2006年9月

2006年9月4日(月曜) 新神戸編

私、野球は、完全に「観る派」である。
体を動かすことほど、面倒なことはない。
学生の頃から、体育の時間は憂鬱だったし、
地域のソフトボール大会の直前には、
“架空の親戚に死んでもらった”こともある。
もちろん、大学だって体育がない学部を選んだ。
もう、この上ない「面倒くさがり」。
でも、野球のプレーを観たり、
あーだこーだ、文句を言ったりするのは好きだ。
「夏の甲子園」もその一つ。
このホームページでも、何度か取り上げているが、
なんと言っても球場がいい。
グラウンドレベルの客席に漂う、芝と埃の混じった匂い。
スコアボードのバックには青い空と白い入道雲。
“かちわり”で体を冷やしながら、暑さに耐える。
なぜか止められない「夏の儀式」と言ってもいい。
そんなわけで今年の夏は、山陽新幹線・新神戸駅の駅弁。



新神戸は、在来線と接続のない山陽新幹線単独駅である。
新大阪からは15分ほどだが、神戸空港に対抗する意味で、
2003年から、全ての「のぞみ」が停車するようになった。
従って、東京からは2時間50分ほどで到着。
新神戸と三宮は、神戸市営地下鉄で3分と思ったより近い。


神戸周辺は明治36年創業の「淡路屋」が
一切の駅弁を扱っているが拠点は、この新神戸の駅である。
メインの売場は、改札口の手前、左側にあり、
営業時間も最も長く、朝6時〜夜8時ごろ。
この他、上りホームには、船を模した売場が2ヶ所。
下りホームには、中国風の売場が1ヶ所。
地下鉄との乗換通路にも1ヶ所ある。



40年の歴史を誇る神戸駅弁の代表「肉めし」の
グレードアップバージョンが1年ほど前にできた。
その名も「ええ牛 肉めし」(1300円)。
淡路屋さんの料理長が、特に「ええ牛」として選んだ、
人気高い国産黒毛和牛のみを使用とのこと。
ローストビーフの肉と、口当たりのいいきのこピラフで
廉価版の「肉めし」に感じられたチープ感は払拭されている。
ちょい高めだが、クセになるかも。






今年3月に発売された「神戸のステーキ弁当」(1200円)は、
けして量は多くないが、味は実力十分。
ボリュームを求める方には、やや不満が残るか。
言い方を変えれば、女性でも楽しみやすいステーキ弁当とも言える。



神戸牛のブランド感を出した肉系の弁当の中にあって、
ご当地の庶民の味にスポットを当てた異色の弁当が、
「神戸長田名物・ぼっかけ牛飯どんとこい」(750円)。
“ぼっかけ”とは、牛すじとコンニャクを甘辛く煮込んだもので
「ぶっかける」が語源と、包装には書かれている。
長田地区は、95年の阪神淡路大震災で最も被害が大きかった地域だ。
神戸を訪れるたびに思うのは、どの建物も比較的新しいということ。
震災の傷は完全に癒えたとは言えないのかもしれないが、
傍目には分からないくらい、今は皆さん力強く生きている。
1つの駅弁をきっかけに、ぜひ長田の街を歩いてみたい。



牛肉に飽きた方には、定番の鶏めしもある。
淡路屋の場合は「地鶏弁当」(850円)という名称。
山陽新幹線での車内販売もあり。



多少、荷物になってもいいなら
「豚々(とんとん)拍子」(980円)なんてのはどうか。
文字通り豚肉を使った駅弁だか、裏テーマは健康とのこと。
低脂肪の豚肉に、ご飯も麦飯。
「貯金箱」にもなっているので、体がいざと言う時にも役立つ。
出来れば、医者知らずでありたいものだが…。



同じ豚でも、こちらはファンにはたまらない駅弁。
その名も「タイガース勝めし」(1000円)だ。
ボールの形をした陶器製の駅弁なので、
持ったまま甲子園に行こうとするのはお薦め出来ない。
この駅弁には、コンソメご飯が使われているが、
淡路屋さんは全体として、ご飯の処理というか、
弁当全体へのご飯の馴染ませ方が巧いと思う。
タイガースファンならずとも、タイガース“に”勝つという意味で
一度味わっておいて悪くない。



肉がどうしても嫌だという方におススメの新商品は、
今年のGWに発売された「神戸中華・海鮮飯店」(1000円)である。
海老・いか・小柱・たこが入った海鮮ピラフの上に、
ワタリガニ、鮮やかな野菜。
華やかな神戸・南京町をイメージした弁当ということだが、
確かに南京町は活気十分!
南京町へは三宮のお隣、JR・阪神の元町駅が最寄り。



新神戸から北神急行・神戸電鉄を乗り継ぐと、
40分あまりで日本三名泉の1つ・有馬温泉。
市街地からは、六甲山を越えた場所にあたり、
港町・神戸とは違った雰囲気を醸し出す。
この有馬にちなんだ駅弁もあって「笹すし」(840円)を名乗る。
鯖・鮭のほか、穴子・鯛を使っているところが目新しいか。
神戸には、比較的こってりした駅弁が多いので、
このあたりの駅弁が、オアシスに感じることも。



トンネルとトンネルに挟まれた新神戸の駅。
東京からは「のぞみ」が20分おきの運行。
加えて、新大阪〜博多間には、のぞみ並みのスピードで走り、
普通車指定席でも、グリーン車並みという
破格のサービスを誇る「ひかりレールスター」も毎時1本運行。
この東海道・山陽新幹線を有効に使うアイテムといえば、
JR東海の「エクスプレス予約」だ。
年間1050円の会費が必要だが、
東京〜新大阪を2往復以上すれば元は取れる計算。
何分、普通車指定席が自由席より安く乗れる上、
繁忙期でも影響を受けないことが大きい。
(東京〜新大阪・新神戸の特急料金が4690円!)
この夏からは、博多までエリアが拡大して一層便利になった。

また、東京〜関西の往復では、通の間では有名な裏技として、
「東京都区内〜大阪市内」で往復きっぷを買うより、
「東京都区内〜西明石」で往復を買った方が割安になるテクがある。
これは西明石まで行くと、片道601キロ以上という計算になって、
往復割引の適用となり「2割引」となるのだ。
(東京都区内〜大阪市内:片道8510×2=往復17020円。
 東京都区内〜西明石:往復割引適用で16820円)
しかも、大阪・新神戸などでの途中下車も可能。
些細な金額だが、お茶1本分は捻出できる。
関西地区との往復には「エクスプレス予約」と
「往復割引」の活用が賢い利用法だ。

■旅のワンポイント〜港町・神戸&夏の甲子園・早実優勝レポ

港町・洋館・中華街・夜景のカルテットが揃った街といえば、
横浜、長崎、そして神戸である。
思えば、神戸を何回か訪れている割には、
神戸の定番スポットはスルーしていた。
そこで今回は、神戸の定番スポットを駆け足で回ってみた。



神戸を代表する洋館の1つ「商船三井ビル」。
1922年の建築なので、来年で85年を迎える。
震災によって倒壊してしまった洋館が多い中、
被害を受けながらも生き残った価値ある建物。
今も現役でオフィスビルとして活躍している。



神戸の中華街・南京町は活気がある。
入口に建つ「長安門」は、震災にも耐えて半壊で済んだ。
横浜より小ぢんまりとしているが、密着度と庶民性は数段上。
昭和初期には「南京町に行けば何でも揃う」と言われたそうだ。



南京町では、ぜひとも食べ歩きを楽しみたい。
横浜でも、スタジアムで野球を観た後などに
ぶらぶらッと中華街へ行くことがあるが、
神戸の方が、断然食べ物が安い!
ご覧の豚まんは、大正4年創業の老舗で
元祖豚饅頭を名乗り、いつも行列が出来ている
「老祥記」のものだが、小ぶりながら3個で240円。
他のお店でテイクアウトできるラーメンも
だいたい300円前後と非常に手ごろ。
昔はもっと安い店ばかりだったそうだが、今でも
5〜6百円あれば十二分に小腹を満たすことは出来る。



神戸の辺りが「港」として栄えるようになったのは、
さかのぼれば、平清盛の時代である。
日宋貿易を手がけた清盛は、天下人となった時、
利便性を追求して、都を京から福原へ移した。
この福原京こそ、今の神戸(兵庫区)の辺り。
清盛の時代から800年の時を経ても、
神戸の港は日本を代表する貿易港である。



日本三大夜景は、函館、長崎、神戸の3つ。
函館、長崎は、既にこのページでも紹介したが、
残る1つが、六甲からの神戸の夜景。
六甲へは、阪神・御影、JR・六甲道、阪急・六甲から
神戸市バスの16系統〜「六甲ケーブル」で山腹へ。
ケーブルの終点でも標高700メートル以上で、
平地より「5度」は低いとのこと。
オープンエアのケーブルに乗っていても、
徐々に気温が下がっていくのが判る。
この時期、夕涼みにはもってこいのスポットでもある。



1000万ドルの夜景と称される神戸の夜景だが、
函館、長崎と比べて何がすごいかといえば、
神戸だけでなく、大阪まで一望できる点ではないか。
左手には、見事に大阪湾の弧が夜景になって現れる。
この日は若干、霞みが入ってしまったが、
聞くところによれば、空気の澄んだ日には
もっと美しくなるとのこと。

ちなみに、これだけデジカメが普及、
夜景モードなども、半ば常識となりつつある中、
見事にフラッシュをたいたり、手でカメラを持って
記念写真を撮っているカップルも見受けられた。
後で背景が真っ黒の画像や、手ぶれたっぷりの画像を見て、
女の子が機嫌を損ねている顔が目に浮かぶ。
本気で夜景を撮るのであれば、三脚は必須。
そうでなければ…
@フラッシュをたかない(夜景モードにする)
A手すりや人の肩などに固定して撮る。
Bタイマー撮影を活用する。
この3つのテクニックで、上手に夜景を写すことが出来る。
(私もジンバブエディレクターからの受け売りなのだが…)
カップルの中には、私の手法を真似て、早速試してるのもいた。
思い出づくりには、チョットした技術が役に立つ。

●夏の甲子園・早実優勝レポ



まさか、決勝が再試合になるとは…。
しかも延長15回になって、140キロ台後半を連発する投手。
「嫌らしい時の松坂みたい…」そう思った。
「これはナマで見る!」
再試合が決まった瞬間、現地観戦を決意。
早速、夜行の「銀河」号のチケットを押さえて甲子園へ向かった。



朝8時の甲子園。銀さんの下の座席を販売する
チケット売場には、既に駅まで繋がる長蛇の列。
やむなく3塁(早実)側のチケットを求める。
実は私、8月6日・開幕の日にも甲子園に行っている。
この時は、どちらかと言えば、斎藤のピッチングよりも
大阪桐蔭・中田のホームランに注目が集まっていた。
しかし、この2週間で斎藤は見事に化けたように思う。
普通の甲子園球児から「ハンカチ王子」へ。



早実・斎藤と駒苫・田中のエース対決。
再試合でも斎藤は、低めに球が決まっていた。
これに対し、球が高めに浮いてしまう田中。
やはり傍目にも、田中には疲れが感じられる。
「この斎藤のピッチングが続けば早実だ」
一緒に行った野球通がつぶやいた。
ただ、尻上がりに調子を上げてくる田中。
それでも、小さなミスを突いて追加点を挙げる早実。
そして、面白いように三振を奪っていく斎藤。
しかし、9回表の駒苫・中澤のホームランで1点差。
「まさか、今日も延長15回では…」
そんな空気が流れた直後の、斎藤・田中直接対決。
ズバッと決まるストライク!
流れはやはり早実だった。
(マウンド上が早実・斎藤。バッターボックスが駒苫・田中)



8月21日午後3時、駒苫・田中のバットが空を切った瞬間、
1人の甲子園のヒーローが誕生した。
948球。
OBの王さんも「斎藤君の熱投の一語に尽きる」と言っていた。
全くその通りだ、異論はない。
ただ現場で思ったのは、それはあくまでもポイントということ。
やはりチームワークのよさだ、風通しのいいチームは強い。
初日、大阪桐蔭と戦って敗れた、センバツ優勝の横浜。
個々の実力は、間違いなく高い。
でも、観ていて伝わってきたのは「オレが、オレが」という空気。
春の優勝で「過信」がなかったか?
決勝に残った2チームには、個々の実力もさることながら、
いいチームワークがあった。
ピンチになれば、皆、マウンドに駆け寄って「間」を取る。
基本に忠実な相手が取りやすい球を投げてエラーを防ぐ。
現場で観ると2人のエース以上に、
チームワークの素晴らしさを感じることもできる。
決勝直前の早実ナインからも、
心から野球を楽しんでいる笑顔が見られた。



私も思わず、久々に「紺碧の空」を唄ってしまった。
行きたくて行きたくて入った大学のくせに、
年2回ぐらいしか授業に行かなかったが、唄は覚えてた。
大学に入る前、浪人時代からCDを譲ってもらって
「紺碧の空」を唄えるようになってはいたが、
まさか、甲子園で唄うとは思ってもみなかった。
思えば「紺碧の空」も「栄冠は君に輝く」も古関裕而作品。
(闘魂こめて、六甲おろしなども)いい歌が多い。
大進撃〜スパークリングマーチ〜ダイナマイトマーチ〜
ファンファーレ1番〜コンバットマーチなどと続く、
地鳴りのような応援も美しかった。

もちろん、4日連続で計1000球近い球を放るなど異常だ。
たかだか高校生の野球で…という意見もある。
でも、球児の1球1球にかける気持ちは、
観る者を清々しい気持ちにさせてくれる。
忘れてた何かを、思い起こさせてくれる。
久しぶりにいい試合を観た。
「考えて観る野球」はやめられそうにない。



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