2006年11月

2006年11月15日(水曜) 西都城編

九州シリーズの第4弾は、宮崎県へ。
JR日豊本線・西都城駅の駅弁を紹介。



西都城は、吉都線が分岐する都城から1駅。
地図で見る限り、市役所はこの西都城の方が近いようだ。
昭和後期に高架化されたと思われる、実に無機質な駅舎。
乗降客はお世辞にも多いとは言えず、なぜこのような駅に
駅弁が販売されているのか、素人目にはまず判るまい。
ただ、昔ながらの駅名票をよく見ると「いそいち」と書かれた
隣駅の下にうっすら「いままち(今町)」という字が読み取れる。
実はこれぞ、西都城で駅弁が販売されている最大の理由。
かつて、この西都城からは「志布志線」が分岐していたのだ。
しかし昭和62年、国鉄末期の合理化で「志布志線」は廃止。
以来、少し痛々しい駅名票と駅弁の存在が、
西都城のかつての栄華を今に伝えている。



西都城の駅弁を販売するのは「せとやま弁当」。
駅構内の販売はなく、駅を出てロータリーの右側に
判りやすく「せとやま弁当」という看板が見えてくる。
営業時間は、朝8時から夕方5時まで。
駅弁屋というよりも、街の弁当屋さんといった佇まい。
実際、駅弁を購入していると昼飯を求める主婦の姿も。
この「街の弁当屋さん」としての顔があるからこそ、
ターミナル機能を失った西都城でも「駅弁」として、
生きながらえることが出来たのだろう。



西都城の看板駅弁は「かしわめし」(720円)。
目が覚める、鮮やかなオレンジ色の掛紙を剥がすと
品格のある経木の容器が登場して、喜び倍増!
駅弁を食べ慣れてくると、経木にべっとり張り付いたご飯を
一粒一粒箸でとっていくことが、この上ない「カイ・カン」!、
程よく吸水され、だしが効いた米が心地いい。
やはり木と米は合うのだ。
これにやや甘めの「かしわ」が5切。
折尾の東筑軒のような、そぼろタイプとは違って、
南九州らしい無骨さも感じさせてくれる。
ちなみに、都城駅のキオスクでも、少数ながら販売がある。



都城は「肉の町」である。
何でも“平成の大合併”で都城市は、
牛・豚・鶏の産出額が日本一になったんだとか。
この日本一のプライドが詰め込まれた駅弁こそ
1日20個ほど限定販売の「盆地の牛めし」(840円)。
冷めてから食べても肉が柔らかい!
隠れ名駅弁と名高いのも納得。
ちなみに、昼過ぎに行くと、まず売り切れ。
確実に入手したい場合は予約が肝要と店員さんに指導を受けた。



そして山間の都城らしい、もう1つの駅弁が「栗めし」。
甘いクリに野菜たっぷりのヘルシー駅弁。
加えて、720円と駅弁にしてはリーズナブルな価格設定は、
身も懐にも優しい駅弁である。
これまた、素朴な掛紙が嬉しい。

幸い、宮崎〜西都城間の普通列車は、いく分、本数も多い。
また西都城には、特急「きりしま」も停車する。
このエリアを訪れる機会があれば、ぜひとも西都城で途中下車!
昭和50年代にタイムスリップしながら、
街に密着した駅弁屋さんが作る、秀逸な駅弁を堪能したい。

■旅のワンポイント〜九州シリーズC名湯・霧島温泉郷

旅に出たくなる瞬間というのは、2つあるような気がする。
一つは、前々から「行きたい」と思っていて出かける場合。
もう一つは、何かから逃れたくて、ふと思い立つ場合。
実は今年、4回にわたって九州を訪れているが、
うち1回は後者である。

私、あまり人付き合いがよくないもんで、
結婚式などに呼ばれることはまずない。
そんな私に「披露宴の台本を書いてくれ」と頼み込んできた
酔狂な新郎新婦がいた。
しかも「オールナイトニッポンのような雰囲気…。
場所はディズニー系のホテルで…」という。
元々、朝の番組が大好きで、この仕事始めたようなもんだから
もっぱら“朝専用作家”。
まして“大の大人がディズニーなんて”とついつい思ってしまうもの。
(もちろんディズニーは素晴らしいエンターテイメント!)
で、「結婚式なんてやだ!」と旅に出たのが、この時の霧島温泉!
携帯は繋がりにくくとも、宿の無線LANは通じるっていうんで、
レギュラーの番組には差し支えないと、飛び出した次第なのだが、
こういう「イケないことしてるなぁ」って時ほど、
旅の記憶は残るもんで…。



霧島温泉郷へは、日豊本線の霧島神宮駅が玄関口となる。
たいてい、特急列車に接続して「いわさきホテル」行の
林田バスが接続している。
「いわさきグループ」といえばこの秋、鹿児島の路線バスを、
一気に廃止したことで、全国的に話題となったが、
この観光路線までは、さすがに廃止できまい…。
でも、私が乗った休日の昼過ぎのバス、乗客は私1人…。
路線バスの現実は、厳しいモノがある。



今回、私が“逃げ込んだ”のは丸尾温泉の「旅行人山荘」。
かつては「丸尾旅館」「霧島プリンスホテル」だった宿だが、
8年前から、有名な雑誌「旅行人」を主宰する作家・蔵前仁一氏が
経営する宿として名前を改め、旅好きの間ではよく知られた存在になった。
ここの宿のウリは、何と言っても風呂!
それも時間制の「貸切露天風呂」で、特に人気なのは「赤松の湯」。
あの原田知世さんが出ている「ブレンディ」のCM撮影に
使われたことから、早めの予約が必至、人気の風呂である。



とまあ、言ってみたものの、空いてる時に1人で来てると、
そんなに貸切露天風呂に惹かれるものはない。
みんな挙って貸切に行ってくれる分、普通の露天付大浴場が
1人で貸切になることもしばしばなのだ。
2種類の源泉を持っていて、1つは1819年に、
狩人に発見されたという天然自噴の単純泉。(結構、湯の花たっぷり)
で、もう1つが香りたっぷりの硫黄泉。
大浴場では内湯に単純泉。露天風呂には硫黄泉を引いている。
当然、掛け流しで、天気さえ良ければ見晴らしもグッド!
予約入れるのが面倒くさくて、貸切露天に行かないでいたら、
そこはさすが、旅行雑誌が経営する宿!
客との距離感がいいというか、客の動きを把握してるというか。
ロビーの無線LANを使って原稿書いてたら、宿の方が、
「望月さん、折角、東京から来たんだから露天入っていきな!」と
薦めてくるじゃないか。
こう言われれば、拒む理由は全くない。
客にはそんなに干渉しないけど、宿の人と程よいやりとりがある。
やっぱり「いい宿」は、居心地がいい。



早朝、部屋の窓からは雲海が広がる。
天気さえ良ければ、桜島が一望出来るというのだが、
日頃の行いが悪い人間には、望める筈もない。
それでも、朝もやの雲海というものは、神秘的ですらある。
気持ちをリセットするには、最高のひと時だ。
あと、食事処でいただくご飯も、多すぎず少なすぎずいい感じ。
黒豚料理なども味わえて、満足満足。
「旅行人山荘」、お薦めである。
http://www003.upp.so-net.ne.jp/maruo/






「霧島温泉郷」というくらいだから、温泉は至る所で湧いている。
どちらかというと万人受けする「旅行人山荘」に対して
お湯好き、湯治にお薦めしたいのが「湯之谷山荘」。
毎分480リットル、自家源泉を5本持つ宿だ。
大きい浴槽には46度・白濁の硫黄泉がふんだんに注がれる。
でも、ここには、さらに極上のお湯がある。
混雑のため、画像にはおさめられなかったのだが、
画像の手前には、30度・炭酸硫黄泉の小さい浴槽があるのだ。
このお湯がもう絶品!
炭酸のアワアワ感と硫黄を両立したお湯は、私、初めて味わった!
長めの入浴で、ポカポカした入浴感と皮膚に残る硫黄臭。
温度が低いからこそ、なし得る入浴感とか。
46度の浴槽に入っている人たちの間には、
暗黙の了解のうちに順番が出来、小さい浴槽へと移っていく。
そして満たされた顔で、湯端でくつろぐ。
一緒に入ってたオヤジさん曰く、ここのお湯は、
温泉大国・鹿児島でも、5本の指に入るとか。
最高のお湯はというと…? またの機会に紹介しよう。



霧島温泉郷のお湯は、国道223号線沿いにある
高さ23m、幅16mの「丸尾の滝」となって流れ落ちる。
硫黄分を含んだお湯のために、時として、
湯煙が立ち上ったり、青白く見えることも。
夜はライトアップされて、一層、幻想的なんだとか。

結局、この時の披露宴の台本、本番までには書いたのだが、
当の本番は、朝の番組が終わってから駆けつけたもんで、
気持ちよ〜く酔っぱらっちゃって、きれいサッパリ、
何やったかほとんど憶えちゃいない。
唯一憶えてるのは、ワインを持ってきたお姉ちゃんが
可愛かったことくらいか。

■追記

「宿から桜島を見たい」という願望が抑えきれず、
先日、改めて「旅行人山荘」への宿泊を敢行。
今回は望み通り、夕日に染まる「桜島」を満喫!






直下の霧島温泉郷からその先、錦江湾に浮かぶ桜島。
そして大隅半島まで一望!
宿の周りにはニホンジカも出没し、秘境ムードも満点!
改めて、お薦めの宿である。


次回は九州シリーズ第5弾、宮崎編!



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