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2007年7月 |
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2007年7月16日(月曜) 糸魚川編 ローカル線で行く温泉旅・北陸編の第2弾は、 JR北陸本線・糸魚川駅の駅弁を紹介する。 糸魚川の駅弁を“北陸編”の一部として紹介することに、 いささか、良心の呵責が働かないこともない。 というのも、糸魚川はれっきとした「新潟県」の街。 新潟を“北陸”としてしまうのは、ちょっと乱暴な気がする。 でも、糸魚川は、JRの区分では「西日本」でありながら、 NTTは「東日本」、電気は「東北電力」。 加えて、日本を東西に分ける“静岡・糸魚川構造線”の北端と、 全国のどの地域に属しているのか、全くよく判らない所なのだ。 つまり、日本一“カオスな街”と言ってもいいほどの場所である。 ![]() 東京から糸魚川へは、上越新幹線の越後湯沢で乗換え、 特急「はくたか」号で2時間40分あまり。 「はくたか」は、新幹線「とき」に接続して、 日中の一部時間帯を除き、ほぼ1時間間隔で運行されているが、 一部の「はくたか」は、糸魚川を通過するので、停車駅には要注意である。 ![]() 糸魚川で駅弁を販売するのは、駅前に調製所がある「たかせ」。 改札を抜け、駅の外へ出ると、右手前方に駅弁の看板が見える。 ここでは、毎朝6時から午後4時半まで販売されており、 常にできたての駅弁を味わえる。 ただ、もし4時半を過ぎても焦ることはない。 左隣で「たかせ」が経営する、喫茶「あかね」が夜11時まで開いている。 メニューにも糸魚川駅弁の数々が載っており、 あまりに遅い時間でなければ、駅弁を食べられるようだ。 この「あかね」、興味深いのは無線LANの電波が飛んでいて、 まさに“ユビキタス社会”を体現する喫茶店でありながら、 座席が全て、インベーダーゲームのようなゲーム機という、 昭和50年代半ばの雰囲気をそのまま残す貴重な喫茶店である。 日中は、地元の人の社交場的な存在になっている、実にのどかな店。 糸魚川を訪れたら、ぜひ「あかね」に立ち寄って、 インベーダーゲームの上で、無線LANをつなぐべし。 もちろんこの他に、駅待合室のコンビニ「チャオ」でも駅弁の販売がある。 (営業時間:6:50〜20:00、駅弁は随時補給) ![]() さて、糸魚川を代表する駅弁といえば「えび釜めし」(900円)になろう。 駅から国道8号線を目指して5分も歩けば、 そこはもう、海の幸あふれる日本海なのだ。 プラスチック製の釜の中央に、クルッと弧を描いたエビが2尾。 だしの効いたご飯とあわせて、殻ごとバリバリといきたい。 何せ、作ってるのは駅前だから、出来立ての温もりが心に沁みる。 ![]() 実は糸魚川の駅弁は、釜めしだらけである。 えび釜めしのほか、松茸釜めし、ほたて釜めしもある。 これらの駅弁のいいトコ取りをしたのが「夫婦釜めし」(1200円)である。 えび釜めしと松茸釜めしのハーフサイズが、1個ずつ入った駅弁。 どの釜めしにしようか迷ったら、この駅弁にしておけば間違いはない。 ちなみに、この駅弁を買おうとしたら、お店の方に、 「お箸は2膳つけますか?」と訊ねられた。 実に温かい心遣い。 ただ量は、女性2人の旅行で、一緒に食べるのがちょうどいいくらい。 男なら1人で、2個とも一気に食べられるだろう。 男女2人なら、男性は違う駅弁を買って女性が余った分を片付けるくらい!? ![]() もう一つ、糸魚川の名物と言えば「田舎ずし」(1050円)である。 新潟には、笹だんごという名物があるが、 「田舎ずし」も熊笹にくるまれた、郷土料理感たっぷりな寿司。 越後では、稲刈りの後、祭りの時などに、この寿司が食べられてきたそうだ。 エビ、鮭、クルミなどが酢飯と一緒になって、いい香りを醸し出す。 糸魚川駅弁の中で、唯一「通信販売」を扱っていて、 自宅でも、駅弁が味わえるのは有難い。 ![]() 糸魚川駅弁は、北陸本線を走る特急「はくたか」「北越」の 車内販売でも取り扱いがある。(主に「夫婦釜めし」) 特急で移動中に、ワゴンから買い求めるのもよし。 糸魚川で途中下車して、駅前で温かい駅弁を求め、 普通列車の昔ながらのボックスタイプの座席で、 日本海の青い海を眺めながらいただくのもいい。 北陸本線は駅弁片手に、のんびり旅が出来る数少ない路線である。 ※「たかせ」…電話025−552−0014 ■旅のワンポイント〜ローカル線で行く温泉旅・北陸編A「小谷温泉」 糸魚川から、1本のローカル線が分岐している。 その名は「大糸線」。 大町と糸魚川を結ぶ線という意味で頭文字をとったわけだ。 正確には、篠ノ井線の松本まで結んでおり、 JR東日本の受持ちである、途中の南小谷(みなみおたり)までは、 新宿(千葉)から、特急「あずさ」も直通する観光路線だ。 しかし、今回取り上げるのは、南小谷より北、糸魚川までの区間。 高原列車の雰囲気が漂う南部とは、全く色合いが違った、 とても“無骨”な印象を受ける区間である。 ![]() 南小谷〜糸魚川間35.3キロは、JR西日本が受持つ非電化区間。 主役は「キハ52」と呼ばれる現在のJRでは最古参のディーゼルカーだ。 西日本エリアで活躍しているのは、もちろんここだけ。 東日本エリアでも、盛岡周辺では世代交代が進みつつあり、 残るは新潟周辺、米坂線のみとなりつつある。 ![]() このキハ52、パワフルな力が買われて、 今もなお、勾配のきつい路線にはなくてはならない存在。 老体に鞭打って、たった1両で、南小谷〜糸魚川間を、 1〜2時間おきに行ったり来たりしている。 この大糸線も、海抜がほとんどゼロに近い糸魚川から、 513メートルにある北アルプスの麓、南小谷へ一気に上っていくため、 馬力のあるディーゼルカーでないと、勝負にならない。 そこで今日も、日本の屋根に孤独な戦いを挑んでいるのだ。 ![]() 日本を東西に分ける「フォッサマグナ」。 その西端は「静岡〜糸魚川構造線」と呼ばれる。 大糸線は、まさにその「静岡〜糸魚川構造線」に沿って、 姫川沿いを遡って行く。 造山活動が盛んな地域だけに、山肌も荒々しい。 一方で、糸魚川はヒスイの里。 急流の川も、心なしか輝いて見えてくる。 ![]() 1時間ほどでJR西日本と東日本の境界駅・南小谷に到着。 ここから先、白馬・大町方面は電化区間。 昼時には、国鉄型最古参ディーゼルカーと 「あずさ」をはじめとした東日本の新しい電車とのジョイントがある。 普通、南小谷へ来る場合は、新宿から朝7時30分発の「あずさ」に 乗ってくるのが定番だが、こうして逆から乗ってみるのも新鮮な気分だ。 (ちなみに、新宿発7:30の「あずさ3号」は千葉始発。 千葉〜南小谷と乗り通すと、現在のダイヤでは実に5時間3分。 最近、少なくなった在来線特急電車による“長旅”を味わえる) ![]() さっそく、今宵の宿・小谷温泉へ向かうことにするが、 小谷村営バスというから、マイクロバスでも来るのかと思いきや、 駅前に停車していた大きな松本電鉄バスが“村営バス”だった。 「村営」ではあるが、運行は民間委託されているようだ。 ただ、日曜日の昼間というのに、乗客は私と中年女性の2人だけ。 観光路線というよりも、生活路線に近いようである。 (実際、翌月曜日午前の便は、地元の人の乗車がかなりあった) ![]() 760円を降りる時に運賃箱に支払って、 終点の1つ手前「小谷温泉・山田旅館前」で下車。 そう、今回行ってみたかったのは、この「山田旅館」という宿だ。 小谷温泉は、南小谷から1つ糸魚川寄りの「中土」の駅から、 川沿いに12キロさかのぼった、標高850メートルにある「秘湯」。 駅からは、350メートルほど高い所にある。 道理で、大きなバスも少ない乗客の割に、 思い切りエンジンを吹かしていたわけである。 ![]() 小谷温泉も「武田信玄の隠し湯」といわれた所である。 湯元に当たるのが、この山田旅館。 木造建築で古い感じのする旅館だが、壁には1枚のプレートが燦然と輝く。 実はこの山田旅館は、江戸時代末期の建築として、 「登録有形文化財」になっている文化価値の高い建物なのである。 本館前に建つ蔵は、明治初期の建築であり、 通常、一般客が泊まる所も、大正時代に建てられた古い建物。 部屋に鍵はかからないし、隣室と隔てるものは、ふすま1枚。 でも「文化財」に指定された旅館に泊まることなど、 そうないわけだから、こういう時は文句も言わず、 歴史の重みにひれ伏して、昔ながらの湯治宿を楽しみたいものである。 ![]() その木造建築には「内務省御選抜・独逸万国霊泉博覧会出泉」と、 右から書かれた木製のプレートも取り付けられていた。 実はこの小谷温泉のお湯は、明治時代にドイツで行われた温泉博覧会に、 日本を代表して、別府・登別・草津と並んで出展されたお湯なのである。 すなわち、小谷温泉は温泉の「日本代表」! サッカーで言えば、中田英寿や中村俊輔といった選手と同レベルの(?!) クオリティの高い温泉ということになる。 ![]() さあ、そのお湯だが、さすが日本代表というだけある。 旅館の裏から自然湧出したph6.8、44度のお湯は、滝湯として流れ込む。 その浴槽の周りには、お湯の成分がたっぷり。 加熱も加水もしない、湧き出したそのままのお湯に 浸かることが出来る温泉など、今となっては贅沢この上ない。 飲泉も薦められているので、味わってみると温泉ならではの金属臭。 ナトリウム炭酸水素塩泉(重曹泉)と呼ばれるお湯だが、 先日入った、温泉津の塩分を少なくしたようなお湯のような感じ。 年季の入った浴槽の端には、寝湯も用意されているが、 いつまでもゆっくり入っていたい気持ちになる。 観光目的の人にはあまり薦めないが、温泉好きと自認するなら 一度は入っておきたいお湯だ。湯治客が多いのも納得である。 ![]() ![]() 山田旅館にも、新館には小奇麗な風呂や露天があるが、 開放的な露天風呂に入るなら、旅館から5分ほど登った バスの終点「雨櫛荘」から2〜3分の「小谷温泉露天風呂」がお薦め。 村営の「雨櫛荘」による清掃管理が行き届いており、 山田旅館とは違った源泉が楽しめる。(56度のお湯) 緑の中で味わう温泉は、これぞ秘湯という感じ。 特に夏場は、視覚的にも癒されて気持ちよさそうだ。 ![]() 長野・新潟県境付近は、温泉が多いエリアではあるが、 何かとスキー場と隣接しているケースが多いもの。 その点、この小谷温泉は「温泉」に特化しており、 冬場でも賑やかなスキー客に惑わされずにお湯を楽しめるのがいい。 出来ることなら、1泊よりも2泊。 本を何冊か持ち込んで、山深い温泉宿で、スローな時間を過ごしたくなってしまった。 ![]() JR最古参のディーゼルカーで訪ねる秘湯。 糸魚川の駅構内には、レンガ造りの車庫などもありレトロムード満点だ。 ここは敢えて、糸魚川回りで南小谷へ入って、 駅弁とタイムスリップを楽しみながら、時を忘れて心行くまで 「日本代表」のお湯を楽しみたいものである。 ![]() ※「JR西日本・糸魚川地域鉄道部」…大糸線の情報はこちら 2007年7月11日(水曜) 福井編 そろそろ夏休みの計画を…という方も多いだろう。 休みの過ごし方の定番といえば、やっぱり温泉。 ただ、海に近い温泉は、どうしても混雑しやすいもの。 でも、日本海側に目を向けてみると、比較的空いていたりする。 そこで今回は、ローカル線で行く温泉旅・北陸編と銘打って、 北陸地方のローカル線と温泉&名所を紹介していきたいと思う。 1回目、まずはJR北陸本線・福井駅の駅弁から…。 ![]() 東京から北陸へ鉄道でアクセスする時、 越後湯沢経由か、米原経由か迷うところだが、 福井の場合は「米原経由」が速い。 東京を毎時36分に出る、米原停車の「ひかり」から 特急「しらさぎ」に乗り換え、およそ3時間半の旅である。 ちなみに金沢だと、越後湯沢乗り換えでおよそ4時間。 米原経由では、4時間を若干越えてしまうことになる。 ![]() 福井駅では、駅前にも店舗を構える「番匠(ばんしょう)本店」が、 駅弁を製造、販売している。 近年、将来の北陸新幹線に備えて、高架化が進められた福井駅。 駅弁売場は、改札を出て右手に「番匠本店」のほか、 北陸地区の数々の駅弁を取り揃えて、朝6時から夜7時まで営業している。 このほか、大阪・名古屋方面の特急列車が発車するホームには、 売店が設けられ、駅弁の販売が行われているほか、 どうしても「番匠本店」の駅弁を食べたい場合には、 改札正面の「プリズム福井」の入口付近にある店舗か、 西口へ出て、左手アーケードの入口に直営店があるので、 こちらへ足を運んでみるのも有効か。(営業時間7:30〜20:30) 駅の弁当が売り切れていても、こちらにはまだ在庫があることがある。 ![]() 福井の看板駅弁といえば「越前かにめし」(1100円)。 デパートの駅弁大会でも常連なので、馴染みの方も多いだろう。 福井で水揚げされるズワイガニを「越前ガニ」というが、 その中でもメスは「セイコガニ」という。 この「セイコガニ」の赤い身やみそなどを一緒に炊き込み ズワイガニの足をたっぷり乗せたのが「越前かにめし」。 オスとメスのバランスが、見事な味わいを生み出しているわけだ。 日本の「かにめし」の王道が、ここにある。 ![]() 「越前かにめし」のグレードアップバージョンに位置づけられているのが、 「越前香ばしい焼かにめし」(1250円)。 香ばしいと銘打っているだけあって、パッケージを破り、 ふたを開けた瞬間、カニのにおいが辺りに充満したら、もうノックアウト。 ただ、これを食べていると、恐らく「沈黙の時間」があるに違いない。 そう、足に喰らい付いている瞬間だ。 でも、この沈黙は「福」を呼ぶ沈黙。 カニ料理メインの飲み会で、みんな黙々とカニに向かってしまうのと同じだ。 この駅弁こそ、越前ガニを最も手軽に満喫できる瞬間かもしれない。 ![]() 魚介類だらけになってしまう北陸の駅弁の中にあって、 オアシスのような存在になりうる肉駅弁といえば、 ソースカツのおにぎり「ソースカツ棒」(840円)だろう。 以前、2004年の11月に「敦賀ヨーロッパ軒」を紹介したことがあるが、 本家の「ヨーロッパ軒」は、もちろん福井市内にある。 ところが、さらに起源を探すと、東京・早稲田にたどり着くというのだ。 元々、早稲田の学生街で生み出されたソースカツ丼だったが、 お店の主人が関東大震災で、故郷・福井へUターン。 そのまま「ソースカツ丼」が、福井名物となったようである。 ちなみに、早稲田ではその後、いわゆる「卵とじ」のカツ丼も生み出されており、 まさに早稲田は、カツ丼の“聖地”ともいえる場所なのである。 もちろん、この駅弁も学生街の庶民的な食堂のように、 誰もがペロリといけてしまう親しみやすさ、食べやすさを持っている。 ![]() 残るは、寿司駅弁だ。 その一つは、地方でよく見られる「笹ずし」。 福井の「越前笹すし」(1000円)では、サーモン、あなご、鯖、鯛が笹で包まれ、 一口サイズで食べやすいのが特徴だ。 笹・酢・魚の交じり合った香りから楽しんでいける。 1人旅で食べるのもいいが、何人かで味見をしながら食べるのもまたよし。 味比べなどが出来れば、旅の楽しさも増すのではないか。 というより、1人で食べると結構な量なのだが…。 ![]() そして、忘れちゃならないのが「鯖姿すし」(1000円)。 肉厚のサバと、薄くのった昆布。 サバ好きには、脂がのったサバはたまらない駅弁だろう。 日持ちするだけに、土産としても重宝しそうである。 駅弁大会の実演コーナーでもおなじみ、 「越前かにめし」に代表される、福井「番匠本店」の駅弁。 よほどのカニ嫌いでなければ、一度は味わうべきだろう。 ※「番匠本店」問い合わせ先…0776-57-0849 ■旅のワンポイント〜ローカル線で行く温泉旅・北陸編@「芦原温泉」 福井は何かと「裕福な県」と紹介されることが多い。 そういや、福井の男性には「社長が多い」とも聞いたことがある。 (実際、人口10万人あたりの社長輩出率が1662人で全国一!) ひょっとすると「福井」は、その名の通り「福」が多い所じゃないのか? そこで今回は、福井のローカル線「えちぜん鉄道」に揺られ、 福井の「福」を探しながら、最後は芦原温泉を目指す。 ![]() 「えちぜん鉄道」という名前は、あまり聞き慣れないかもしれない。 元々は、京福電鉄の路線だったが、慢性的な赤字に加え、 2度にわたる衝突事故を起こして、2年間にわたって運行停止。 廃止の危機を迎えることになる。 しかし、この2年という歳月が、思わぬ展開をもたらした。 運行休止の間、道路の渋滞が激しくなってしまったのだ。 そこで渋滞解消の一環として、鉄道に税金を投入することに、 住民の幅広い理解が得られるようになり、存続が決まった。 加えて「えちぜん鉄道」には、市民団体や商店街など、 住民が総額で6000万円を出資しているのも特徴である。 官民共同の形を「第三セクター」というのであれば、 住民参加型はいわば「第四セクター」。 地域住民も「株主」として積極的に経営に参加できるというのは面白い。 ![]() 「えちぜん鉄道」のキーワードを一言で表すなら「温もり」になろうか。 「えちぜん鉄道」の福井駅に行って驚いた。 待合室に入れたての温かいコーヒーが用意されている。 セルフサービスで100円、これはいいじゃないか! 「えちぜん鉄道」に移行してから行われているようで、 実際、主な有人駅には皆、コーヒーメーカーが用意されていた。 そして、各駅停車は全てワンマン運転であるのだが、 乗ってびっくり、制服を着た可愛い女性の姿を見かけることになる。 実はこれ、日中を中心に乗務している「アテンダント」と呼ばれる女性で、 無人駅から乗ってきた乗客にさっそく声をかけ、切符を販売したり、 沿線の観光案内をアナウンスしている。 何気なく乗ってきた客でも、彼女たちを見かけるだけで嬉しくなってしまいそう。 「えちぜん鉄道」、実は乗るだけで「福」を感じられる路線なのだ。 ●勝山永平寺線 えちぜん鉄道には「三国芦原線」と「勝山永平寺線」の2路線がある。 どちらも、判りやすい30分間隔で運行されているが、 まずは「勝山永平寺線」で、曹洞宗の総本山「永平寺」を目指す。 ![]() 永平寺へは「永平寺口」で下車。 京福時代は、ここから永平寺まで線路が延びていたが、 永平寺までの線路は継承されず廃止となって、バスに転換された。 ただ、バスの接続は土・休日はいいが、平日はちょっと…。 訪問する際は、事前に接続を確認しておいたほうがいい。 ![]() 禅宗には、栄西が開いた臨済宗と道元が開いた曹洞宗がある。 うち、道元が開いた曹洞宗の総本山が、福井・永平寺である。 最初は、京都に修業の道場を作ったそうだが、 1244年に、福井の今の山深い場所に開山。 今では、大小70あまりの建物が並んでいる。 永平寺というと、年末の「ゆく年くる年」の除夜の鐘くらいしか イメージがない方も多いと思うが、福井を代表する名所のひとつ。 一年を通じて、多くの参詣客を集めている。 ![]() 寺院の中には、境内は一切撮影禁止とする所もある中、 永平寺では修行僧にカメラを向けなければ、撮影は可とのこと。 昼どき、正午を迎えると、時刻を知らせる激しい鐘の音が聞こえて、 修行中のお坊さんが、質素な精進料理を、 迅速に配膳する光景なども見ることができる。 そもそも、禅宗というのは、仏教の中でも厳しいほうだと思う。 以前、興味本位で鎌倉・円覚寺(臨済宗)の日曜座禅会を体験したことがあるが、 座禅の時間は、20分+20分で、およそ40分。 この間、モジモジしないでじっとしているのは、意外に難しいのだ。 スポーツ選手などが、精神力を高めるために、座禅を行うことがあるが、 気持ちの面で、大きな修行になるのは確かだろう。 全国の禅宗の寺では、一般でも参加できる「座禅会」を開いているが、 日本を代表する古寺で、心を鍛えるのも貴重な体験。 機会があれば一度体験されて、心に「福」をもたらしたい。 ![]() 永平寺のルートからは少し外れるが、城好きなら「丸岡城」も訪れたい。 実はこの「丸岡城」、1576年建造という日本最古の天守閣を持つ城なのだ。 しかし、昔からの天守閣は、昭和23年の福井地震で倒壊。 今、建っている天守閣は、昭和30年、丁寧に再建されたものである。 それにしても、この城のポイントは「急な階段」ではないか。 天守閣最上階への階段は、ロープを使わなくちゃならないのだ。 国宝である、あの「松本城」以上にきつい。 今では国の「重要文化財」ではあるが、間違いなく“国宝級”の城だと思う。 (福井駅から京福バス「丸岡方面行き」…およそ20分間隔で運行) ●三国線 ![]() さて、福井駅へ戻って、今度は「三国芦原線」へ。 こちらも、きれいな30分間隔で、とても利用しやすい。 終点の三国港(みくにみなと)は、東尋坊の最寄り駅。 福井からは、50分弱の所要時間となる。 ![]() ![]() 終点の一つ手前、三国には古い町並みが残っている。 江戸時代から、北前船の寄港地として栄えた三国。 明治・大正時代にタイムスリップしたような古い洋館や、 江戸時代そのままの道幅が残った町並み、町家。 こういう所は、時代を超えて旅人になりきってしまいたい。 ![]() ご当地バーガー花盛りの今、ここにも「三国バーガー」が生まれた。 三国湊座という所で販売しているのだが、 福井産ビーフと国産豚肉のパテに、三国産のらっきょ、野菜に、 炊いたお米を使って作る米パン、バーベキューソースとマヨネーズで味付け。 今年で発売から1年を経過したそうだが、店員さん曰くなかなか評判とのこと。 ちなみに、三国名物ラッキョウの花というのは、 ラベンダーの花畑と見紛うばかりなんだと聞く。 今回は見られなかったが、シーズンにあわせて、 三国の“ラッキョウ畑”も見てみたいものだ。 ![]() せっかくだから「東尋坊」も見ておくことにしよう。 夕暮れの時間帯に、さすがに1人で歩いている人は少なく、 さすが“自殺の名所”と言われるだけある。 夕日の写真を、1人で撮りに来ただけでも、ほとんど不審者扱いだ。 公衆電話のボックスにも「救いの電話」の文字。 “旅先からふる里へ電話してみませんか?”と浮かび上がる。 ![]() この東尋坊の崖っぷちに「動くもの」を見かけたので、よく見ると猫だった。 随分とこの辺りに住み着いている様子。 崖をひょいひょいとよじ登ったり、いともカンタンに飛び跳ねたり。 観光客の姿を見かけると甘えて、エサをねだってみたり…。 そういう意味じゃ、人間に比べれば、ずっと猫はたくましいのかもしれない。 猫の無邪気な表情が、人の「幸“福”」について考えさせてくれる。 ![]() さて、旅の最後をスッキリと飾るには、やっぱり温泉! 福井行きに乗り込んで「あわら湯のまち」駅で途中下車。 芦原温泉は、明治時代、灌漑用水の確保のために、 井戸を掘ったら温泉が湧いてきたという、比較的新しい温泉。 掛け流しを味わいたいのであれば、駅併設の観光案内所で、 去年6月から発売されている「あわら温泉湯めぐり手形」(1500円)を確保。 係の人に「掛け流しの旅館」を訊いてみるとよいだろう。 ![]() 今回は案内してもらった、老舗高級旅館「つるや」さんにお世話になる。 大きな旅館は、たいてい団体さんが多いのが常だが、 私が訪れた午後7時過ぎは、どうやら宴会中の様子!? 大きくきれいな風呂を独占で堪能させていただいた。 海が近いため、塩っぽいお湯ながら、うっすらと硫黄の香りも。 やっぱり、お湯は「掛け流し」である。 ただ、この「つるや」、平日2人泊、1泊2食付1人「23250円」とのこと。 普段の旅では、まず手が出ない金額の宿だが、 そんな宿の風呂を味わえるのも「湯めぐり手形」のお陰。 芦原温泉、なかなかの「福」がある。 ![]() そうそう、芦原温泉の玄関口となる「あわら湯のまち」駅にも、 1匹の猫が住み着いている。 チビなどという名前が付いているそうで、タイミングがよければ、 切符を買う時、窓口の横に座っていることもある。 カメラを向けると逃げてしまったが、とても人懐っこい猫である。 ちなみに、えちぜん鉄道のきっぷは、窓口での販売が基本。 列車に乗る時は、かならず「○○まで下さい」と言わなくちゃならないのだ。 しかも、無人駅を有人駅に改める取り組みもしている。 ![]() 以前、とある著名人の対談を手伝った時に聞いた話だが、 今の世の中の問題、突き詰めていくと、その多くは、 「コミュニケーション不足」に起因するという分析があるのだそうだ。 人と人との温かいつながり、つまりはコミュニケーションこそが、 人に「福」をもたらしてくれるのではないか…。 “鉄”な旅のはずが、いつの間にか“哲”学的な旅になってしまった。 「えちぜん鉄道」、これからも注目していきたい存在である。 ※北陸へのアクセスに「寝台特急北陸」「急行能登」 ![]() 首都圏から北陸へのアクセスに、お薦めしたいのが 上野〜金沢間を結んでいる「寝台特急北陸」と「急行能登」である。 特に「北陸」は、個室率が高くセキュリティの面でも安心。 また「能登」は、今もボンネット型(こだま型)の489系が使用され、 「急行」として、リーズナブルに東京と北陸を結んでいる。 運行時間は短いが「北陸フリーきっぷ」でも乗れるので、積極的に活用したい。 <ダイヤ> 下り:北陸…上野23:03→金沢6:34、能登…上野23:33→金沢6:38 上り:北陸…金沢22:18→上野6:19、能登…金沢22:15→上野6:05 「北陸フリーきっぷ・グリーン車用」が便利! 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