『みにくいシュレック』
"SHREK!"
ウィリアム・スタイグ 文・絵
おがわえつこ 訳
セーラー出版 1991年
〜人生は自ら切り開いていくもの〜
|

|
●ストーリー●
醜い両親から生まれたシュレックは、両親よりもっと醜い子。年頃になると、
両親はシュレックを旅に出します。くさいにおいをまき散らし、ずんずん進ん
でいくシュレック。花や木がのけぞってよけるのを見てうれしくなります。や
がて林の中で魔女に出会います。魔女の占いでは、「おまえは王女をめとる。
おまえよりもみにくい王女を」と。それを聞いたシュレックは大喜びで王女を
探しに向かいます。その先には数々の困難がシュレックを待ち受けているので
したが……。
●この絵本の力●
物語によく見られる「外見は醜いけれど、心はとても優しい……」と言った
ような美しい物語とは程遠い絵本です。本書の主人公のシュレックは外見どお
り心も醜いのですから。あまりの恐ろしさに、人やけものもみんな逃げ出して
しまうほど。稲妻や雷は食べられ、ドラゴンもいちころです。野原で子供たち
が抱きついてきたりキスしてくる安らかな夢も、シュレックにとっては悪夢と
なってしまうのでした。ところがこのシュレック、決して自分の醜さを悲観的
にとらえることなく、その事実をありのままに受け止めて、ひたすら前にずん
ずん突き進んでいきます。醜さを長所としてしまい、周りの誰よりも強くなっ
たシュレックはやがて結婚相手を見つけ、立派に自立した姿を見せてくれます。
自分の個性を誇りとし、自分の力で人生を切り開いていく力強いシュレック。
本書を読むとそのパワーを分けてもらえるようで元気な気持ちにさせてくれま
す。「醜い」ことってひょっとして素晴らしいことなのかな?なんて思えてき
てしまうほど、ちょっと不思議でユニークな絵本です。
ウィリアム・スタイグの描くキャラクターたちって、どれもユニークで親し
みが感じられます。他作品の『ものいうほね』(評論者)に登場する「骨」で
さえ、何だか変わっていて魅力的に見えてきてしまって。本書の主人公シュレッ
クもものすごく醜いんだけれど、それを誇りに思っている潔さが気持ちよく、
愛着を感じるキャラクターです。スタイグは“ザ・ニューヨーカー”などで漫
画を描いていましたが、60歳を機に子どもの本を描くようになったようです。
スピルバーグによって映画化(アカデミー賞最優秀長編アニメーション賞など
を受賞)までされた「シュレック」。子どもだけでなく大人も大好きになるこ
と、間違いなし!
●心に残る場面●
「みにくい両親から生まれたシュレックは、両親よりもっとみにくい子でし
た」という素敵な書き出しにあるとおり、シュレックの両親もかなり醜いです
よ。「両親にけとばされ、シュレックは旅に出ました」というページでは、本
当に両親が笑いながらシュレックを蹴っ飛ばして送り出す姿が描かれています。
うーん、「この親にしてこの子あり」! とってもおかしくって思わず笑って
しまう場面です。
|