタンを押せばすぐに復帰します(Σ Bookには、電源のオン・オフという概念自体が基本的にない)。電池の入れ替え時には、読める状態になるまでに多少の時間が掛かりますが、通常の使い方では、電池の入れ替えは何ヶ月かに一度です。LIBRIeの様に、毎日(例えば、通勤時、往路復路でそれぞれ利用するとしたら、それだけで2回)待たされるとすれば、読書の意欲をそぐという意味で致命的欠陥だと思います。
逆に言えば、この点を我慢できれば、Σ Bookには無い長所もたくさんあります。画面の視認性という点では、白地に黒のLIBRIeの方が明らかに上と思うし、音声再生や辞書引き機能など、従来の書籍の枠にとらわれない“電子書籍ならでは”の使い方が模索できます。
いずれにしても、電子書籍の本格的な普及は、端末の低価格化とコンテンツの充実がなされなければ無理でしょう。両者とも、コンテンツがまだまだ少ない。また、両者のコンテンツに互換性が無いのも気になるところです。せめて、パソコン上でそれぞれの機種用に変換できるような環境が提供されるのであれば、今後、新しい端末が出てきても、ユーザー側も安心して端末選びができるんですけど。(<面白いのは、どちらの端末用のコンテンツでも、Windowsパソコン上での閲覧環境が用意されている点。というか、それぞれの形式のWindows用の閲覧環境を、それぞれの端末上に持っていったというのが、ビジネスの観点から見た場合に正しいんだろうけど。どうせなら、Windowsパソコンの電子ペーパー版を作って、機能を電子書籍閲覧に適したものに特化させてしまえば、究極の電子書籍端末になる?)
LIBRIeの方は、現時点でユーザー側がコンテンツを作成するのが不可能な様なので、その点もどうにかしてほしい。Σ Bookには(単機能で、期間限定の試用版ですが)、最初からパソコン(Windows)上で動作するコンテンツ作成(変換)ソフトが付属しているので、自前でコンテンツを作れます。テキストやBMP画像から作成できるので、やろうと思えば高度なレイアウトのコンテンツを作成(してBMP画像で出力)する様なソフトを、メーカー以外が提供することも不可能ではありません。さらに、Σ Bookは、複数のコンテンツ形式に対応でき、必要に応じて(コンテンツにあわせて)、表示のためのソフトを追加することができますから、音声の再生などハード的に不可能なことを除けば、かなりの自由度を持っています。一方でLIBRIeは、コンテンツは専用形式で、毎月の基本料がかかる会員制のサービスからの“貸本”(一定の期間が過ぎると閲覧不可になる)を利用するのが基本となります(ただし、メモリースティック-ROMの電子辞書なども利用可能。こちらは期間の限定は無し)。
こんな状況ですから、LIBRIeの方は、あまりにも窮屈すぎる感じがします。Σ Bookの方も、著作権管理機能を備えたSDカードドライブを必要とし、カードに書き込んだ場合はパソコン上でのコンテンツ利用が不可になるなど、窮屈に感じるところはありますが、LIBRIeの、基本的には貸本しか無い、という状況も問題に思えます。そもそも、電子書籍の利点には、大量の書籍(文献)を格納しても、物理的にかさばらないというのがあるはず。また、LIBRIeの宣伝文句などにも、その様な事が書いてあります。それなのに、閲覧可能期間が限定されている。それでは多くの書籍を持ち歩く意義が半減するというものです。一回読めば満足というコンテンツもありますが、何回も読み返したい、あるいは必要なときに必要なところだけすぐに読みたいというコンテンツだからこそ、まとめて持ち歩きたくなるのではないでしょうか。これは、ソニーがおしすすめているはずのユビキタスという考え方にも通じることのはずです。
企業がビジネスとして展開するものですから、コンテンツ形式の独自化によるユーザーの囲い込みや、著作権絡みでの(ユーザーにとっては)不条理な運用方法の強制など、ある程度仕方がないとあきらめなければならない点があるのも理解できますが、あまりにもそれが過ぎると、その端末自体に魅力が感じられなくなりますし、そもそも電子書籍の市場が形成できずに終わってしまうでしょう。
現時点ではワイドハイレゾ画面を備えたPalm機(クリエ)の方が、電子書籍の閲覧端末としての使い勝手は高いと言えます。もちろん、画面の大きさや表示方法が異なるので、直接の比較は無理があるのですが、気軽に持ち歩けて、画面もそこそこ綺麗(しかも暗いところでも読める)、電源オンですぐ使える、多様な形式のコンテンツに対応している(できないのもありますが)、カラー表示、音声や動画の再生も可能等々、これを魅力的と捉える人は多いと思います。なんと言っても、電子書籍として使えないと判断を下しても、PIM機能やその他のソフトを利用することが可能なので、投資した分が無駄になりにくいというのも大きい(笑)。(<LIBRIeは電子辞書、Σ Bookは簡易データビューアーとして使うという手もあるけど(笑) だとすると、LIBRIeの電源オンに時間がかかるという点がさらに問題になるな)
ですが、一方で、LIBRIeとΣ Bookで採用されている電子ペーパーという技術(細かく言うと両者は異なる方式ですが、まあ“電子ペーパー”という大枠でまとめるのは問題ないでしょう)は、電子書籍端末としては魅力的な面を多数備えています(<だからこそ、当面は「高価なオモチャ」にしかならないだろうと予測がついていたのに買ったんだな)。まだまだ新しい技術である分、未成熟でもあります。という事は、カラー表示や動画への対応など、まだまだ手近で派手な(視覚的な)所に目標を据えられるし、実現できる可能性があるとも言えるでしょう(<動画は、書き換えが連続して発生するので、電子ペーパーの根本から考え直す必要がでてきてしまうかもしれないけど…)。少なくとも、いまよりももう少し書き替えが速くなるだけでも、使い勝手が向上するのは間違いありません。
コンテンツの拡充や、さらなる技術革新、ユーザーインターフェースの向上など、本気で普及させたければ、まだまだやらなければならないことが山積ですが、本当に使いやすいものができたとき、人類は、初めて「紙以上の紙」を手に入れる事ができたと言えるのでしょう。(<と、格好付けて終わってみる)
(2004/04/24)