旅行大好きな、新米ライター望月が、
実際に食べた「駅弁」と、実際に出かけた「小さな旅」を紹介します。
お出かけの時の参考になれば(?)幸いです。





2005年2月28日(月曜)

九州シリーズ第3弾は、長崎第2の都市・佐世保。
今回の駅弁膝栗毛は、JR佐世保線・佐世保駅の紹介です。



2002年、高架になった佐世保駅。
ホームからは港が望め、潮の香りがします。
博多〜佐世保間は、特急「みどり」号で1時間45分ほど。
県都・長崎市からは大村線の快速「シーサイドライナー」で
こちらも1時間45分ほどです。



実は佐世保駅は、全国のJRの駅で最も「西」にある駅。
国鉄時代、最西端の駅は、松浦線の平戸口駅でしたが、
89年、第3セクターの松浦鉄道に転換されたことによって、
「JRとして」は、佐世保駅が最西端の駅となりました。
ちなみに現在、最西端の駅は03年、沖縄・ゆいレールが
開業したことによって「那覇空港駅」となりました。
(鉄道としては今も、松浦鉄道・たびら平戸口駅が最西端)



佐世保駅弁は「松僖軒」が、製造・販売しています。
売場は、改札を抜けて、正面の奥まったところにあり、
食堂と一緒ですが、少し見つけにくいです。
営業時間は、朝8時から売り切れまで。(追加製造なし)
たいていは、午後にもありますが、
お昼時で売り切れることもあるので、
どうしても欲しい場合は、予約が肝要ということです。



佐世保の名物駅弁は「あごめし」(700円)。
この「あごめし」とは、平戸の名物料理で、
「あご」とは、現地の言葉で「とびうお」のこと。
「とびうお」の駅弁は、全国を探してもここだけでしょう。
「あご」の卵は、結構プチプチ感があり、
だしの効いたご飯で重すぎず、リーズナブル。
老若男女、気楽に楽しめる駅弁です。
最近は、駅弁大会にも登場しているので、
首都圏でも意外と簡単に、味わえるかもしれませんね。



「二色弁当」(900円)も食べてみました。
基本は幕の内ですが、白いご飯は通年で、
もう1つのご飯は、季節ごとに変わるそうです。
かなりボリュームがあります。

最近は米軍直伝の“バーガー”がブレイク中の佐世保。
そんな佐世保にも、伝統の駅弁が息づいています。



■旅のワンポイント〜シーサイドライナーで行くハウステンボス



肥前山口から佐世保へ向かうJR佐世保線は、
途中の早岐(はいき)駅で、列車の進行方向が変わります。
実はこれ、長崎本線の成り立ちと関係していて、
現在、鳥栖〜長崎間を結んでいる長崎本線のうち、
有明海を望みながら走る肥前山口と諫早(いさはや)の間は、
後になって開業した区間。
それ以前は、肥前山口〜早岐〜諫早と経由して
佐世保とは反対の、長崎へと向かっていたんですね。
今は、肥前山口〜佐世保間が「佐世保線」。
早岐〜諫早間が「大村線」となって、
快速「シーサイドライナー」号が、1時間ヘッドで運行、
長崎〜佐世保を結ぶローカル輸送の一翼を担っています。



大村線の快速「シーサイドライナー」は、その名に違わず、
大村湾に沿って波打ち際を進んでいきます。
特に大村〜早岐間がビューポイント。
長崎から佐世保に向かう場合、進行方向左側に着席するのが
基本といっていいでしょう。



この建物が見えてきたら、ヨーロッパを模したテーマパーク、
人気の「ハウステンボス」に到着です。
(博多から直通の特急「ハウステンボス」号も運行してます)
今回は、ちょっとのぞいて見ることに致しましょう。



花畑の中に立つ巨大な風車。
こんな場所に立ったら、気分はもうヨーロッパですね。
写真好きの方なら、花の写真や景色の写真をたっぷり撮って、
1日中飽きることはないでしょう。



敷地内の運河には、遊覧船も浮かべられ、ぐるっと一巡り。
スローな旅を楽しむにも、持ってこいですね。






この時期は、一面のチューリップ畑。
ちょうど今「ハウステンボス」では、4月10日まで
「チューリップ祭り」を開催しています。
詳しくは「ハウステンボス」のHPをチェックしてみて下さい。

※「ハウステンボス」ホームページ
http://www.huistenbosch.co.jp/top.html

実は今回紹介している「ハウステンボス」の画像は、
去年、この番組のツアーで訪れたときのものです。
ひょっとすると今年は、異なる可能性もありますので、
あらかじめ、ご了承ください。



そんなわけで、このツアーの時に撮影した未公開画像も…。
渦潮で有名な「西海橋」。
近くの「西海橋コラソンホテル」敷地内からの
夕焼けもご覧いただきましょう。

長崎・佐世保は、これから春がベストシーズン。
思い切って旅立つのも、悪くないですよ。



2005年2月20日(土曜)



JR長崎本線・長崎駅の2回目。
今回は、新作駅弁を中心に紹介します。



こちらは、2番ホームの駅弁売場。
0番・1番ホームも、欠き取り式で作られているので
この売場の前を通っていくことになります。
特急列車の台車売りも、ここをベースに動いています。



こちらは「鯛めし弁当」(850円・御飯)。
1月に行われた“元祖駅弁大会”、
京王百貨店の「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」でも
目玉商品として取り上げられた逸品です。
駅弁としての販売は、去年からと日は浅いものの、
だしの効いたご飯に、鯛も食べ応えのある味。
全国の「鯛めし」駅弁でも、トップクラスでしょう。
「御飯」は、ここ10年近く人気店として、
長崎市内では有名で、通信販売も手がけています。



こちらは、1月新発売の「鯨カツ弁当」(750円・くらさき)。
「地元の味を将来に伝えたい」というコンセプトの下、
1日10個の「限定」で販売されることになりました。
とても口当たりはよく、口の中では独特の味が広がります。
こちらも専門店の味で、上の世代にとっては懐かしい味。
若い世代にとっては新しい味かも知れません。
入手は、駅の2つの売店を、両方回るのが基本ですが、
「くらさき」(0120-094083)への予約が無難かもしれません。

ここへ来て、地元の名店が新規参入してきた長崎駅弁。
これから、春の観光シーズンに向けて要注目です。


■旅のワンポイント〜新米ライター望月の“長崎ぶらぶら節!?”

「リピーターの多い街」長崎。
港町ならではの開放感、出島以来の異国情緒。
そして、長崎をめぐる名曲、名著の数々…。
旅人たちの心をつかんで離さない魅力があるようです。
そこで今回は、新米ライター望月が、そんな長崎の街を、
“ぶらぶら”と歩いてみたいと思います。



長崎へのアクセスを担うのが、特急「かもめ」号。
2000年に投入された振子式の885系電車が、
博多〜長崎間を、最速1時間45分で結びます。



フローリングの床に革張りの座席。
「自由席」でも、このハイレベルな座席なんです。
グリーン車に至っては、独立3列シートの座席。
ハイグレードなJR九州の特急列車を象徴するのが、
この特急「かもめ」号です。
長崎への旅気分は、一気に高まります。



長崎の街は、路面電車で回るのがベターです。
1回乗車に付き、ワンコインの100円。
1日乗車券でも500円と、とても乗りドク!
さらにお得なのが、1日乗車券に1000円プラスで
7つの観光施設に入場できる「長崎観光パスポート」。
グラバー園・大浦天主堂・孔子廟・出島資料館に、
原爆資料館まで、観光スポットはほぼ完全に網羅。
必ず、駅の観光案内所で購入してから、
長崎の“ぶらぶら歩き”はスタートです。



まずは、南山手エリアの「大浦天主堂」に向かいます。
日本最古の木造ゴシック建築で、
「国宝」にも指定されています。
1864年に出来た教会で、長年、幕府の弾圧に耐えながら、
密かに信仰を続けてきた人たちが、
開国によって、日本に入ってきた宣教師の下に集結。
日本におけるキリスト教が復活した場所でもあります。






「大浦天主堂」の隣にあるのが、港町・長崎を堪能できる
ビューポイント「グラバー園」。
スコットランド出身の貿易商・グラバーの旧邸で、
園内には、さまざまな洋館が移築されています。
お天気に恵まれれば、潮風に吹かれながら、
気持ちのいい風景が広がることでしょう。



江戸時代、長崎・出島では、
オランダ・中国と、交易が続けられていました。
そんなわけで、長崎には中国らしい雰囲気も…。
「孔子廟」自体は、儒学の創始者・孔子の遺品を
収め祭った場所のことで、中国人によって建てられた、
唯一の「孔子廟」でもあります。
中国歴代皇帝の歴史や、東アジア全体を学ぶことが出来る
なかなかの学習ポイントです。
ま、ここまでまわれば“パスポート”の元は取れた計算です。



「中華街」といえば、関東地方では横浜が有名ですが、
長崎にも「新地中華街」があります。
路面電車の「築町」電停が最寄で、
横浜と比べると、少々小ぶりですが雰囲気はたっぷりです。



やはり、定番の「ちゃんぽん」は、欠かせないでしょう。
大体ドコのお店も「735円(税込)」が基本料金で、
高級そうな中華料理店でも、リーズナブルに味わえます。
ま、それもそのはずで「ちゃんぽん」自体が、
日本留学中の貧しい中国人留学生のために作った中華料理。
この食べやすい価格こそ、歴史を今に伝えています。
私が入ったのは「会楽園」で、福建省出身の先代が
作った味を日本人好みに改良した味なんだとか。
やや甘口であっさりとしたスープが特色と評判です。



お腹を満たしたら、港町の夜景を楽しみたいところ。
カメラ好きの方なら、夜景モードでバッチリ決めたいですね。
もちろん、カップルで来た方は、ロマンチックモード全開!?
ちなみに、長崎市がやっている「稲佐山ロープウェイ」は、
麓の淵神社〜山頂の往復が1200円です。

この他にも、名所・旧跡がいっぱいの長崎の街。
海外の窓口、港町、原爆が投下された街…。
長崎の街には、様々な「顔」があります。
最低2日はかけて、ゆっくり“ぶらぶら”したいものです。



2005年2月12日(土曜)

新米ライター望月の駅弁膝栗毛は、港町・長崎へ。
今回は、JR長崎本線・長崎駅の駅弁を紹介します。



長崎までは、博多から振子式の特急
「かもめ」号を使って、だいたい1時間50分。
首都圏からのアクセスは、飛行機が専らとなりますが、
東京から新幹線を乗り継ぐと、7時間ほどです。



昔からの長崎駅弁は、旧・日本食堂系の
JR九州トラベルフーズ・長崎事業所が販売しています。
営業時間は、朝7時〜夜9時。
売場は、改札を抜け直進した右手と、2番ホーム。
この他、特急発車ホームでの台車売りもあります。



長崎を代表する駅弁といえば、出島の形をした容器の
「卓袱(しっぽく)弁当」(1300円)。
「卓袱」とは「朱塗りの円卓」という意味で、
高く盛られた和・洋・中華の折衷料理。
身分に関係なくつつき合って、賑やかに頂くのが特徴で、
開放的な港町・長崎ならではの、高級料亭料理です。
特に、和食の代表「天ぷら」の原型に近い、
南蛮料理風のボテッとした「長崎天ぷら」は、
いい味を出していますね。



「中華弁当」(870円)は、ボリュームの多さが人気。
おかずの種類も多く、値段の割にお腹いっぱい!
まさに、中華の「基本」といった感じですね。



「おべんとう長崎街道」(900円)は、小分けにされた
おにぎりが魅力的で、デザートも付いたツワモノ。
量も多すぎず、少なすぎず女性にも、
結構イケるのではないでしょうか。

長崎駅の駅弁は、この辺のラインナップ不動でしたが、
この所は、突如の“新規参入”ラッシュ。
そこで今回は、2回に分けて長崎駅の駅弁をご紹介します。
京王百貨店の駅弁大会でも目玉商品になった、
あの「駅弁」も、登場いたしますぞ!?


■旅のワンポイント〜さよなら、寝台特急「さくら」号
              東京〜長崎・19時間の旅



昨年末、「衝撃的」なニュースが伝えられました。
「2005年3月1日のダイヤ改正で、
東京〜長崎間を結ぶ寝台特急さくら号を廃止する」…。
この「さくら」号は、戦前から「愛称つき」の特急として、
長年にわたり列車番号「1」を与えられた、エース列車。
今でこそ「1」番は、「富士」号に譲ったものの、
現存する定期列車では最長の1350キロを運行する
日本を代表する特急の1つに変わりありませんでした。
廃止の理由は、「利用者の著しい減少」…。
確かに、東京〜長崎間は、飛行機を使えば3時間程度。
新幹線を使っても、7時間あまり。
しかし「さくら」号では、なんと「19時間」。
東京を夕方6時に出て、到着は次の日の昼・1時過ぎ…。
これでは、勝負にならないということなのでしょうか。
そこで今回・新米ライター望月は、この「さくら」号に、
始発の東京から、終点の長崎まで完全乗車。
19時間の旅を味わうことに致しました。



東京駅・10番線の発車は、18時03分。
およそ1時間後に発車する下関行の「あさかぜ」号も、
時を同じくして、廃止されてしまいます。
この「あさかぜ」号は、元祖ブルートレイン、走るホテルとも
呼ばれ、松本清張「点と線」でも重要な役回りを演じた
寝台特急の草分け的存在でした…。



決して人が多いとはいえない、東京駅・10番線ホーム。
現在「さくら」号は、鳥栖まで熊本行きの「はやぶさ」号と、
併結運転しています。
廃止まで1ヶ月となったこの日は「はやぶさ」号が6両、
「さくら」号が5両の11両編成で運転されていましたが、
混み合っていたのは「さくら」号に連結されている
B個室寝台「ソロ」の車両だけ…。



寝台特急の料金体系は、意外と分かりにくいのですが、
乗車券+自由席特急料金+寝台料金というのが基本です。
乗車券は、距離によって異なりますが、特急料金は、
九州や北海道などの場合、大体「3150円」。
これにカーテンで仕切られた開放式B寝台の場合は「6300円」。
A個室(シングルデラックス)の場合は「13350円」追加となります。
お値打ちなのが、B個室の「ソロ」(画像は「さくら」のソロ)。
開放式B寝台と同じ料金で「個室」を利用できるんですね。
もちろん、私も「ソロ」の人となって長崎へ出発です。



ガクンという客車列車独特の揺れと共に「さくら」号は、
東海道新幹線の「のぞみ141号・新大阪行」と同時の発車。
皮肉なことに新幹線なら、その日のうちに博多に到達可能です。
先行く通勤電車のため、速度をそれほど上げずゆったりと、
東海道線を、横浜・熱海・沼津・富士…と下っていきます。
途中の静岡には、20時35分の到着。
ふと目をやると、東京を1時間半後に出た「ひかり327号」の姿が。
「アレに乗っちゃえば、今日中に岡山まで行けるんだよな…」
そんな声が、車内随所から、漏れてきた瞬間でもありました。



静岡を過ぎて21時を回ると、早くも「消灯」の時間。
今どきココまで“健全な”生活を送る人もなかなか居ないもの…。
翌朝6時半過ぎまで車内は減灯され、車内放送もなくなります。
ま、個室はプライベートが確保されていますが、
ずっと籠っているのは、ちょっと退屈なもの。
かつては「食堂車」が連結されていましたが、
山陽〜九州方面の食堂車は、10年以上前までに、
全て営業を取りやめてしまいました。
その中で1晩中明かりが点っている「ロビーカー」の存在は、
とても有り難いものです。
グループ同士で一杯やりながら、1人で夜景を楽しみながら、
思いのままに一夜を過ごす光景が見られました。
(このロビーカーも、3月以降は廃止となります)



無人の開放式B寝台…。
寝台列車の全盛期は、この開放式で3段寝台が主流でした。
しかし、新幹線の開業や飛行機の発達で、30年ほど前から、
2段式の寝台が主流となり、15年ほど前からは、
個室寝台が人気となってきていました。
しかし主な寝台のほとんどは、旧態依然の開放式のまま…。
旅慣れた人間なら、この開放式の味わいもおつなものですが、
見ず知らずの人間が、カーテン1枚向こうにいるとなると、
今の時代、ちょっとビギナーを獲得するのは難しいでしょう。
九州方面の寝台列車は、東日本・東海・西日本・九州と、
4つのJRにまたがっているのが、体質改善のネック。
通勤を重視する東日本、新幹線に乗せたい東海、
九州内の特急を高速で走らせたい九州、その狭間の西日本…。
それぞれの思惑がぶつかり合って、寝台列車はほとんど
「手付かず」だったといっても過言ではありません。
結果、今なお寝台列車には、昭和後期の空気が漂っています。



消灯と前後して、いつしか眠ってしまった私・望月。
翌朝目覚めると、新山口(7:33着・かつての小郡)でした。
外は雪国を走っているような、一面の銀世界…。
この日は西日本を中心に、大荒れだった日です。
下松(くだまつ)から、終点の熊本・長崎までは、
「立席特急券」での乗車もOKで、都市間輸送にも従事します。



東京から14時間半の本州最西端・下関(8:33着)で、
牽引機関車の交代が行われます。
本州内は「直流」電化ですが、九州は「交流」電化。
関門トンネルは、両方に対応した機関車で走行し、
九州に入った門司(8:46着)で再び、機関車が交換されます。



直流用は「青」交流用が「赤」となっているJRの機関車。
付け替え作業は、退屈になりがちな、長旅のひとコマに、
アクセントを付けてくれます。
列車からは、乗客がホームにやってきて、ギャラリーとして、
付け替える様子を見守ります。



ブルートレインには荷物室も併設されており、
各駅の間で新聞の輸送も行われています。
私がのぞいた下関では、ちょうど「サンケイスポーツ」が、
積み下ろされているところでした。
このブルートレイン便も、今月いっぱいで終わります。



イベントが終わったら、部屋で遅めの朝食…。
下関のホームで購入した「幸福(ふく)来る弁当」(800円)を
いただくことにします。
この他、朝は徳山(6:52着)〜博多(9:54着)間で車内販売があり、
各駅で積み込んだ駅弁や、ホットコーヒーなどを扱っています。
私も新山口の「あなごめし」をいただきましたが、
こちらの紹介は、また機会があれば…ということで。



佐賀県の鳥栖(10:20着)で「はやぶさ」号と分割。
先に発車する「はやぶさ」号・熊本行を最前部で見送ります。
「さくら」号は、ココで17分の小休止。
電車特急を先に通したり、乗客は昼食用の駅弁を調達したり、
分割作業のほかに、色んなことが、15分あまりで行われます。
こちらの駅の駅弁も、改めてご紹介しますよ。



わずか5両と身軽な単独編成になった「さくら」号は、
長崎本線を、終点の長崎に向けて3時間あまりのラストスパート。
肥前山口で佐世保線を分け、肥前鹿島〜諫早間では、
車窓に有明海の風光明媚な景色が広がります。
ま、この間も、電車特急を先に通したり、単線のため、
対向電車と行き違ったりと、足取りはかなりノンビリとしたもの。
電車特急で2時間弱の博多〜長崎間を、1.5倍以上の、
3時間あまりをかけて進むんですね。
乗客もまばらになり、日も高くなって、車内には何ともいえない
気だるい雰囲気が漂い始めるのもこの頃…。
ひょっとすると日本における最も贅沢な時間の使い方ではないか…?
そんな思いが、ふと、脳裏をよぎりました。



東京から19時間…(この日はダイヤが乱れて19時間40分あまり)、
閑散とした車内に、客車列車独特のオルゴールが流れて、
寝台特急「さくら」号・1350キロの旅は、終わりを告げました。
正直な感想は「長いけれどあっという間」…。
日ごろゆっくり読めない、本を読む時間に充てたり、
普段眺めることのない景色を堪能する、贅沢なひと時でありました。
しかし、そんな旅の余韻に浸る間もなく、長崎駅に降り立った私は
地元放送局の記者の皆さんに囲まれることとなりました。
「さくら」号のヘッドマークが、前日に盗まれたというニュース。
コレクションにしたいのか、それとも高値で売り飛ばしたいのか?
結果として、既に予備のマークもないため、最終日の直前まで、
「さくら」号は、ヘッドマークなしで走ることになってしまいました。
犯罪は犯罪、憤りばかりが募る出来事であります。



夜から朝、そして昼と19時間にわたって、1本の列車で過ごす。
部屋の一夜の主として、去りがたい気持ち。
そしてホームに降り立てば、少し西に傾き始めた太陽…。
またとない貴重な体験でありました。
こんな経験が出来るのも、今月いっぱい…。
最終列車のチケットは、1分で売り切れたといいます。
「こんな状態が毎日なら、廃止されることもなかったろうに」
関係者からは、そんな声もチラホラ聞こえますが、
魅力ある列車に育てようとしていたのか?とも思います。
北海道行の寝台特急は、個室化と高級化路線が功を奏し、
チケットの取りにくい人気列車になっているのは、周知の事実。
大阪〜札幌を結ぶ「トワイライトエクスプレス」号にいたっては、
「さくら」号より長い22時間を要しても、人気です。
また、ビジネスユースの多い四国・山陰方面には
全車個室の「サンライズ」号が、一定の人気を得ています。
九州方面とて、もう少しテコ入れがあったならと思うのは私だけでしょうか。
港町・長崎まで、食堂車でゆったりディナーを楽しみながら、
1日近くかけて、スローな旅を楽しむ列車…。
またはビジネス向けに、電源・無線LAN完備の個室列車など、
新規需要開拓に、何らかの打つ手はあるはずです。
3月から1往復だけ残される「富士・はやぶさ」号が、
今回の「さくら」「あさかぜ」号と同じ運命をたどらないよう、
切に願いたいところです。