【オッサン】

1999/04/30
痴漢と笑いと憤り
 痴漢ブームである。しかも盛り上げているのが運輸省だのJRだのだからたまらない。以下は偶々4/28の新聞紙面を賑わせた東西の事件である。
 「千葉県警松戸署は27日夜、列車内で女性に痴漢行為をしたとして、松戸市松戸の運輸省港湾局係長(41)を県迷惑防止条例違反の疑いで現行犯逮捕した。調べによると、同容疑者は午後11時25分ごろ、JR常磐線下り快速列車内で、座席前に立っていた松戸市のパート女性(51)の太ももをスラックスの上からなでた疑い。」
 「JR西日本大阪支社の大阪土木技術センター所長(52)が2月、JR阪和線の電車内で女性に痴漢行為を働き、迷惑防止条例違反で大阪府警の取り調べを受け、3月10日付で懲戒解雇されていたことが28日わかった。調べによると、この所長は2月26日午後11時50分ごろ、友人と酒を飲み、1人で帰宅中の車内で、隣の席の大阪府堺市内のOL(19)の足などを触った疑い。」
 この際、41歳のオッサンがもう孫もいるであろう51歳の女性を触ったことや、定年間近の52歳のオッサンが娘より若い19歳の女性を触ったことは問題ではない(いややっぱりこれはこれで大問題なのだろうが)。本来痴漢行為とは最も遠いはずの人間達が痴漢行為を享受していたのが大問題なのである。
 80年代に生まれた新しい「笑い」として、権威が自らその権威を崩し、本来の地位と堕ちた地位とのギャップを笑う、というものがある。いわゆる「お堅い人」がバラエティ番組にこぞって出演し、たわいもないギャグで本来の姿とのギャップを見せることによって笑いを取る、といった手法が大流行した。当然こういった「笑い」は90年代には飽きられ、いかに自然に本来の姿と実際の行動とのギャップを見せるかが求められた。女性アイドルが真顔で自らの無知や奇癖を露呈するいわゆる「天然ボケ」などもこのパターンに含まれよう。
 90年代も終わろうとする今、私はこの手の「笑い」にも食傷気味である。こういった事件を見ても憤りしか覚えない。

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