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多古町「旬の味産直センター」の畑見学記 
             08.03.98







 平成10年7月28日、成田空港駅に朝9:30集合という時間、これは夜型人間には結構きつい時間だったが、「スーパー(コープとうきょう)から出る生ゴミのコンポスト化研究会」のメンバー約10名で、多古町「旬の味産直センター」の畑を見学した。「しんのみ畑」、どうも「みそ汁の実」、「しるのみ」、「しんのみ」となまったようで、農家が自家用で栽培する無農薬、有機栽培の作物を消費者に届けるという心意気で始めた活動。ただし、これから述べるように、消費者に渡っている野菜類は、無農薬野菜ばかりではない。欺瞞的? いえいえ、不可能なものは不可能。「旬の味」のグループが供給している野菜は、現在の農業が作ることができるベストに近いものであることはおそらく事実。安心して食べてください。


C先生:久しぶりに土の上を歩いた。靴が土に汚れてみて、どうも軟弱化している自分を再発見。

A君:成田空港の警備は、なんだか今や形だけ整えているという感じですね。関係ないけど。

B君:日に焼けた。

C先生:今回の訪問の目的は、店舗から出る生ゴミをコンポストにしたときに、もっとも環境負荷の低い使用法の検討だ。コンポストにすることが無意味であったら、それ自身を止めることを含めて、ライフサイクルアセスメント的な見地からの検討をすること。現場を見ないと話にならないので、見学した訳だ。まず、第一印象を聞こう。

A君:いくつか新規発見がありました。コンポストに関して言えば、土作りステーションというところで、屋根の下に牛舎に敷いてあったおがくずなどが置かれているのですが、ほとんど匂いがしないこと。むしろ、業務用コンポスターの方が臭うようですね。

B君:現地を見て、無農薬栽培についてほぼ自分の見解が固まった。

C先生:農業も産業規模になると、やはり、自然との調和から言えば不調和なことをしているのだということ。もしも、調和的にやろうとすれば、すべて人力による作業が必要で、労働過重を強いることになることが確認できたように思える。

 
それでは、見学の順序にしたがって詳しく見てみよう。まず、土作りステーションと店舗から出た生ゴミで作ったコンポストのことから行こう。

A君:概要をそれでは説明します。現在土作りステーションでは、牛舎に敷いてあったおがくずなどを屋根のある場所に積み上げて発酵させています。掘って温度を計ると、中心部では恐らく60度ぐらいになっているようでした。ある程度発酵が進んだところで、屋根の下から移動してまた山積みにして、雑草が生えて、みみずが住むようになって使用可能になります。1年程度置くようです。
 最初の計画では、生ゴミからのコンポストは、この土作りステーションに混ぜる予定だったのですが、ちょうど「ふりかけ」みたいな感じになっているので、そのまま使用しても問題がないのではとの判断から、一部はそのまま使用、さらに一部は、「ぼかし」の基材に使うことがテストされています。

B君:「ぼかし」は専門用語だな。最近、農業では細菌商売が流行っている。EM菌がその代表。糖蜜と米ぬかにEM菌を入れて、密閉容器中に30日程度保存する。これを、畑にうっすらと撒いて混ぜ込むと、土壌細菌の活力が上がるという。EM菌は、臭いから判断すると乳酸菌を主成分としていると思われるが、乳酸菌の場合、嫌気状態での発酵のために温度が十分上がらないから、殺菌が行えない。そこで、生ゴミのような病原菌の問題があるような原料をコンポストにするには適していない。米ぬかのように、病原菌の心配がない材料を他の細菌が食べることができるように変質させる作用があるものと思われる。もっとも、30日経過すると、もともと加えた菌はどこかへ消えて、別の菌種になっているというから、どこまでEM菌が効いているのか疑問はあるが。この「ぼかし」の原料の米ぬかはわざわざ購入している。そこで、すでに中間処理が行われている生ゴミコンポストを使用できるだろうという考え方だ。これは経済的にも効果がありそう。

C先生:品川区の給食から作ったコンポストも届いていた。有効利用できる方法を見つけられると良い。特に、米ぬかのようにわざわざ買っている資材の変わりに使えれば最良だろう。まあ「ぼかし」を使うのがいつまで続くかという問題はあるが。


次が、里芋の畑の見学だった。

A君:里芋は「あく」がすごくて、葉っぱに衣服が触るとしみができて、洗濯しても落ちないらしい。老夫婦二人でやっていたが、その衣服がよごれていたのが印象的だった。

B君:この里芋畑は、無農薬の実験圃場ということだった。老夫婦に聞いたら大型の「いもむし」が着くので、ひとつひとつ見つけ次第手で取っているとのこと、これは大変だ。里芋のような根菜を無農薬で作るのは、食べるところが地下の部分なだけに、農薬が残留する可能性は低い。果たして無農薬にする意味があるのだろうか。

C先生:それはそうだ。ただし、次の農家での話だが、「あぶらむし」がある日全面的に付いて、葉っぱが茶色になった。昔なら殺虫剤の出番だったが、今年は無農薬といことで使わなかったところ、数日したら「あぶらむし」がどこかに消えてしまったそうだ。葉っぱは茶色になったが、まあ、そこを食べる訳ではないので構わない。だから、里芋は無農薬でもできる作物であって、それなら無農薬が良いとも言える。

A君:無農薬でやるために、「よとう」なる害虫をフェロモンで誘って退治する器具がぶあさがってましたね。やはり害虫が来ると全滅というリスクが怖いのでしょう。

B君:肥料だけれど、この畑は純有機栽培ということではないのかもしれないが、追肥に使っているのが「有機化成」というものだったのには感心、というより、実質的でない名称に笑えた。窒素、カリ、リンそれぞれ10:10:10という肥料だったが、アンモニア性窒素が8%ということは、窒素分の大部分は硫安かなにかで、有機分(この有機化成では魚粉)は少ないのだろう。当然なのだ、追肥は即効性でなければ意味がない。7月下旬の時点で、有機肥料などを追肥としてやったら、植物は有機物は吸収できないから収穫後に大部分が残ってしまって、河川に流入して公害のもとだ。

C先生:有機肥料だけで栽培をするのも難しいのだろう。微調整が効かない。たまたま道を挟んで、一方が有機・無農薬栽培、反対側が普通栽培ということだったが、有機栽培の方が株の高さがばらついていた。これも当然なのだろう。栄養状態はより不均一なのだろうから。水に溶ける化成肥料の方が当然均一になるだろう。


自家用畑の見学、無農薬栽培の可能性、その他

A君:案内してくださったS氏によれば、無農薬栽培が可能なのは、根菜に限るようですね。それ以外は、「ばくち」。たまたま虫や病気が来なければ良いが、もし来ればアウト。もっとも有機・無農薬栽培がやりやすいのが、「さつまいも」。根菜だし、もともと「さつまいも」は窒素分の多い畑ではできないそうで、すなわち肥料がいらない。しかもうまいことに、「さつまいも」は連作が効く。それでも農水省の基準のように3年間農薬を使わないと、土壌消毒ができないので、線虫がやや心配とのこと。他の野菜よりは容易だとは言っても、「ばくち」的要素は残るようでした。

B君:消費者がより労働集約型かつリスクの多い「ばくち」型になっている無農薬野菜をちゃんと高く買っているどうか、これは問題だ。

C先生:それが問題だろうな。「旬の味」では直販もしていて、1回2100円で月4、5回の配達というのをやっている。これにしても、クロネコヤマトを儲けさせていることは事実だろうが、本当に生産者のプラスになっているのだろうか。
 もともと「旬の味」の狙いは、自家用野菜のように本当に無農薬・減農薬で栽培できたものを消費者の手にということだったらしい。自家用野菜畑もちょっと見せて貰ったが、その特徴は、狭いところに数種以上の野菜が植えられていることだ。

A君:不思議なことは、自家用野菜畑だと、生産用畑では無農薬栽培が99%以上不可能なトマトやキュウリが無農薬でもできる確率が高いこと。

B君:これは確かに不思議と言えば不思議だ。

C先生:プランターを使った家庭菜園のような状態でも、無農薬でトマトやナスはできなこともない。さてなぜだろう。

A君:いくつか可能性が有りますね。一つは、農家としては毎日欠かさず採りに行くし、害虫がついたら手で取って潰せる程度の量だろうから。

B君:単一作物がごく狭い範囲に植えられているから、やられても、被害が少ない。なぜなら、もし害虫が付いても、隣に植わっているのが「ねぎ」だったりすると、虫が「ねぎ」を嫌って、別の作物には移動しないとかね。

E秘書:(お茶を持って来て)今日は、F秘書をご紹介します。

F秘書:こんにちは。B君はじめまして。わたくし、なぜか「ねぎ」が好き何ですよね。だから、虫が付かないのかなあ。

B君:「ねぎ」が好きという虫が来ますよ。

A君:実は僕も「ねぎ」が好きで....何を言うのだ!!! B君は!

C先生:まあまあ、どうも「ねぎ」を植えるのはコツらしい。天然農薬様物質があるのだろうか。まあ、もとに戻るが、自家用の畑のような植え方をすると、害虫が来る確率が低い。確かに有りそうだね。生産用圃場のように均一な生態系だと虫に弱いのは、害虫にやられる確率を上げているからだろうね。

A君:農学部の先生が言ってましたが、均一の生態系というのは、外敵もそれに徐々に適合したものに変わるので、段々と攻撃が強くなる。だから、10年に1度ぐらいの頻度で品種を変えざるを得ないらしい。「さとうきび」の例を出して説明が有りました。

B君:外敵の進化は早いようだ。いくら人為的遺伝子組み替えで虫が食べないトマトを作っても、虫の遺伝子の変化の速度がそれを上回れば意味がないことになる。

C先生:遺伝子組み替えの話になったか。これまでも品種改良という名称で、自然に起きる突然変異を利用して、人間に都合のよい方向への遺伝子組み替えを行ってきた。これを人為的にやれば、品種改良の速度が高くなることは事実。ただ、虫が食べないように変えたトマトを人間が食べるというのは妙ではないのだろうか。それにしても、今の大豆のように、除草剤に対して耐性を持たせるだけの遺伝子組み替えと、今後起きるであろう多種多様な目的での遺伝子組み替えを同一レベルで議論はできないだろう。

A君:環境ホルモンも同様に、すべての物質を環境ホルモンという言葉でひとくくりにするといった単純すぎる考え方は問題ですね。本来すべて各論が必要なはず。

B君:そう言えば、日本子孫基金なる団体が環境ホルモンへの暴露を避けるという意味で、有機・無農薬野菜を売っているという話が聞こえてきました。

C先生:あれまあ。今日の話題に戻ったね。そう言えば、先日、日本子孫基金に送った質問には返事がないね。NGOがNGOを無視するのだろうか。いや我々はNGOだと思われていないかな。
 それはそれとして、環境ホルモンのようにまだ良く分からないものを商売につなげるのは「さすが商売人」だ。しかし、「善意の環境ホルモンNGO」として活動を続けるのなら、無農薬有機野菜で商売をやるのは即刻止めるべきだ。なぜならば、環境ホルモンに関しては、まだ分からないことばかりだ。だから無農薬で栽培したと称する野菜が、環境ホルモンの観点から完全にリスクゼロかどうか、植物エストロゲン問題などもあって、まだ分からない。というよりはリスクゼロであるはずがない。特に、都市近郊で作った野菜が極微量だとは言っても、ダイオキシンで汚染されていない訳はない。これを「リスクゼロ、100%安全」といって売れば、日本の原子力行政の誤りと同様の誤りを犯すことになる。私見だが、現状では、「環境ホルモン<−>農薬」という単純なステレオタイプは近視眼的。むしろ「環境ホルモン<−>ごみ問題」というステレオタイプの方がまだ真実に近いのでは。市民としてとるべき態度は、まず、冷静に状況を見極め、誰に本当のリスクがあるか、どれほどのリスクなのかを考る(大人は大丈夫!?。日本子孫基金ではないが、乳幼児と将来世代に対してはリスクあり? )。そして、ゴミ対策などの日常生活でやれることを考えながら、科学的結論がでるのを待つということなのでは。

A君:そういう生ぬるい態度がNGO的では無いのですよ。

B君:NGOの機能の重要性は認める。告発型のNGOを含めて。しかし、NGOに多い思い込みで止めて欲しいものがいくつかある。(1)無農薬有機栽培リスクゼロ論、(2)石鹸低環境負荷・合成洗剤危険論、(3)水道水危険論などなど。これらの論に共通するのは、リスクゼロの安全な生活があるという思い込み。環境を考える本当の態度は、総体としての環境リスクを少なくすることであって、ある特定の部分のリスクをゼロにすることではない。自分たちが専門とする環境ホルモン、これは例えばの話だが、だけがリスクが高く、これだけを解決すれば良いという独善的な考え方をやめて欲しい。

A君:すべての食品にリスクがある。オレンジジュースにももともとリモネンという発がん物質は入っているし、コーヒーにだってカフェ酸が入っている。食品そのものの発がんリスクを議論しないで、残留農薬を議論するのは無意味です。これが意外と知られていない。

C先生:そろそろまとめよう。これまでの議論で分かったように、トマト、キュウリなどの無農薬栽培は、生産用の畑では無理。キャベツなどの葉菜も同様に無理。可能なのは、さつまいも、さといも、にんじん、その他少々ぐらい。無農薬のトマト、キュウリ、キャベツ、レタスなどは、農家が自家用に栽培しているものを取り上げて売る以外、商品はもともと存在していない。また、自家用を取り上げてしまうのも無残な話。

A君:自家用栽培の方法を拡大して生産しているのでは。

B君:それなら畑を見せてもらえばすぐ分かる。

C先生:自家用栽培方式を拡大するのは無理だろうよ。手が掛かりすぎる。10倍の価格で売れば別だが。まあ、消費者がいくら払う気があるか、値段次第だな。
 市民諸兄諸姉、無農薬野菜を買う前に、その生産者の畑を見に行こう。案内して貰えば、どのぐらい信用できるかすぐ分かる。「旬の味」のグループの志は買える。無農薬だけが意味がある訳ではない。意識が高いので、出荷直前に農薬などを使用するような生産方式をとっていないので、安心して買える野菜だろう。ただし、実際に買っていないので、コストパフォーマンスについては全く分からない。悪しからず。わが家でも購入の申し込みをしてみようかな。