日本海側の気候
 日本でも、新潟などの日本海側は世界でもまれに見る豪雪地帯です。これは暖かい海と寒気が関係しています。日本海というと冷たいイメージを持ちますが、大陸からの寒気と比べるとはるかに暖かいのです。冷たい空気が海の上に乗ると、お風呂の湯気のように日本海からは蒸気がたちあがります。これが雲となって谷川連峰や日本アルプスのような山脈に行く手をさえぎられて、日本海側の地域で大雪を降らせるのです。


高気圧と低気圧
 はじめに、高気圧は下降気流で、低気圧は上昇気流だということを理解しておいてください。低気圧は、上昇気流ですから上昇した空気は膨張して雲を作ります。雲の下は天気が悪いことはお分かりでしょう。高気圧はこの逆で、天気が良いのです。
 ところで、1気圧は1013hPa(ヘクトパスカル)ですが、高気圧と低気圧の定義に何hPa以上が高気圧で、それ以下が低気圧であるというものはありません。たとえば、同じ1000hPaでも高気圧のものもあれば、低気圧のものもあります。高気圧か低気圧かは、まわりより気圧が高いか低いかによって決まるのです。


気団
 気団とは大きな空気のかたまりのことで、季節の変化に大きく関係しています。日本付近には、北にシベリア気団・オホーツク気団、南に小笠原気団・揚子江気団の4つがあって、シベリア気団が日本列島に大きく張り出すと冬。小笠原気団だと夏になります。また、この2つの気団の勢力が同じくらいになり気団と気団の境目(前線)が日本列島付近で攻めぎあいをする時期が梅雨(つゆ)となり、秋に起こるものは秋雨(あきさめ)となります。


偏西風
 日本の上空には、つねに西から東へ強い西風が吹いています。つまり、天気は西から変わるということです。「夕焼けが晴れ」という理屈も、西に沈む太陽と自分の間に大きな雲がないということからきています。


西高東低
 西高東低とは天気予報でよく耳にする言葉ですが、冬型の気圧配置のことです。この気圧配置になると、新潟などの日本海側は雪。東京などの太平洋側はからっ風の吹く晴天となります。この気圧配置は安定していて、なかなか変わらないのですが、周期的に移動性の高気圧が通過します。冬山へ行くチャンスはこの時ですが、移動性高気圧の端と大陸の高気圧の間は気圧の谷となっていることが多いため、注意が必要です。


南岸低気圧
 春になり冬型の気圧配置も緩んでくると、太平洋沿岸を低気圧が北上することがあります。太平洋側で大雪が降ったりするのはこの南岸低気圧が原因で、低気圧の中心が八丈島あたりにあると東京などで大雪となります。太平洋側の山でパウダーを狙うなら、この南岸低気圧の通過後になるでしょう。


日本海低気圧
 日本海底気圧とは、名前のとおり日本海を東進する低気圧のことです。低気圧の前面では南からの暖気を吸い寄せるので気温は高めになりますが、通過後は一変、北からの寒気に変わり気温は一気に下がります。また、その後太平洋に抜け冬型の気圧配置になり、日本海側の山は終始荒れ模様となります。また寒冷前線の通過時には突風やヒョウ、落雷などに注意しましょう。


2つ玉低気圧
 低気圧の中でもコイツはかなりのくせもので、海・山では大荒れの天気になり、よく遭難事故が起こります。2つ玉低気圧は、日本列島を日本海側と太平洋側からはさむようにして2つの低気圧が北上するものです。2つの低気圧の間は、ちょうど台風の目に入ったように晴天(擬似晴天)になりますが、30分もすると、またもとの大荒れの天気になります。この30分の間に行動を再開し遭難した例もありますので注意しましょう。もっとも、2つ玉低気圧が来ると分かっていたら山に入らないようにするのは当然ですが・・・。


すじ状の雲
 冬季の気象衛星ひまわりの映像を見ると、日本海上空の雲がすじ状になっていることがわかるでしょう。これは、寒気をともなっている証拠でこの雲の端が、シベリア大陸に近いほど寒気の勢力が強いです。


春一番とフェーン現象
 立春を過ぎてから、はじめて吹く南よりの強風を春一番といいます。これは、ニュースなんかでもよく聞きますね。長い冬が終息していくことを意味しますが、春に近づいたと喜んでばかりはいられません。南よりの風は山を乗り越え、その過程で水分を落とします。湿気のなくなった空気は、温まりやすいため、山を乗り越える前よりも高温となって谷に吹き降ろします。これがフェーン現象で、急激な気温の上昇による雪崩に注意が必要です。


寒気
 冬の天気を知るうえで、低気圧の強さのほかに寒気の強さはとても重要になってきます。たとえ同じ気圧の低気圧があったとしても寒気が入っていると、天候は寒気の入っていない時よりもはるかに荒天となります。上空の寒気を知る方法として、高層天気図があります。これは、一般に見る天気図が地上(0m)を基準にしているのに対し高層天気図は名前のとうり、上空の天気を示しています。雪山の気象を知るうえでは、700hPaのものが標高にすると約3000m、850hPaのものが約1500mなのでこれを参考にします。気温は点線で書かれていますから、大陸から来る寒気に十分注意しておきましょう。この高層天気図は、気象関係の会社などからインターネットで最新の情報を手に入れることができますので利用しない手は無いでしょう。


気象予報
 フィールドで気象予報をするためには天気図を書くことと、観天望気の2種類の方法があります。長期的な気象の変化は天気図から判断し、また、局地的な変化は観天望気から判断します。観天望気とは雲や、風の変化から3時間後くらいの気象の変化を予測したりするもので、わかりやすく言うと、富士山の笠雲なんかがそれにあたります。


天気図を書く
気象通報はラジオのNHK第2で9:10、16:00、22:00の、1日3回放送されます。天気図用紙は登山用品店などで売られている市販のものを使用します。

放送はまず、気象概況を言いますので、だいたいの天気をイメージします。
・各地の天気を南西諸島から、順に北へ風向、風力、天気、気温、気圧を言うので、天気図用紙に記録していきます。
・放送に従って、高気圧、低気圧、前線等を書きこみます。
・基準となる等圧線をプロットしていきます。

以上で放送は終了し、あとは、基準となる等圧線と、各地の気象データをもとに等圧線を書きこめば、できあがりです。
*上空の気温、風力は富士山のデータを参考にします。地上との気温差が大きいようであれば積乱雲の発達による強雨や雷に注意しましょう。



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