シェークスピア  1564-1616 
英国の詩人,劇作家。イングランド中部のストラトフォード・オン・エーボンの生れ
。商業を営み町の有力者であった父が没落し,高等教育は受けなかった。1582年に8
歳年長のアン・ハサウェーと結婚。1585年前後にロンドンに出たらしく,1592年には
新進の劇作家兼俳優として名をあげ,のちにはグローブ座の株仲間にもなった。《ヘ
ンリー6世》三部作(1590年―1592年)を処女作とし,《リチャード3世》,喜劇《
間違いの喜劇》《じゃじゃ馬ならし》《ベローナの二紳士》《恋の骨折り損》,流血
悲劇《タイタス・アンドロニカス》が初期の作品。次いで,《ロミオとジュリエット
》《リチャード2世》や喜劇《夏の夜の夢》《ベニスの商人》,フォールスタッフの
登場する《ヘンリー4世》《から騒ぎ》《お気に召すまま》《ヘンリー5世》《十二
夜》など,円熟した作品を書く。1600年前後から,四大悲劇《ハムレット》《オセロ
ー》《リア王》《マクベス》を書く一方で,問題劇と呼ばれる《終りよければすべて
よし》《尺には尺を》《トロイラスとクレシダ》を発表した。その後,《アントニー
とクレオパトラ》《コリオレーナス》《アセンズのタイモン》などの,やや異質の悲
劇を書いてから,晩年のロマンス劇の時代に入り,《シンベリン》《冬物語》《あら
し》(いずれも1610年前後)など,争いと和解を主題にした作品を最後に,ロンドン
を去って故郷に隠退し,平和で平凡な余生を終えた。死んだ日と誕生日が同じ4月23
日とされているが,伝記資料は確証のないものが多い。作品は,戯曲が37編とされ,
詩では,初期の物語詩《ビーナスとアドニス》《ルークリース凌辱》と,154編から
なる《ソネット集》が重要。コールリジによって〈百万の魂をもつ〉と評されたシェ
ークスピアは,豊かで深い世界を創造することに成功したまれな人物であった。日本
では明治期に坪内逍遥の翻訳によって紹介され,新劇の重要なレパートリーとなった
。現在では様々な前衛的演出が試みられている。→エリザベス朝演劇/シェークスピ
ア舞台