16。高速神戸で待ってるね。



「神戸で、天ぷらの美味しい店見つけたから、今度一緒に行かない?」と、Nさんから電話である。直ぐに、話は決まった。
Nさんは、東の方から、私は西から神戸へ向かう。
ちょうど神戸が中間地点なので、高速神戸で待ち合わせである。
二人と、2頭で、ワクワクデートと、書きたいところであるが、Nさんもアレフちゃんも、女性なのである。
高速神戸の改札口を出た所で待ち合わせである。そこは、結構広い。
お互いに盲導犬を連れているので、オードリーが見つけてくれるだろうとか、アレフちゃんが見つけてくれるだろうとか、、心配はしていない。
案の定、アレフちゃんを見つけたオードリーは、ちぎれんばかりに尻尾を振って、グイグイ私を引っ張って行った。
アレフちゃんは、オードリーの叔母様に当たる。
自分の母親と思うのだろうか、、他の盲導犬と会うときよりも、一段と喜び様が違う。
まずは、喫茶店へ。ここは、よく行く喫茶店なので分かりやすい。
左へ行って「ドアを探しなさい」と言えば、ドアまで連れて行ってくれる。
ウェイトレスさんが、席を教えてくれるので、とても助かる。
オードリーとアレフちゃんは、おとなしくテーブルの下にダウンしている。
とても仲が良い。どちらかといえば、アレフちゃんが、オードリーをたしなめているみたいな、感じでもある。
久しぶりに会ったNさんと二人で、話に、夢中になってしまう。
店が込んできた。そろそろ天ぷら食べに行こうと、喫茶店を出た。
そこから左へ、ある程度歩いた、右手にあるらしい。天ぷらの匂いがするだろうと、歩いていったのだが、そこの店がなかなか、分からない。
行き津戻りつ、彷徨いながらウロウロしていた。
「ちょっと、分からないね、誰かに尋ねようか」と、援助依頼である。
店まで5メートルも離れてはいなかった。「なんだ、ちゃんと来てたんじゃない」
「惜しかったね」と、楽しみの天ぷら屋さんである。
以前、Nさんが、お友達と入ったお店なので、盲導犬も受け入れてくれる事が、分かっている。
店に入ると、お店の人が、快くテーブルまで、案内してくれた。
オードリーとアレフちゃんは、又テーブルの下に、仲良くダウンである。
又、何やら2頭で、鼻をくっ付けて話でもしている様で、オードリーの尻尾が揺れている。
その尻尾が、テーブルの足に当たって、音を出しているので、アレフちゃんと、ちょっと離してダウンさせた。
今度は、2頭とも、静かに寝ている様である。
「おとなしいね」とお店の人が、ニコニコしながら、メニューを読んでくれる、天ぷら定食を注文した。
からっとして、とても美味しい。又、Nさんと話が弾む。
「お腹、いっぱいになったね、ちょっと歩こうか」と、店を出た。
地下街を歩く、オードリーも尻尾ビュンピュンで歩く。
ややオードリーは歩くのが早い。Nさんと離れすぎてしまった。
「Nさ〜ん」と読んでみるが、返事が聞こえてこない。
「オードリー、アレフちゃんとこ、行きなさい」と言ってみた。
オードリーは、グイグイと、Nさんの所へ連れていったのである。
これはすご〜い! これで、Nさんと離れても大丈夫のようで、とても嬉しい。
「ちょっと、トイレに行きたくなったね」
「確か、噴水の音がする所から入った所にあったよね」と、二人は、そちらへ行く。
確かこの辺りのはずだけれど。それらしき所に来た。
とにかく入ってみた。
どうやら男性用トイレの気配。
何故分かるかというと、なんとなく臭いが違うのである。
早く出なくちゃ、男性が入ってくる前に・・・
出た所で、「こちらが女性用ですよ」と声をかけられた。
ああ、助かった。
私とNさんがトイレをしている間、その女性は、オードリーとアレフちゃんを見ていてくれた。
こんな優しい人に巡り会うと、とても幸せな気持ちになる。
オードリーとアレフちゃんにそれぞれ持ってきた器に水を汲んで飲ませた。2頭とも美味しそうに飲んでいる。
「この子達の、トイレさせなきゃいけないね」
「ここでさせてみようか」
と、袋を付けてさせてみたが、2頭ともしない。どうやらせまくて、人が来るので、出来ないのであろう。
そこで地上に出て、いつも安心してできる場所まで行って、トイレをすませた。
又地下へ下りて、今度は、ベンチのある広場で、又おしゃべり。
よくもこんなに話す事があるものだと、我ながら感心してしまう。
地下街の広場である。何人もの人が通り過ぎて行く。
静かにダウンしている2頭の盲導犬と、楽しくおしゃべりしている二人は、通り行く人には、どんな風に、映るのだろうか。
「あれ、もう、こんな時間? 帰らなくちゃ、楽しかったね」
高速神戸の駅で切符を買う。
ところが、この券売機は点字がついていないので、どこを押せばいいのか分からない。援助依頼して、お互いの駅名を言って、押してもらった。
改札口を入って、Nさんは左に、私は右に行く、
ここでさよならである。
こうして、楽しい1日は過ぎて行った。
誰か見える人と、一度だけ行った事のある所で、頭にある程度の地図ができれば、こうして、ユーザー二人で、目的地に行く事ができるのである。

2002年7月7日

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