登山計画書
 山に入る時には、夏山であろうと冬山であろうと登山計画書を提出するのがあたりまえで、万一アクシデントが起きた時、計画書の有無が捜索の迅速さを左右します。計画書に特に決まった形はありませんので、パーティーの構成、緊急連絡先、行動計画、装備、予備日の有無などをレポート用紙等に書けばいいでしょう。登山口には登山計画書届を提出するポストがありますから、行動を開始する前に入れます。登山計画書を書くことで、行動予定を再確認し非日常の世界に行くのだという心構えもできますから、習慣づけるようにしましょう。


ウェア
 バックカントリーでは、ウェアの性能が時には命にかかわることもあります。高いボードを買う前に、良いウェアを買うほうが大事だと思います。そのなかでも、アンダーウェア(下着、タイツ)は最重要項目です。最近ではダクロンQDなどの化学繊維でできた、乾きの速いアンダーウェアを使用するのは当然のことで間違っても、綿の下着だけは着用しないようにしましょう。
 ウェアの基本はレイヤー(重ね着)です。まず、アンダー。そしてフリースなどのセカンドレイヤー。最後にアウターです。アウターはゴアテックスの物を選びましょう。でも、ジャケットだけで5万も6万もするような高価なものでなくても良いと思います。私の場合、上下で3万円くらいのレインウェア(いわゆるカッパ)を使用してますがなんの問題もありません。(ただ、カッパはエッジで切れやすいのと、滑落した時によく滑りますが・・・)何回も言うように、お金をかけるならアンダーウェアを。


グローブ
 バックカントリーで使用するグローブは、ミット型よりも5本指にわかれている通常のものの方が良いと思います。ミット型は寒い時に、グローブの中で手を丸めて温めることができるのですが行動中グローブをしたままでのピッケルの使用。アイゼンの装着。テントの設営などを考えるとやはり、ミット型は不便でしょう。インナーが取り外せるものの方が、ハイクアップ時の体温調節がしやすいですしぬれてしまった時の乾きも早いです。


アイゼン
 はじめに。4本爪などの軽アイゼンは、ほとんど役に立たないことを言っておきましょう。軽アイゼンは、もともと夏山の雪渓歩きの補助用です。これを冬山で、しかも初心者が使用することはとても危険です。まずアイゼンの基本は、雪面に対して靴底をフラットに置くことですが傾斜がきつくなりかかとが浮いてくると、軽アイゼンの爪は雪面に十分に刺さらずスリップしやすい。初心者が最もアイゼンを必要とする急斜面で効果が無いのですから、とっても危険です。
 さて、本題に入ります。アイゼンの爪は12本くらいまでありますが、最低でも8本以上が良いでしょう。固定方式は、ソフトブーツだと2本締め(固定バンド)になると思います。(グリベルというメーカーからG10ワイドという、つま先の幅が広くボードのブーツに対応したものが出ています

■アイゼン歩行
・基本はアイゼンのすべての爪が雪面に刺さるように、フラットに足を置きます。
・斜面がきつくなってくると、キックステップで前爪を蹴り込んで登るようになります。

・アイゼンで自分のパンツの裾を引っ掛けないように、足はやや外からまわすよう心がけましょう。
・ダンゴになった雪は、ピッケルでこまめに落とすようにします。


ピッケル
 ピッケルとは登山用の斧&杖のようなもので、英語ではアックスと呼ばれます。ピッケル=登山家の道具だと思うかもしれませんが、冬山に入る以上、必要なアイテムです。ストックは対応できない状況が多すぎるので、とくに春山では補助用と考える以外あまりおすすめできません。実際ストックではアイスバーン化した尾根などでは使い物になりませんしステップ(階段)を切ったり、滑落停止や耐風姿勢をとったりすることができません。

■ピッケルの長さ
 長さは一般に、ピッケルを握ったときに、くるぶしのあたりといわれます。下りで積極的に突くのであれば、もう少し長くても良いですがBCスノーボードでは、下りは滑りと考えると、やっぱりくるぶしでいいかと思います。縦走用に軽量タイプのものが出ていますので、BCスノーボードでの使用はこれでいいと思います。
アイゼン・ピッケルはしっかりとした指導のもと、使い方をマスターしたうえで使用しましょう。 (使い方を間違えると、かえって危険な場合があります)


雪山生活
 雪山ではキャンプ指定地以外でも、テントを張って良いことになっています。しかし、環境や植生を壊さないよう十分に注意し、テント撤収後は、そこにいた形跡が残らないようにしておきましょう。


テント設営
 設営時に、テントの入り口は雪が入り込まないよう風下に向けます。(真風下だと入り口付近に雪が吹きだまるので、ややずらした方がいいです)通常のぺグでは、固定できないため「竹ぺグ」といって竹を割ったものを十字にしてそこに張綱を結び雪中に埋めます。上から水をかけると完璧でしょう。テントの入り口は掘り下げておきます。そうすることによって、出入りがしやすくなりますし雪が積もったときも入り口だけは、埋まりにくくなります。雪山では、靴をはいたままテントの中に入ることがありますから入口にタワシがあると靴の雪を落とすのに便利でしょう。


テントシューズ
 雪山ではトイレなどで外に出ために、靴のヒモをいちいち結び直すのは非常に面倒です。そんな時、テントシューズがあります。靴下型の寝袋のようなもので、本来は足の保温用ですが雪上であればそのまま外に出ても問題ありません。この、「あれば便利」程度のグッズを購入する・しないは、あなた次第ですが・・・。


 雪山での水の確保は容易です。そうです。そこら中にある雪を溶かせば良いのですから。雪をコッヘルに直接入れて溶かすよりも水の中に雪を入れていく方が効率が良いです。コッヘルいっぱいに雪をつめても、水はコッヘルの5分の1程度までにしかならず意外に手間がかかります。


山小屋
 雪山で山小屋を利用できるのは、八ヶ岳などの通年営業をしている小屋を除いて、11月の下旬と春山くらいでしょう。厳冬期は閉鎖してしまう山小屋がほとんどです。しかし、その期間だけでも山小屋を利用する価値はあると思います。山小屋を利用することによって、テント、シュラフ、炊事用具、食料などの荷物を大幅に減らすことができ、体にかかる負担を最小限におさえることができます。通常、山小屋の宿泊には予約は必要ありません。予約をしたからと無理をしてでも、その山小屋に行くのは事故を招くことになります。それに天気の変わりやすい「山」では、行動そのものが「予定」であって、絶対ではないからです。そんなわけで、基本的に予約はいりません。ただし、個室を希望する場合や11月の連休やゴールデンウィークなどの多忙期は予約をした方が親切かもしれません。で、そんな山小屋ですが1泊2食付で8000円程度です。しかし、山小屋にホテルのようなサービスを期待しては行けません。部屋は、10人部屋くらいの相部屋か、カイコ棚式の2段ベッドが多いです。また、温泉のあるところ以外、当然お風呂はありませんよ。

■他にちょっと注意事。

・山小屋に入る時にはアイゼンをはずしてからにしましょう。
・明朝、早出の人もいますから夜は静かにしましょう。
・みんなの山小屋ですからルールとモラルを守りましょう。


ヘッドランプ
 ヘッドランプは山での行動中、必ず持つようにしましょう。あかりのない山では、日の入りと同時に暗黒が訪れます。もし、アクシデントなどで日暮れまでに目的地につけなかったら?あかり無しでは、前にも後ろにも進めません。たとえ日帰りの予定でも、必ずザックの片隅にしのばせておくようにしましょう。


日焼け止め

 雪山では、雪面からの照り返しが強くちょっと油断すると、強烈な日焼けをしてしまいます。とくに春山は紫外線が強いので必ず日焼け止めを使用しましょう。また「雪目」になると目があけられず行動不能になってしまうので、サングラスも絶対必要です。(ゴーグルだとハイクアップのとき、すぐにくもってしまいますよ)


ラッセル
 雪をかき分けて歩くラッセルは、ホントに疲れます。30分で行ける距離が、3時間かかることもあるくらいです。ひざ下程度のラッセルならそれほど苦労しませんが、それ以上になると、泳ぐようにして進むことになります。ラッセルで一番疲れる先頭は、疲れたらトレースを左右に少しはずれ、2番手を行く人にトップを交代し、自分は隊列の最後尾につくようにしましょう。また、他のパーティーでも協力して先頭を交代するのがルールだと思います。前を行くラッセル中のパーティーを、絶対に追い越さないなんてセコイまねやめましょう。





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