15。レインコート



初めて、オードリーにレインコートを着せたのは、共同訓練の出発式の前日であった。
どこがどうなっているのか、さっぱりわからなかった。
訓練士さんに教えてもらいながら、あちこち触って、やっと納得する。
まず、頭からかぶるように着せ、前足をはかせてから、後ろ足をはかせて最後に背中のファスナーを止める。
私は、レインコートばかり気にしていたので、その時のオードリーの状態を観察する余裕は全くなかった。
共同訓練中、雨だったのは、たったの1日だけであった。
その日は、室内での訓練だったので、レインコートを着せての歩行訓練をするチャンスは1度もなかったのである。

家に帰ってから、雨の日がやって来た。
レインコートを取り出して、成れない手つきで着せたら、オードリーも不安なのか、ブルブル震えて動かなかった。
全体を触って、「フーン、こうなってるのか、うまくできてるなあ」と感心しながら、はて、ダウンできるかな?とダウンさせてみた。
ところが、オードリーは震え続けていて、なかなかダウンしないのである。

私 「大丈夫、大丈夫。オードリーは可愛いねぇ」
オードリー 「こわいよ〜!頭と尻尾がないんだもの。」
私 「しかし、良くできてるねぇ」
オードリー 「えみは変な人だなあ。私を怖がらせて感心してるなんて」
私 「ダウンしなさい」
オードリー 「そんな、怖くてできないよ〜、ブルブルブル」
私 「オードリーったら、ちゃんとダウンしなさ〜い」
オードリー 「はい、わかってます、ブルブルブル、そろり、そろり」
私 「おお!!グッドグッド」
オードリー 「早く、この変な物、脱がせてよ〜、怖いよ〜。ブルブルブル」
私 「良い子だね。大丈夫、レインコートなんだから。さあ、歩いてみよう」
オードリー 「とんでもない。歩くなんて、出来ないよ〜。ブルブルブル」
もう、怖がって振るえていたので、可哀想になり、脱がしてしまった。
オードリーは、やれやれと言った様子でホッとしていた。
これじゃ、雨の日は、外出できないなあ。
そこで、ボール遊びをして、気分転換し、1時間経ってから再度挑戦してみた。
やはり、同じく怖がってブルブル振るえて、一歩も歩こうとしない。
そこで、レインコートをポケットに入れて、出かける事にした。
オードリーは尻尾ビュンビュンして、ハーネスに飛び込んで来た。
外に出て、階段を降りて、いよいよ雨の中に出る時に、着せた。
オードリーは、振るえている。
大丈夫と、宥めながら、ハーネスを付けたら、震えが小さくなった。
これは、行けるかな。さあ、行こう。
恐る恐る歩き出した。
「おお!!すご〜い!!と、思いっきり誉める。
歩きが早くなった。又、誉める。
オードリーは、いつもの調子で歩き出した。
「グッド、グッド!!良い子だねぇ」
やれやれ、これで、大丈夫だろう。
オードリーは、歩くのが嬉しくて、レインコートを付けている事なんて、すっかり忘れているようである。
こうして、次からは、着せても怖がらなくなった。
オードリーは、自由にさせている家の中と、ハーネスを付けた時とでは、こんなにも違うのである。
オードリーも、レインコートは、赤色と黄色の2枚、ダスターコートは、3枚持っている。
盲導犬のレインコートや、ダスターコートを、材料費だけで、作ってくださるボランティアさん方がいらっしゃるのである。
全てオーダーメイドで、作っていただいた。
オードリーはおしゃれ?それとも・・・
本当は、自然体が一番なのだがそうは行かない場合もあるので、時と場合によって、コートを着せているのである。

2002年6月27日

14。サラちゃんとYさんへ

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