2006年2月

2006年2月28日(火曜) 釧路編

釧路を訪れるのは3度目である。
何と言っても、学生時代の夏、
初めて釧路を訪れた時のことが忘れ難い。
旧盆の頃、東京から各駅停車を乗り継いでやって来て、
駅に設置されたツーリングの人向けの旧型客車で、
“凍えながら”一夜を明かした。
「道東は夏に霧が出て気温が上がらない」とは聞いていた。
でも、旧盆に気温が10度そこそこしかないとは
思ってもみなかった。
Tシャツ1枚、防寒具なしの500円の宿。
寒さで夜中に何度も目が覚めた。
もちろん夏に凍える思いをしたのは、釧路が最初で最後。
釧路の駅に降り立つ度に、あの時の記憶が甦る。
今回は、そんなJR根室本線・釧路駅の駅弁。



札幌から「特急スーパーおおぞら号」で最速3時間半あまり。
かつては、飛行機も競合していたが、
スピードアップで、鉄道が盛り返した区間である。
本州からは、新千歳空港から1駅の南千歳で、
「スーパーおおぞら号」が接続。
釧路の隣駅・新富士は、東海道新幹線にも同名の駅が存在。
奇遇なことに、どちらの駅の近くにも製紙工場がある。



釧路駅の駅弁は「釧祥館(せんしょうかん)」が販売。
駅弁売場は、改札口を入ってすぐの1番線左手にある。
営業時間は、特急「スーパーおおぞら」号の発車前後のみ。
発車時刻の30分くらい前になると、
販売員がドコからともなくやって来て営業を始める。
参考までに、現在の発車時刻を記しておくと、
「7:39、8:40、11:19、13:25、16:18、18:42」。
根室方面、網走方面のほとんどの列車も
「スーパーおおぞら」に接続する形で運転されているので、
ある意味、効率的な営業。
ちなみに、これ以外の時間は、改札口を出て正面にある
キオスクで販売しているが、ラインナップは少なめ。



釧路の駅弁は、海鮮素材をそのまま使った豪快なものが多い。
その代表格ともいえるのが「たらば寿し」(1350円)。
ぶっといタラバが3本、デーンと鎮座する様子は、
ビジュアル的に圧巻、味も嘘はない。
駅弁大会やマスコミ的には、大いに映える存在ではないか。



上の「たらば寿し」から「たらば」を外すと
「釧路漁礁(くしろぎょしょう)」(1000円)か!?
たらば寿しに比べればボリュームは控えめだが、
それでも普通の方にとっては必要十分。
駅弁でこれだけの物を提供しているとは大したもの。



かきめしなら前回紹介した厚岸で食べたいところだが、
時間の都合上、厚岸には行けないという方は、
釧路の「かきべん」(900円)で妥協する手もある。
厚岸の「かきめし」があまりに秀逸なため目立たないが、
決して悪いものではない。



前回紹介した「SL冬の湿原号」のカフェカーで
販売されているのが「釧路SL感動弁当」(1000円)。
中味を確認すると、サーモン・イクラ・牡蠣と、
これまで紹介した釧路駅弁をいいトコ取りした感じの弁当。
おかずも付いて、お得で食べ応えのある弁当と言ってもいいか。
但し、原則として販売はSL限定。
駅では購入できないので注意したい。



ここまで「釧祥館」の駅弁を紹介してきたが、
釧路には、もう1つ「引田屋商店」が取り扱う“駅弁”がある。
こちらの販売は、改札を出て正面キオスクに隣接する土産物店。
営業時間は朝8時〜夕方6時40分。



駅弁大会でもおなじみ「いわしのほっかぶり」(790円)。
いわしと酢漬けの薄切り大根との組み合わせが絶妙。
8カンで“もう少し食べたい”と思わせるのも1つの戦略か!?
「スーパーおおぞら」への積み込みや釧路空港での販売もあり。
業界団体に加盟していないため、正式な駅弁ではないが、
釧路では一度食べておきたい逸品。



いわしだけでは物足りないという場合は、
「いわしのほっかぶりとサーモン寿し」(890円)。
“サーモン”の所だけスタンプになっているのは、
サーモン以外の組み合わせもあるということ。
いわしもサーモンも脂たっぷりの実力派。

私が釧路を訪れた日は、朝の気温が氷点下4度と、
冬にしては春の気配を感じさせる“暖かい”朝。
厚岸まで乗せてくれたタクシーの運転手は、
「釧路で元気がいいのはパチンコ屋だけだよ」と
ぼやいていたが、釧路で暮らす人たちにも、
道東の拠点にふさわしい“暖かい春”が
来てほしいものである。

■旅のワンポイント〜厳寒の北海道V・“北の草津”川湯温泉



釧路と網走、およそ170キロを結ぶ「釧網本線」。
全線を直通する列車は、画像の「快速しれとこ」1往復を含め
わずかに4往復。
それでも「本線」を名乗るのは、かつて「支線」があった名残り。
標茶から中標津、根室標津、厚床を結んでいた「標津線」。
斜里から根室標津を目指して作られていた「根北線」など、
何本かの支線があって、開拓に大きな役割を果たしたという。
今となっては、風光明媚な景色の中をのんびり走るローカル線。
SLやトロッコ列車など、観光路線としての色彩も濃い。



釧網本線も合理化が進んで、およそ170キロに
有人駅は、知床斜里・摩周・標茶とわずかに3つ。
しかし、釧網本線の無人駅には、個人経営の喫茶店などが入って、
温もりのある駅を創っているのが特徴的である。
私が途中下車した川湯温泉駅は、釧網本線のほぼ中間に位置し、
駅舎は昭和初期に建てられた風情ある建物。
駅は20年前の昭和61年に無人化されたものの、
その翌年に喫茶店「オーチャードグラス」がオープン。
近年、足湯も作られて、より魅力的な駅になっている。

◆「オーチャードグラス」ホームページ
http://www.h7.dion.ne.jp/~kawayu/

私は、ここから列車に接続して発車する路線バスで10分(280円)。
“北の草津”と名高い、道東の名湯「川湯温泉」へ。



北海道の温泉は、塩っぽいお湯や石油っぽいモール泉などが
多い印象があるが、ここ川湯は「強酸性の硫黄泉」。
酸性の度合いを示す「ph(ペーハー)」という単位をご存知なら
理解いただけると思うが、中性の湯は「ph7」で示される。
これに対し、川湯温泉の湯は「ph1.7〜1.8」といったところ。
金属はすぐに腐食してしまうほどの強い酸性のお湯である。
この数値に近く、泉質も似ているのが「恋の病以外治らぬ病はない」と
称えられる日本を代表する名湯・草津温泉の湯。
そこで川湯温泉は「北の草津」と称してPRしているというわけ。
もちろん、川湯も“草津”に勝るとも劣らない素晴らしいお湯。
ちなみに、川湯温泉駅の近くにも良質の温泉があるが、
この川湯温泉の泉質とは異なるので注意されたい。



川湯温泉ではそれぞれの宿でかけ流しが行われているが、
地元の方が、宿泊施設を含むあらゆるお湯と比較して、
一番いいと推奨してくれたのが「川湯温泉公衆浴場」。
(200円、毎月1日・15日休業。朝8時〜夜8時)
2つの浴槽があり、1つに熱めの源泉がたっぷり注がれ、
もう1つには、真湯が注がれている。
共に温泉の成分がこびりつき、年季の入った浴槽。
あまりに酸性が強く、浴槽が痛みやすいことから、
温泉と真湯の浴槽は、一定の間隔で入替えられているとか。
私が入った時は、左が温泉、右が真湯。
先客の地元の方と話し込むと、あっという間の1時間半…。
観光目的の人には、宿の風呂を推奨するが、
温泉好きの人なら、必須の風呂である。



観光目的の人に薦めたいのが「ダイヤモンドダストin KAWAYU」。
12〜3月の間、温泉街の中心にある湯の川園地で
80000個の電球を使ったイルミネーションが行われている。
この他、星空の見学会や、人工的にダイヤモンドダストを作る
ダイヤモンドダストパーティーなども、夜に行われている。
本来なら紹介したいところだが、夕飯のついでに一杯やると
ついつい眠くなってしまい…、夜中に目が覚めるというのが
私のいつものパターン。



翌日、バスに乗ろうとターミナルまで来ると、
隣には「川湯相撲記念館」(400円)の文字が見えた。
ウクライナ人と日本人の間に生まれ、樺太から命からがら逃げ帰り、
この川湯で少年時代を過ごした納谷幸喜少年。
樺太から日本へ来る時の苦労を考えれば、
相撲の練習など大したことは無いと言ったとか。
朝青龍の良き相談相手になっているというのも納得である。
記念館では力士時代の栄光にしかスポットが当てられていないのが、
少々残念であるが、館内ではVTRで
現役時代の大鵬の取組を観ることが出来る。
サッとまわしを取って、グッと土俵際に寄っていく力強い相撲は、
最近の力士に少ないだけに、観ているだけで爽快。
「やっぱり相撲はこうじゃなきゃ」と思わずつぶやいてしまった。



川湯温泉バスターミナルからは、阿寒バスの定期観光バス
「阿寒パノラマコース」に乗車。
ほぼ1日かけて阿寒湖〜摩周湖〜屈斜路湖の3つを一気にまわり、
要所では見物時間も設けられた定期観光バスだが、
予約不要、ガイドさんもおらず、半ば路線バスといったところ。
今回は、屈斜路湖〜美幌峠へ抜けていく。



川湯からバスに10分ほど揺られて「屈斜路湖」。
砂を掘るだけでお湯が湧き出す「砂湯」で有名。
折角だから砂を掘って一風呂と行きたいが、
ご覧のように、越冬する白鳥たちが占拠。
夏は夏で、観光客が占拠するわけで
今となっては人間は砂湯どころじゃないというのが
ホントのところか。



砂湯のお湯は、飲泉にも効能が認められていて、
土産物店で飲泉できるようになっている。
当然、屈斜路湖の湖水には温泉が含まれているわけだが、
白鳥も飲泉の効果を知ってか知らずか、
盛んに湖水を飲む様子が見られる。






ニッポン放送が有楽町に戻ってきて嬉しいことの1つに、
交通会館の1階にある北海道のアンテナショップ、
「どさんこプラザ」にすぐ行けることが挙げられる。
ココでは300円と少し高めながらソフトクリームを出していて、
これがなかなか美味い。
そんなわけで北海道のソフトクリームには
親近感を憶えていたのであるが、
屈斜路湖を訪れてみると、土産物店の1つが
「日本一おいしいソフトクリーム」を自称しているではないか!
冬の北海道というと外は厳しい寒さだが、
一度建物や車に入ってしまうとかなりの暖かさ。
実は、意外と冷たい物が欲しくなる。
「日本一」という言葉に誘われて口にしてみると…、
まあ、そんなもの(400円)。
北海道では標準的な濃厚な味としておこう。



屈斜路湖で双方向の「阿寒パノラマコース」のバスが
交換した後、私が乗った網走行は「美幌峠」へ。
眼下に屈斜路湖、遠くに斜里岳を望めるというが、
この日は、辛うじて屈斜路湖のみ。
晴れていれば、日本有数のパノラマといわれている。



美幌峠というと、映画「君の名は」のロケ地としても
知られているが、展望台には1つの歌碑がある。
書かれているのは、番組でもおかけしたことがある
美空ひばりの「美幌峠」。
20年前の1986年に発売された隠れた名曲で、
90年にこの歌碑も作られた。
“霧が心をまよわせる”と唄われているが、
この日も辺りは霧模様…。
エンドレスで流れる「美幌峠」が耳に残る。



30分ほどかけてゆっくり峠を下れば美幌の街。
バスは女満別空港経由で網走まで行くが、
私は、JR石北本線の美幌駅で下車して北見へ。
厳寒の北海道シリーズ・第4弾は、
意外と美味い北見の駅弁をご紹介!



2006年2月21日(火曜) 厚岸編

私、正直に申し上げますと、
駅弁大会はあまり好きじゃないんです。
現地で、その土地の味を味わってナンボ。
ですから、この「駅弁膝栗毛」も出来る限り現地主義!
もちろん今回も、現地まで行ってまいりました。
ご紹介するのは、JR根室本線・厚岸駅の駅弁です。



前回の函館ならまだしも、北海道それも道東へ行くのに
「鉄道」を選択する人は、よほどの「道楽者」でしょう。
東京から八戸まで3時間。
八戸から函館まで3時間。
函館から南千歳までやっぱり3時間。
南千歳から釧路までは、3時間半!
3時間×4回で、都合12時間以上!
私はといいますと…、土曜日の放送後飛び出しまして、
東京を朝8:56に発つ「はやて9号」に乗り込み、
八戸で12:16発の「スーパー白鳥9号」に乗り換え。
函館で待ち受けるのは、15:24発「北斗15号」。
南千歳で1時間待ちぼうけをくらいながら、
19:31発「スーパーおおぞら11号」に乗り継いで
釧路に着いたのは22:57で、東京〜釧路間は「14時間1分」!
ちなみに、比較のために申し上げますと、
ほぼ同じ時刻、朝9:10に羽田を離陸した全日空741便は、
1時間35分後の10:45にはもう、釧路空港に着陸しています。
これはもう、半日以上鉄道に乗っていても苦にならない人、
行く「道を楽しめる者」でないと無理というわけ…。
そんな“道楽”をしてみたい方には、
「ぐるり北海道フリーきっぷ」がお薦めです。
(5日間有効・東京都区内から35700円)。

でも、道楽者には天罰が下るもの。
翌日は、朝8時15分発の普通列車・根室行で
厚岸に向かう予定だったんですが、気がつけば朝8時!
急いで宿を飛び出して駅に向かうも、タッチの差でアウト。
で、「次の列車は?」というと…、11:03まで1本もなし!
そこで路線バスで行ってみようとしまして
バスのりばに行ってみると「8:40」があるんですが、
厚岸到着は「10:00」で、折返し列車に10分間に合わない…。
かといって、そう何度も来ることのできない場所。
後ろの行程はずらすことが出来ない…。
現地主義を貫きたいがために、結局私、タクシーを選択致しました。
広い北海道、釧路から厚岸までの道のりはおよそ50キロ!
国道44号・根釧国道を快調に飛ばして40分ほど。
メーターは12000円を超えましたが、
ジャスト「1万円」にしていただきました。
「950円」の弁当を1個を買うのに「1万円」!
ここまで来ると、ほとんど酔狂の域です、ハイ。



さて、前置きが長くなりましたが、
厚岸駅の駅弁は「氏家待合所」が作っています。
駅弁自体は、駅のキオスクにも置いてありますが、
折角、現地を訪れたなら、目の前にある調製所で
購入したいもの。
この建物は、駅を出て右前方に見えます。
営業時間は、列車の発車時刻にあわせて、
7:30〜16:20ということです。



これが、1万円を払っても食べたかった駅弁!
厚岸名物「かきめし」(950円)です。
思えば5年ほど前、初めて冬の北海道に来た時、
厚岸駅の待合室にあったストーブにあたりながら、
この「かきめし」をかき込んだ時の
美味しかった記憶がずっと忘れられませんでした。
甘く煮てある牡蠣と、その煮汁で炊いたご飯。
そしてひじきが、口の中で三位一体になった時、
最高の味わいを醸しだします。
容器にべっとりついたご飯を、1粒1粒剥がしながら、
最後の1粒まで食べないと、これは勿体無い!
北海道通なら、知らない人は居ないというくらいの
有名駅弁ですが、有名なのも納得。
私は、北海道ナンバーワン駅弁だと思っています。
厚岸にはこれ以外にも「ほたて弁当」がありますが、
この冬は価格が高騰しているため、お休みということです。



この日は、京王百貨店の駅弁大会から帰ってきたばかりという
ご主人の氏家勲さん(61)に、色々と話を伺うことが出来ました。
面白かったのは、何と言っても「立売りの極意」。
「べんと〜!」と、声を出すにも、
ディーゼルカーのエンジン音とブレーキの音、
そして列車によって巻き起こされる風をすべて考慮に入れて、
チョット裏返ったような声を出すのがいいんだとか。
意外だったのは「へ〜こら、どうぞ来てください」てな感じで
売っていないということ。
むしろ「おっ、ホームに変なヤツいるぞ!」と思わせて、
乗客「1人」をいかにして動かすか、徹底的にこだわるのだそうです。
この「1人」が興味を示してくれれば、後はこっちのもの。
触発されてゾロゾロとお客さんが来てくれるそうです。
また、声1つにも「TPOがある」ということ。
朝は「これ持って、行ってらっしゃい」と、
背中を後押しするような気持ちの「べんと〜」!
昼は「今、これ食わないでどうすんだ?」の「べんと〜」!
夕方は「これ、土産にどうだ?」の「べんと〜!」というんですね。



厚岸は、普通列車が2〜3時間に1本しか来ない駅。
ですから、列車1本1本が、まさに真剣勝負。
「お客さん1人をどうやって動かそうか、考えるのが楽しい」と
氏家さんは語ります。
ちなみに、駅弁は本来「声を出して売る」のが持論とか。
「声を出す」ことで、頭の回転もよくなり、もの忘れもしにくく、
健康にもいいそうです。
私、思わず「去年は還暦で…」と言いかけたところ、
「還暦なんて言うなよ、そんな気持ち全くないから!」と
一喝されてしまいました。
ちなみに、厚岸ではホームの工事で狭くなってしまったために、
立売がやりにくくなって、ご主人はウズウズいる様子…?!
最近の駅弁の売り方にも、一家言お持ちのようでした。

話し込んでいるうちに、釧路行の列車が入線…。
またも乗り遅れるところでしたが、よかったぁ。
駅員さんが融通を利かせてくれ、待っててくれました!
ラジオという「音」にこだわる仕事をしている者にとっては、
氏家さんの「立売り」の話は、興味深い限り。
来てよかった! 
やっぱり、駅弁は現地で買うもんです。

■旅のワンポイント〜厳寒の北海道U・SLで見に行くタンチョウヅル

かつては全国各地を走っていたSL。
そのSLが、近代化の波の中で姿を消したのは、
今から30年あまり前、昭和50年の12月の北海道でした。
でも、あの無骨な車体、力強い走り、風情のある音には、
世代を超えて、人を惹きつける魅力があります。
昭和54年の山口線における「SLやまぐち号」を皮切りに、
国鉄民営化以降、JR各社で復活運転が行われてきました。
北海道では、小樽〜ニセコ間で昭和63年から「C62」が
運転されていましたが、1995(平成7)年に運行終了。
しかし、99(平成11)年にNHKの朝のドラマ「すずらん」と
連動する形で「C11」が復活しています。



釧路から釧路湿原を貫いて、網走を結ぶ釧網(せんもう)本線。
この釧路と標茶の間で、2000年から冬の間に走っているのが、
「SL冬の湿原号」(全車指定席)です。
私が訪れた日は、きれいに晴れ上がって、
空の青、雪の白、SLの黒のコントラストが映えました。
この「C11 207号機」は、日高の静内で保存されていたもので、
ライトが「2つ」付けられているのが特徴です。






むき出しの機器類が、実にメカニック。
そして、その下で赤く燃える炎。
これぞSLのパワーの源です。
ホームには、発車のおよそ30分前には入線し、
撮影を希望する乗客に応じています。
時間があれば、車掌さんがカメラマンになって、
SLをバックに写真を撮ってくれます。






「冬の湿原号」の各客車は、
昔ながらのだるまストーブで暖められています。
また、2号車の旧型客車は「カフェカー」。
ホットコーヒー(300円)などが飲めるほか、
スルメを販売していて、これをだるまストーブで
焼いて食べてもOK!
となると、ドリンクは酒の方がいいかも!?



釧路駅では、今どきのベルやメロディではなく、
昔の駅のように、駅員が鐘を鳴らしながら発車時刻を告げる、
心憎い演出。
気持ちが高まった所に、ポォーッとなる汽笛、
ガクンという客車列車独特の衝撃。
こりゃ、たまらん!
いよいよ1時間15分のSLの旅が始まりました。






白い蒸気と、時折黒い煙を吹き上げて、
釧路を間もなく渡る大きな川は「釧路川」。
水源は屈斜路湖で、釧路湿原の中を
蛇行しながら流れてきます。
この辺りでは、夏場はゆったり流れていますが、
冬場はやはり凍てついていますね。



釧路川の水門が見えてきたら、
釧網本線から見える釧路湿原のビューポイント。
車窓からは、なかなか広い湿原を一望することは
出来ないもので、広大な風景を眺めたい場合は、
途中の釧路湿原駅や塘路駅などで途中下車して、
展望台に登ることをお薦めします。



釧路川が完全に凍るのは、珍しいことなんだとか。
目を凝らすと、氷の上には無数の足跡が…。
コレ、みんなエゾシカの足跡!
「冬の湿原号」の車掌さん曰く、
「警笛が鳴ったらシカがいると思ってください」とのこと。
実際、線路の上でノンビリしているシカの群れがいることも
しばしばで、列車によっては何度も急停車することも…。






「冬の湿原号」の最後尾には、かつての貨物列車で
「車掌車」と呼ばれていた車両が連結されています。
ここでは湿原の自然を解説する「SLネイチャー講座」が
行われているほか、最後尾のデッキも開放されています。
氷点下10℃近い空気に包まれて、白銀の世界の中にひと際光る、
ふた筋の光を眺める…。、
厳しい寒さを忘れて、ホント気持ちいい!



さて、今回の第一目的は、国の天然記念物、
タンチョウヅルを見ること。
駅の近くに営巣地があることから、
ツルが見られる駅として有名な茅沼駅で
途中下車してみましたが…、残念ながらいない!
そんな時は、時間つぶしに、駅を出て右手に
15分ほど歩いてみましょう。



左手にシラルトロ湖が見えてくると、右手には
「くしろ湿原パーク・憩の家かや沼」が見えてきます。
ここの温泉で、冷えた体を温めてもらうことに致しましょう。
日帰り入浴は、400円で東京の銭湯並み。
結構、小奇麗な作りでリーズナブルに宿泊も出来ます。
http://www.kayanuma.info/



毎分450リットル、動力揚湯されているお湯の
泉質は「ナトリウムー塩化物泉」。
湯温は「47.2度」でチョット熱めのため、
一部の浴槽を除いて加水されていますが、
全てかけ流しにされているのは嬉しい限り。
遠くに湿原の雰囲気を感じながら、
雪見風呂というのは、おつな感じでしょう。



塩っぽいお湯でしっかり温まって、戻ってみると…、
いました!国の特別天然記念物・タンチョウヅル。
昔からアイヌの人たちに「アシ原の神」と呼ばれて、
親しまれてきたといいます。
実に気品のある優雅な姿。
見ているほうまで厳かな気持ちになってしまいそうです。



再び列車に乗り込むと、列車の音にツルは驚いたか、
美しく羽ばたいていきました。
飛ぶ姿もまた美しいもの。
雪原を舞うツルほど美しいものはないですね。

SLに満足、お湯に満足、ツルに満足!
厳しい寒さの中で、冬の湿原は、
心を暖かくしてくれます。





2006年2月13日(月曜) 函館編2

寒さ厳しい、今年の冬。
家から外に出るのも億劫になる。
でも、避けて通れるはずのない、この寒さ。
どうせ寒いのなら、いっそ本当に寒い所に行ってしまえ!
半ば開き直りの気持ちで目指した北の大地。

今回から暫くの間、駅弁膝栗毛は「厳寒の北海道」と題して、
北海道の駅弁を紹介します。
1回目はかつての北海道の玄関、JR函館本線・函館駅です。



東北新幹線の八戸開業で、東京〜函館間はだいたい6時間。
JR東日本が発売している割引きっぷ「三連休パス」も
函館まで利用可能なエリアに入っているので、
時間が許せば、鉄道で函館往復するのも悪くないでしょう。
※「三連休パス」…3連休にJR東日本全線と函館までの
 新幹線・特急自由席が乗り放題。4回まで指定席も利用可能。
 普通車用:26000円、グリーン車用:30000円。
 函館まで単純往復・35000円程なのでお得度は高い。
 詳しくは、JR東日本のHPで。

http://www.jreast.co.jp/tickets/info.aspx?mode=top&GoodsCd=824
http://www.jreast.co.jp/tickets/info.aspx?mode=top&GoodsCd=827






函館駅は、2004年8月以来の紹介です。
きれいな駅舎は、2003年に建替えられたばかり。
駅弁は「みかど」さんが、販売しています。
メインの駅弁売場は、改札を抜けて右前方。
特急の発着時には、ホームで台車による販売があります。
場所はたいてい、ホームの改札寄り(行き止まりの方向)。
本州〜北海道乗継の場合は重宝です。



トンネルを模したアーチ型の経木容器が特徴的な
「青函トンネル弁当」(1050円)。
50キロを超える世界最長のトンネルは、
乗っていると飽きが来るものですが、
弁当の方は、豊富なおかずで飽きさせないのが特徴。
特に青森を意識したりんご入りのサラダが、
いいアクセントをつけています。(ドレッシング付)
特急「スーパー白鳥」号が描かれた掛け紙は、
2002年以降、リニューアルされたものです。



居酒屋チェーンのような駅弁「北の家族」(1050円)。
中味は、青函トンネル弁当と重複する所が多いですが、
同じ値段でどうしても白いご飯を食べたければ、
こちらを選択か!?



うにといくらを、目いっぱい食べたい場合は、
「うに・いくら弁当」(1260円)。
勿体ぶって、ウニを後回しにしようとすると、
ウニが「余る」という嬉しい問題に直面する可能性も。
ただ、どんなに頑張っても味覚は2種類なので、
ウニ・イクラだらけの弁当に出くわした喜びで食べきるか、
ウニとイクラのバランスを食べながら考えるか…。
その辺りは、お好みでどうぞ。



「北海道、まずはカニ!」という方が選びやすい
「かに寿し弁当」(840円)。
ただ、これから北海道の旅行を始めようとするなら、
この弁当は、選ばないほうが賢明。
もし選んでしまった場合、行く先々でカニ、カニ、カニ…
なんて事も起こり得ます。
これ以上、北海道には踏み込まない。
北海道に来たけどカニを食べ忘れた…という方は、
積極的に選んでください。
函館のカニは、北海道・カニ駅弁の最終ストッパーです。



観光で来た場合、函館では朝市で、または温泉宿で、
必ず魚介類を味わうはず…。
「駅弁も魚じゃあ…」というのがホンネでは!?
そんな方は、異色の「とん唐弁当」(840円)がお薦め。
道南の地場産品、八雲ポークを使っているのが特徴です。
豚肉の唐揚げというのは、なかなか無かった味わい。
意外といいです、この弁当。

かつての「北海道の玄関」としての、
意地とプライドが感じられる函館の駅弁。
札幌まで3時間、八戸まで3時間の長丁場。
旅の供に欠かせません。

■旅のワンポイント〜厳寒の北海道T・函館

どうしてか、人の心を解き放つ港町。
異国情緒、活発に行き交う人々、
潮の香り、カモメの鳴き声、霧笛…。
横浜、神戸、長崎、そして函館も例外ではありません。



東京から東北新幹線「はやて」で3時間。
八戸で待ち受けていたのは、
JR北海道のコーポレートカラーにつつまれた
特急「スーパー白鳥」でした。
最高時速で140キロで、八戸から青森までは1時間。
函館までは途中、単線区間があるため3時間を要します。



青森駅を過ぎて、蟹田駅の近くでは津軽海峡が望めます。
♪上野発の夜行列車降りたときから 青森駅は雪の中…♪と
「津軽海峡冬景色」では歌われましたが、
今や、上野発青森行の夜行列車は「あけぼの」号1本のみ。
青函連絡船も無くなって18年になろうとしていますが、
♪北へ帰る人の群れは 誰も無口で…♪というのは、
冬場に函館行の特急に乗ると、いつも感じること。
まあ、東京からの乗車時間が4時間を超えて、
疲れを感じて始めているというのが本当のところか。


♪ごらん、あれが竜飛岬と…♪と船旅では言えたのでしょうが、
今では、手前から青函トンネルに入ってしまいます。
「せめても…」という方は「スーパー白鳥」の最前部にある、
展望窓でトンネルに入る瞬間をチェックしてみては…。
凡その入る時間は、車内放送で教えてくれるほか、
デッキ上にある電光表示での案内もあります。
北海道側の入口に、当時の中曽根総理、
本州側は、当時の橋本龍太郎運輸大臣によって書かれた
「青函隧道」という文字。
青函トンネルが国を挙げたプロジェクトであったことを
否応なしに感じさせます。



「八戸〜函館の3時間はやっぱりつらい…」という方は、
「スーパー白鳥」の「1号車指定席」を指名買いしてみては。
1号車は、グリーン車と普通車指定席が半々になっていて、
どちらの席にも電源用コンセントが用意されています。
ノートパソコンがあれば、3時間でひと仕事できますし、
DVD鑑賞でも快適なひと時。
長旅になる場合は、携帯電話の充電に使ってもいいでしょう。






函館といえば、函館山からの夜景もいいですが、
市街地のイルミネーションもなかなかのものです。
まずは函館を代表する観光スポット「金森赤レンガ倉庫」から。
明治20年に函館で初めて開業した営業倉庫で、
今では、ウォーターフロントとして再開発され、
沢山の店が入居、多くの観光客で賑わっています。



函館も「坂の街」。
画像の「ニ十間坂」は、名前の通り、
二十間(およそ36メートル)という華やかな坂です。
かつて、函館では何度も大火が起こっていたために、
防火帯として作られたといいます。



函館で、最も異国情緒を醸し出しているのが教会。
左手に見えるのが、国の重要文化財「ハリストス正教会」。
日曜の朝10時に鳴る鐘の音から、
地元では「ガンガン寺」と言われ、
日本の音風景100選にも選ばれています。
思えば、東京・御茶ノ水のニコライ堂の鐘の音も、
「ガンガン…」と派手な音が鳴り響いていました。
正教会の鐘は、結構にぎやかなんですね。
そして、右手に見えるのが「カトリック元町教会」。
大正13年に作られたエキゾチックな建築と
日本の教会で唯一、ローマ法王から直接贈られた祭壇が
見ものです。



明治43年に出来た洋風の建築物「旧函館区公会堂」。
かつては明治天皇・大正天皇の宿舎としても使われたといいます。
国の重要指定文化財に指定された今も、
コンサートホールとして市民に親しまれているそうです。
中の「ハイカラ衣装館」では、昔の洋風衣装を着て、
自由な写真撮影が可能とのこと。(今年は3月25日〜)
旅の思い出作りにはピッタリでしょう。



以前もご紹介した「市営谷地頭温泉」(380円)。
鉄分を含んだ、塩っぽい赤いお湯が特徴的です。
湯温が熱めなので、冬場の露天風呂は最高!
五稜郭に因んだ五角形の露天風呂では、
旅の風情を感じながら温まることが出来ます。



旅行通が訪れる「市営谷地頭温泉」へのアクセスは、
函館の足・路面電車。
20時以降は、谷地頭電停の本数もかなり少ないので、
事前に発車時刻をチェックしてから温泉に入ることを
お薦めします。

さあ、北海道の旅はこれからが本番!
次回は、道東の名駅弁を紹介します。



Copyright(C) 2005 Nippon Broading System,Inc,All Reserved.