我が家にやって来たオードリー




1。旅立ち

出発式を終え、オードリーを連れて我が家に帰る時が来た。
訓練士さんが、車で家まで送ってくださる。
車には、オードリーのハウス、食器、ドッグフード、ブラシ、その他、必要な物が積みこまれている。
私の足元に、静かにダウンしているオードリー、4週間の訓練を終え、これから盲導犬ユーザーとしての生活が始まる。
センターの職員の方々が、「頑張って、お元気で」と玄関まで見送って下さった。私達の為に一生懸命働いていらっしゃるのを目の当たりにした私は、感謝の気持ちでいっぱいであった。
車が動き出し、センターを後にした瞬間、「私はユーザーになれたのだ、これで本当に、訓練はおわったのだ。2年8ヶ月前に夢見ていた事がついにかなったというこの湧き上がってくる喜びは、とても、言葉では言い表す事はできない。
家とセンターの中間辺りを過ぎ、家の方が近くなって来た頃、何故かセンターが恋しくなって来た。早くユーザーになって、家に帰りたいと思っていたはずなのに・・・不思議な感情であった。
家では、小6の息子と、主人の母が、私達の帰りを待っていた。
オードリーにとっては、初めての場所であり、初対面である。
オードリーは、おそるおそる、家に入った。私の後を付いてくる。リビングのユカの臭いを嗅ぎ出した。
「心ゆくまで臭いを嗅がせて下さい」と、訓練士さんが言った。
そして、オードリーのハウスを組み立てて、リビングの部屋の片隅に置いた。
ハウスに入れてみる。直ぐに入った。
そして、早速、ベランダでトイレである。
やってくれるかなと心配であったが、ちゃんとしてくれた。
これでまずは一安心。訓練士さんが、「それでは、今日はこれで、明日、又来ます」と言って帰られた。
オードリーは2人の初対面者を警戒しているようである。
私の後ばかり付いてくる。私がトイレに入っても、ドアの所で待っている。
やはり、不安なのであろうか。
息子と母には、オードリーには、触らないようにと頼んでおいた。
オードリーの夕食をすませ、トイレをすませた頃、主人が帰って来た。
又、オードリーは警戒している様であった。
そこで、ハウスに入れる事にした。
ハウスにいると安心しているようでもあった。
主人が「盲導犬って、哀愁を感じさせるような、優しいと言うか、何とも言えない顔をしてるね」と言った。
こうして、オードリーにとっては、慣れない我が家での一日が始まったのである。


2。我が家での2日目
午前に訓練士さんがやって来た。オードリーは嬉しそうである。
トイレをすませ、家の周囲を歩く。基本どおりには行かない形の場所の命令のやり方や、歩行の方法を教えてもらった。
そして、午後からは、もう一人、盲導犬歩行指導員の方も関西から来られ、家族の者に、盲導犬に対する家族の接し方を話して下さった。
小6の息子もちゃんと聞いていた。
それが終わってから、私が聞きたかった三宮駅を見てもらう事にした。
そして、家に帰る。4週間、私を指導して下さった訓練士さんと、いよいよ、お別れである。
いざという時は、いつもこの訓練士さんがいてくれた。
これからは、全く一人でやらなくてはならない。
何かあった時、直ぐには飛んでは来てはくれない。
とても心細くなってしまった。
「じゃ、これで、頑張って」と握手され、「オードリー、頑張ってよ」とオードリーにも言って帰られて行った。
訓練士さんが出て行かれた時、オードリーにも分かれが分かったのだろうか、昨日は泣かなかったのに、その日はしばらくキュンキュン泣いていた。
私も泣きたい心境であった。
よし、頑張ろう、「オードリーも頑張ろうね」と、撫でながら話かけたら、落ち着いた様である。
家族の者にも少し慣れてきたようで、母が買い物から帰ってきたら尻尾を少しだけ振っていた。
こうして、オードリーは、我が家の家族になっていったのである。
二日後、北海道から来てくれた、主人の母が帰って行った。
そして、主人と息子と私、オードリーの3人と1頭の家族の生活が始まったのである。


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