________________

ダイオキシン水田除草剤由来報道の疑問 
   「脇本教授初めて解明」の疑問      98.10.12




朝日新聞 98年10月9日号夕刊 第一面トップ記事

「河川ダイオキシン汚染、水田除草剤が主原因。愛媛大学グループ調査。」なる記事が出た。それによれば、水田で使われていたクロルニトロフェン(CNP)、ペンタクロロフェノール(PCP)が原因だと考えられる河川水の汚染が見られたとのこと。水田土壌の対策が急務になりそうだ。結論している。

脇本教授らは、昨年7月から9月にかけて、松山平野を流れる河川の25地点で調べたところ、ダイオキシン類の総濃度は1リットルあたり最高で1500pgであり、平均で120pgであった。ダイオキシンの異性体の1,3,6,8,ダイオキシンと1,3,7,9,ダイオキシンが多く、これは起源がCNPであることを意味し、八塩化ジベンゾダイオキシンが多いことはPCP起源であることを意味している。



C先生:さて、この記事だが、実は、そんなことはダイオキシンの専門家でもない私でも知っている。脇本教授がはじめて解明したのなら、私が知っていることが不思議だ。しばらく前のAERAにも類似の記事が出ている。それがいまさらのごとく、なぜ「初めて解明された」という記事になるのか、その疑問を解明してみたいので少々お待ち下さい。しばらく時間がかかるかと思います。


10月14日 21:00

 今現在分かっていること(都合によって、今のところ、情報ソースは書きません)

(1)ダイオキシン農薬起源のきちんとしたデータは、1昨年、横浜国立大学の中西準子先生の研究チームが始めて出した。
(2)それ以後、審査の無い論文などで、そのような可能性をにおわせるものが出始めた。
(3)酒井伸一氏の「ごみと化学物質」岩波新書98年6月22日発行(p87)あたりにも同様の記述がある。
(4)AERAの98年8.10号「農薬こそダイオキシンの汚染源」にも、CNPのことは出ている。ただし、脇本教授が何遍も引用されるために、この記事が何かの証拠という訳でもない。しかし、AERAは、朝日新聞社が発行している。

どうみても、脇本教授が「始めて明らかにした」訳ではないと断定できるだろう。

10月15日 18:00

追加
(5)中西先生達の研究結果の一部は、同じ朝日新聞の2月3日に掲載されているとのこと。(未確認)
(6)中西先生ご本人としては、朝日新聞に対して抗議文を送付されることを検討中とのこと。私も、黒白はっきりさせるために、それが望ましいと思う。
(7)その記事は、朝日新聞大阪支社の社会部の記者が書いたようだが、誰が書いたのかは、公式には明らかにされないだろう。
(8)某新聞関係者によれば、ある大学教授が本当のことを言うのか、それとも、自分の都合の良いことだけを言うのかは、長年つきあっていると、分かってくるとのこと。その意味では、あの記事を書いた記者は、新米だったのかもしれない。
(9)同じソースから、脇本先生のような存在は、多少独断的ではあるが、すっぱりと結論を述べてくれるので、マスコミにとっては、便利。一方、中西先生のように慎重な発言をされる方は、マスコミとしては使いにくい。
(10)私自身の感想、「最近、一部学者は自分の研究が派手に報道されることになれすぎたのではないだろうか」。立花隆氏の「環境ホルモン入門」に、偽学者と本物の学者の見分け方が書いてある。余り派手に報道されることになれてしまうと、偽学者の道を歩まざるを得ないのだろうか。


10月16日 12:00

追加その2
(11)中西先生達のグループは、朝日新聞に正式に抗議をされたようです。朝日新聞の見解は、脇本先生達の研究を「日本初としたことは間違いだった」。責任者、執筆者の氏名も分かったようです。
(12)中西先生のところに、NHKからの取材があって、同行したジャーナリストが最近の環境本の質の悪さについて、「あまりにも同じことが書かれていて、頭が痛くなる」と述べたとのこと。これは本当。皆様、科学ジャーナリスト、サイエンスライター、などという肩書きの人々の書いた単行書を買うのはやめましょう。彼らの活躍の場は週刊誌程度にしておきましょう。


余り真相には迫れなかった。しかし、このぐらいにしてきましょう。

中西先生がホームページを持っておられることを始めて知りました。
余りアクセスが無いようです。勿体ないですから、皆様アクセスしましょう。

http://www.kan.ynu.ac.jp/~nakanisi

です。


追加です。
 愛媛大学の脇本先生の研究室の大学院学生さんから、抗議という口調ではなかったのですが、今回の「はじめて」は、「河川水についてはじめて」であるとの指摘が来ました。確かに新聞にもそのように書かれています。しかし、ものごとには「当然の帰結」というものがあって、「河川水については、はじめて」ということが、「はじめて」に相当しないことは、常識の範囲内のはず。
 そのメールの中に、脇本先生ご自身がそんなことを言うはずがない、との記述が有りました。先生が学生から信用されていることは大変結構なことです。
 しかし、私の彼への返事は、ややきつかった(?)。
H君へ「今回の問題は、いくつかの視点から議論すべきでしょう。まず、大学教官を個人ではなく公的な立場にいる人間として見たときに、マスコミとのつき合い方の意識があまりにも欠落しているということです。すなわち、どのように使われるかを十分承知の上で、自らのデータを提供しているだけでなく、その後のチェックが甘いということです。テレビの放送はチェックが不可能ですから本当に怖いですが、新聞ならば、FAXなどである程度のチェックが可能なのです。ご本人がそんな意図はないといくら言われても、マスコミを自らコントロールするという強い意志が無い限り、結果的にマスコミに魂を売ってしまうことと同義になるのです。」