●ストーリー● ●この絵本の力● まだまだ子供のパイパーは、母親の愛情を必要とする一方、早く大人になり たいという気持ちが高まる難しい年頃。大人になりたいのに母さんはいつまで たっても子供扱い。この母と息子の難しい関係を軸にさまざまなキャラクター が登場します。父さんはとても出来た人(いえ、ネコですね)。二人の立場を きちんと理解し、さり気なく実にスマートに息子にアドバイスします。この 「さり気なさ」が素晴らしい。それから、けがの手当てを容赦なくする大胆な 衛生室の看護婦さんや、母さんに向かって怒鳴るパイパーをぴしゃりとしかる タクシーの運転手。いろいろな人と接することで、パイパーの心には確実に何 かが刻まれていきます。成長するってそういうことなんですね。そして、どん な愛でも同じように、一緒にいると愛情の暖かさに鈍感になり、離れると何だ か寒くなって寂しくなるもの。そんな心情を経験したパイパーは、一つ大人に 近づきます。 『すてきな三人組』(偕成社)などで知られるトミー・ウンゲラー。絵が本 当に上手! 画家に向かってこのほめ言葉はないですね。なぜか親しみを感じ るウンゲラーの絵は、これだけ上手に描ければ人生さぞ楽しいだろう、と思え てくるのです。黒い表紙が魅力的な本書。本編は薄いアイボリー地に丁寧で柔 らかな鉛筆画で描かれています。絵といい文といい、登場するものすべてが生 き生きとしていて、その一つ一つに愛着がわいてきます。悪さばかりするパイ パー、息子を溺愛する母さん、よく出来た父さん、パイパーの仲間、衛生室の 看護婦さん、タクシーの運転手。それぞれが丁寧に魅力的に描写されている本 書は、ユーモアたっぷりの、すてきな絵本に仕上っています。 ●心に残る場面● |
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