24。恋の季節。



この寒さも、少しずつ緩んで行くだろうなと思いながら、道を、ルンルン気分で歩いていた。
突然、オードリーが、前に飛び出した。
どうやら、後ろから何かが迫って来たらしい。
何も音は聞こえない。
自転車でもないし、石ころが転がってきた気配もない。
可笑しいなと、空を探ってみると、何かがいる。
思い切って手を大きく動かしてみたら、どうやら、犬のようである。
吠えもせずに、こっそりと、オードリーの後ろに近づいて来ていた。
小さな犬かなと思い、とにかく飼い主さんが近くにいるのだろうと、「すみません、このワンちゃん、捕まえていて下さい」と言ったが、なにも返事がない。
オードリーは、以前、犬に吠えられて、飛びかかられた経験がある。
それ以来、犬を怖がり、やっと、それが治りかけてきていた。

ああ、又飛びかかられたら、元の木阿弥である。
その犬は、全然吠えない。
ウウッとも言わない。だから、少しは冷静でいられた。
しかし何処にいるのかが、把握できない。
オードリーは、私の周りをあちこち逃げてる様子。
リードを持っているので、オードリーの動きは、伝わってくる。
触ってみると、振るえてはいない。
それならと、無視して、歩こうとしたら、又、前に飛び出そうとする。
オードリーの、お尻にまとわりついて、離れない。
仕方がないので、シッシッと、追い払ってみるが、全然効き目はない。
捕まえてみようとするのだが、うまくすり抜けて掴めない。

通りすがりの女性に、応援を求めた。
その女性に聞いて見た。「小さな犬ですか?」
「いやいや、同じぐらいか、ちょっと大きいぐらいの犬ですよ」
「あの、捕まえて下さい」
「捕まえようとすると、噛もうとするので、ちょっと怖くて捕まえられない」と言われた。
又、無視して歩いてみたが、やはり同じである。

そこへ、もう一人の通りすがりの女性がやって来た。
女性3人で、シッシッと追い払うのだが、全然、オードリーから離れようとしない。

しばらくして、小学2年生ぐらいの、女の子が「盲導犬?」と聞きながら近づいて来た。
盲導犬だよと、答えると、「今、訓練中なの?」
「お仕事中なんだけどね。このワンちゃんがまとわりつくので、歩けないの」
この犬、どこの犬か知らないかと、訪ねてみたが、知らないと言う。
又女性がやって来て、確か、あそこの犬じゃないかと思うと言う。
この間にも、その犬は、オードリーにプロポーズしている様である。

春だものね。恋いの季節かなあ。
それはいいのだが、オードリーは盲導犬、恋されちゃ困るんだよね。

何とか、その犬を、オードリーから引き離そうとするのだが、大きい犬なので、やたらな事は、出来ない。怒って噛みつかれでもしたら、大変な事になる。

首輪をしているので、家を飛び出して、放浪の旅でもしているのだろうか。
ここは、小学生や幼稚園の園児が通る道である。
もしもの事があったらどうするのだろうと思いつつ、もう、こうなったらと、「すみません、110番して下さい」と頼んでしまった。

こんな事で、110番してもいいのだろうかと、心配になって来た。
300メートル位、離れた所に、派出所がある。
対応してくれなければ、その旨の返事があるだろう。
しかし、助けて欲しい。
「直ぐ、来るって」 ああ、良かった!
こうなったら、オードリーに寄せ付けておかなくては。
お巡りさんに捕まえてもらえない。

曲がり角から、お巡りさんの姿が現れたようである。
すると、サッと逃げてしまったではありませんか。
女性3人で、どんなにやっても、追い払えなかったのに・・・
、向こうからやって来るお巡りさんを見ただけで、逃げてしまった。
犬にも、危険?がわかるのだろうか。

何処の犬か知らないか、怪我はなかったか、何処にすんでいるかを訪ねられ、そのまま行って下さいと、とても優しいお巡りさんである。
やっと、安心して、オードリーと私は歩く事が、出来たのであった。

通りすがりの皆様、助けて頂いて、ありがとうございました。
あのワンちゃん、逃亡しない様に、して下さったかなあ?
2003年2月9日

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