この寒さも、少しずつ緩んで行くだろうなと思いながら、道を、ルンルン気分で歩いていた。突然、オードリーが、前に飛び出した。 どうやら、後ろから何かが迫って来たらしい。 何も音は聞こえない。 自転車でもないし、石ころが転がってきた気配もない。 可笑しいなと、空を探ってみると、何かがいる。 思い切って手を大きく動かしてみたら、どうやら、犬のようである。 吠えもせずに、こっそりと、オードリーの後ろに近づいて来ていた。 小さな犬かなと思い、とにかく飼い主さんが近くにいるのだろうと、「すみません、このワンちゃん、捕まえていて下さい」と言ったが、なにも返事がない。 オードリーは、以前、犬に吠えられて、飛びかかられた経験がある。 それ以来、犬を怖がり、やっと、それが治りかけてきていた。 ああ、又飛びかかられたら、元の木阿弥である。 その犬は、全然吠えない。 ウウッとも言わない。だから、少しは冷静でいられた。 しかし何処にいるのかが、把握できない。 オードリーは、私の周りをあちこち逃げてる様子。 リードを持っているので、オードリーの動きは、伝わってくる。 触ってみると、振るえてはいない。 それならと、無視して、歩こうとしたら、又、前に飛び出そうとする。 オードリーの、お尻にまとわりついて、離れない。 仕方がないので、シッシッと、追い払ってみるが、全然効き目はない。 捕まえてみようとするのだが、うまくすり抜けて掴めない。 通りすがりの女性に、応援を求めた。 その女性に聞いて見た。「小さな犬ですか?」 「いやいや、同じぐらいか、ちょっと大きいぐらいの犬ですよ」 「あの、捕まえて下さい」 「捕まえようとすると、噛もうとするので、ちょっと怖くて捕まえられない」と言われた。 又、無視して歩いてみたが、やはり同じである。 そこへ、もう一人の通りすがりの女性がやって来た。 女性3人で、シッシッと追い払うのだが、全然、オードリーから離れようとしない。 しばらくして、小学2年生ぐらいの、女の子が「盲導犬?」と聞きながら近づいて来た。 盲導犬だよと、答えると、「今、訓練中なの?」 「お仕事中なんだけどね。このワンちゃんがまとわりつくので、歩けないの」 この犬、どこの犬か知らないかと、訪ねてみたが、知らないと言う。 又女性がやって来て、確か、あそこの犬じゃないかと思うと言う。 この間にも、その犬は、オードリーにプロポーズしている様である。 春だものね。恋いの季節かなあ。 それはいいのだが、オードリーは盲導犬、恋されちゃ困るんだよね。 何とか、その犬を、オードリーから引き離そうとするのだが、大きい犬なので、やたらな事は、出来ない。怒って噛みつかれでもしたら、大変な事になる。 首輪をしているので、家を飛び出して、放浪の旅でもしているのだろうか。 ここは、小学生や幼稚園の園児が通る道である。 もしもの事があったらどうするのだろうと思いつつ、もう、こうなったらと、「すみません、110番して下さい」と頼んでしまった。 こんな事で、110番してもいいのだろうかと、心配になって来た。 300メートル位、離れた所に、派出所がある。 対応してくれなければ、その旨の返事があるだろう。 しかし、助けて欲しい。 「直ぐ、来るって」 ああ、良かった! こうなったら、オードリーに寄せ付けておかなくては。 お巡りさんに捕まえてもらえない。 曲がり角から、お巡りさんの姿が現れたようである。 すると、サッと逃げてしまったではありませんか。 女性3人で、どんなにやっても、追い払えなかったのに・・・ 、向こうからやって来るお巡りさんを見ただけで、逃げてしまった。 犬にも、危険?がわかるのだろうか。 何処の犬か知らないか、怪我はなかったか、何処にすんでいるかを訪ねられ、そのまま行って下さいと、とても優しいお巡りさんである。 やっと、安心して、オードリーと私は歩く事が、出来たのであった。 通りすがりの皆様、助けて頂いて、ありがとうございました。 あのワンちゃん、逃亡しない様に、して下さったかなあ? 2003年2月9日
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