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大気汚染防止法によるダイオキシンの規制強化。 でもまだ問題                            






 97年8月25日 夕刊各紙

A君:廃棄物の焼却炉からかなり出ているとされているダイオキシンに対する規制がやっと厳しくなります。小規模な焼却炉に対しても規制が加えられます。新設炉にはこの12月から、既設の焼却炉に対しては5年後に新設炉よりはやや緩い規制がかかることとなり、現在の暫定基準である80ng/立米という値よりは大幅に厳しくなります。全体として、排出量削減率90%を達成したいと考えているようです。

B君:僕も読んだ。しかし、中小の産廃業者は今度の規制は厳しすぎて、合わせるには数億円の投資が必要で、撤退するしかない、と感想を述べていた。野焼きや不法投棄が増えるだけだと言っていた。

A君:テレビで、国立公衆衛生院の田中勝先生も、中型以下の炉の改善は技術的に困難かもしれないと述べておられた。

B君:朝日新聞では、元成蹊大学工学部の飯田芳男先生が、「安くて抑制効果の高い設備の開発が必要。今の技術では、業者の負担が重く、損を回収するために、もっと大量に燃やされかねない。」と意見を述べておられる。

C先生:この問題は「ダイオキシンの排出総量をいかにして抑えるか、そのためには、どのような方法があるか」ということを総合的に解決しないとだめだろう。もちろん、焼却炉の改善は必須で、今回の規制強化は評価できる。しかし、それだけではだめのような気がする。ダイオキシンは化学式からも分かるように、塩素が数多く含まれた化合物だ。だから、焼却する廃棄物に塩素が含まれていなければ、ダイオキシンは原理的に発生しない。まあ、やっかいなのは、塩素はどこにでもあることだ。人体にとっても必須の成分である食塩を考えればすぐ分かることだ。だから、塩素を全く焼却炉に入れないということは不可能だが、塩素が高濃度になる原因を取り除くのは可能だ。

 だから、ダイオキシン対策は、焼却炉の改善だけで終わると思って貰っては困る。何を燃やして、何を燃やさないか、これを総合的判断で決めることから始めるべきだと思う。

A君:現在のところ、科学的なきっちりしたデータが発表されている訳ではないですが、疑惑の渦中にあるのが、次のようなものでしょう。まず、なんといっても塩化ビニル(スーパーのラップ、他の包装材料)、塩化ビニリデン(家庭用のサランラップ、クレラップなど)の両者でしょう。さらに、食品のなかの食塩も可能性がある。次亜塩素酸で漂白された紙もあやしいという人もいます。これらが塩素を含んでいるから主犯格。通常のプラスチック(ポリエチレンやPETなど)も、不完全燃焼を起こしやすいので、共犯。台所からでる水浸しの生ゴミは、焼却温度を下げるので、これもまた共犯。

B君:電気炉によって鉄のスクラップを溶かしているところからもダイオキシンがでるというが、それも塩化ビニルなのだろうか。

C先生:まあ、可能性は高い。なぜならば、鉄のスクラップは自動車などからのものがあるが、自動車の内装材料には塩ビが長い間使われていた。だからその破片が混入していると思える。もっとも、高炉からもダイオキシンが出ているという噂もあるが、それは、コークスの中の微量塩素が原因のような気がする。

B君:塩ビ類は少なくとも焼却炉に入らないような用途に制限することが当然ですね。

A君:それにしても、入り口側の検討をもっと進めて、真犯人を明らかにすることが行われるべきですね。

C先生:実際問題、なぜ入り口側の規制が同時に行えないのか、非常に疑問だ。塩ビ類包装材料はヨーロッパ諸国と同様に禁止。例え禁止になっても、量的には知れているから塩ビ業界への影響もそんなには大きくないだろう。禁止されないまでも、疑惑の渦中に置かれたら、科学的データをもっているのならそれに基づいて積極的に反論をするか、そうでなければ自主規制することが良識ある業界としての当然の責務だ。

 入り口側の検討は必須なのだが、実験が困難だと言う人もいる。ダイオキシンの分析も相当に難しいので、それも問題だ。1件の精密な測定をすると50〜100万円かかるという話もあるぐらいだ。

A君:それはそうとして、入り口側の規制ができないのは、何が問題なのでしょうか。

B君:それはこれまでの廃棄物行政に対する批判が高まると困るからではないだろうか。通産省は塩ビ産業保護という錦の御旗を掲げるだろうし。

C先生:まず、これまでの産業政策の基本は、どんなものでも作って良い、処理はゴミになった段階で考えれば良いということだった。ドイツなどの環境先進国では、その材料を使うときには、どのようにして廃棄処理あるいはリサイクルするかまで考えるようになってきている。日本はまだまだ後進国なのだ。

 ゴミ行政だが、これまでは、ある部分を厚生省が決めてきたと言えるが、ある部分は地方自治体がその自己都合でやってきた。だから、日本全体としてのゴミ処理の統一的なポリシーは全く無かったと言えるだろう。

 環境問題は、小学校などでの教育が極めて重要だと思うが、どのようなゴミなら捨てて良いのか、どんなものは回収して再資源化をするのか、といった教育が現状では不可能なのだ。横浜方式のように、自慢の焼却炉がありますから、資源ごみ以外はなんでもかんでも一括回収&焼却で行きますというところと、我孫子市のように細かく分別して排出というところ。さらには、東京都のようにご都合主義的不燃・可燃2分割回収+資源回収。このように住んでいるところで全く異なる方式でゴミ処理をしていたら、子供に対して何が正しいゴミ処理法なのか、何が正しくないかなどといった教育は不可能だ。ちょっと引っ越しをしたら全く話が変わってしまう。これが日本全体の大問題。

 横浜方式のような一括回収は、携帯電話などのように燃やすとガリウム砒素が燃えて猛毒な酸化砒素になるものの混入が防ぎにくいから、まあ合理的とは言えない。健康食品と考えられている海草の「ひじき」にしても、実は砒素を大量に含んでいるが、メチル砒素という形なので無毒なのだ。しかし、燃やしてしまうとやはり猛毒な酸化砒素になる。

 東京都方式はまあ論外。理論的な根拠が全くないからね。

 そこで結論。やはり完全分別しかないと思う。焼却そのものは、日本のような国土の状況からは仕方が無いし、エネルギー回収ができるというメリットを活かすべきなのだ。完全分別したものを固形燃料化してから、適正に焼却すれば、そんなに高価な処理装置を付けないでも、完全燃焼ができる。高濃度の塩素を出す物質を入れなければダイオキシンもそれほど心配はない。焼却場の数だけれど、スイスは全国で約30個所しかないという。日本でも、自治体が協力して数は減らすべきだろう。立地が難しいことは、地元へのエネルギー供給(温水&電力)などで優遇措置で対処するしかないだろう。ただし、このような処理法は高くつく。そこで、ゴミは有料化せざるを得ないだろう。

 この話も、日本国民として、どのような方法を選択するかといった議論を起こして、そして、コスト負担も同時に議論することが真の解決への道だろう。

A君:現在のようにダイオキシン問題がでたときは、ある意味で日本全体の環境意識を大改革するチャンスだと思いますね。このチャンスを逃すようでは、今年(97年)のジャイアンツみたいなものでどうしようもないですね。

B君:ジャイアンツの選手達はチャンスで全く打てないが、ホームランでなら点が入る。だけど、この問題の関係者はホームランを打てるのだろうか。ジャイアンツ以下なのではないだろうか。

C先生:なかなか厳しい結論だね。両君。