詳細な説明

 日本の健康型問題が若干行き過ぎであると考える理由をご説明します。

 まず、抗菌グッズの流行についてです。最近では、ご存知のように、文房具からトイレに至るまで抗菌のものが良く売れています。抗菌グッズの良い点は何でしょうか。雑菌が口に入る量は減るかも知れません。しかし、逆効果と言えるものがあります。細菌類は、殺菌によって全部が死ぬわけではなく、若干生き残るのが普通です。生き残った菌の子孫は、殺菌剤に対して耐性を持ったものになります。細菌の「種の保存本能」が遺伝子を変えて行くためです。となると、むやみやたらと殺菌剤を使うことは、より強い細菌を作っているようなものです。「院内感染」ということが問題になっています。これは、抗生物質を乱用しすぎた結果、耐性菌が出てきて、病院内で繁殖しているために起きる事態です。
 もう一つの問題は、そもそも人体は、細菌と共生するようにできていることです。多くの細菌と共生している結果、多少害のある菌が人体に入ったとしても、その菌だけがむやみと繁殖することが防止できるのです。ところが、余りにも清潔な環境で育った日本人は、体内の細菌のバランスが狂っていて、感染症に弱くなります。雑菌と共生できるような体を作っておかないと、途上国に旅行をするとコレラにかかったり、日本国内でも最近話題のO−157に感染しやすくなるのです。
 現代人にとって、抗菌剤を利用することは、確かに病気を減らしているかも知れません。しかし、薬が効かない細菌類作って将来世代を危機に陥れているようなものです。

 次に、電磁波問題です。これは、主にマスコミの体質に問題があると思います。現代人の健康指向につけ込んで、「XXXXの恐怖」といった本や記事を売り込もうとして、まんまと成功しているようです。 まず、電磁波ですが、現在特に問題になっている商用周波数(50あるいは60Hz)の電磁波の人体影響がその科学的な証拠が極めてあやしいにも拘らず、一部のマスコミの商業主義、すなわち、一般市民に恐怖を与えることによって、関連する本と商品を売り込むという悪どい手法によって、OL層などに不安を与え、その結果として、本当に体調が悪くなる被害者を作り出し、また結果として自らの懐を肥やしているのが実態ではないかと考えております(このような著者に儲けさせるのはいやなのですが、ずいぶんとそんな本を買ってしまいました。ある本などは、1年間で6版までいっており大変なものです。その著者は医事ジャーナリストということになっておりますが、電流をボルトという単位で計る程度の人です)。 一口で電磁波といっても、それこそ、X線、ガンマ線あるいは紫外線も電磁波ですから、ある種の電磁波に人体影響があることは当たり前の話です。電磁波の質の違 いを十分に説明しないで、不安感をつのらせるように仕組むやり方が共通の手法です。例えば、電子レンジも携帯電話もマイクロ波を使うから、携帯電話で脳の中の水分子が加熱される、といった言い方です。厳密には言えば、電子レンジの周波数は2450MHzで、一般には1000ないし3000MHzの電磁波は、水分子に吸収されやすいから、水分子を加熱できるとされております。携帯電話の周波数は通常800MHzですから、上述の範囲を外れており、まず大丈夫。しかし、最近では、電波の割り当てが不足してますので、1500MHzの携帯電話も存在しております。確かにこれはグレーゾーンかも知れません(このような周波数の違いの説明が出ている本は、まだ見たことが在りません)。
 高圧送電線の場合のように健康に本当に悪い可能性も0ではないかもしれないという主張もヨーロッパを中心としてまだあります。しかし、50あるいは60Hzの電磁波ということが問題であるとしたら、それがそもそも電磁波なのか、という根本的な問題があります。むしろ、電場と磁場が別々に作用すると考えるべき周波数のように思えます。高圧線は、高いものですと50万ボルト送電をやっておりますので、真下では、電場は結構高い値です。実際に、人体などに電場がかかっているだけで、影響があるのでしょうか。これまでの医学では、電場・磁場によって人体の一部に熱が発生するという解釈で実験を行っているようです。熱になるのであれば、人体のある部分でなんらかの位相の遅れが生じなければならない(誘電体のtanデルタに相当)のですが、50あるいは60Hzの電場・磁場にある程度追従し、ある程度遅れてしまうものとは、どんなものがあるのでしょうか。血液でしょうか。それとも三半器官の中の液体でしょうか。 しかし、いずれにしても熱が原因であれば、上述の本が主張するように「見えない電磁波の恐怖」ではないはずでして、人間は熱を感じる能力があると思い ます。しかも、熱には比較的強くできているのが人体であるという気がしますが、皆様の感想はいかがでしょうか。とはいっても、高圧線からは、放電現象によって様々な周波数の電磁波がまさしく出てますから、完全にすべてを否定することは困難です(この程度の記述も、それらの本に出ているのを見たことがありません)。 スウェーデンなどで高圧線の問題を取り上げているのは、やはり、政府の基本姿勢の違いで、具体的には、「誤っているかも知れないが可能性があるもの」に対するリスクマネジメントのやり方が違うからであると考えます。要するに、現在、「電磁波の恐怖」なる本を書いている人々は、先ほど述べたように、電流をボルトという単位で表現するような人々ですから、電磁波の影響という物理的な現象をどのように捉えるかといった基礎的分析能力が無いと言えます。電磁波に関して日本政府が規制に乗り出さない、これは、エイズにからむ血液製剤の場合と同様で、色々とデータをもっていながらそれを隠しているのだという、まさに一般市民に受ける論理構成だけで押しまくるタイプの人々です。
 現在、個人的には、いくつかの例外を除いてまず問題ないと思っております。どなたか、確実な情報をお持ちの方は、電子メールでご連絡下さい。例えば、パソコンのVDT関連の問題は大体次のような実態ではないかと考えます。電磁波がでるVDT作業に従事している妊婦は流産の可能性が高いということですが、これは、パソコン操作のような精神的ストレスの高い作業をやらせるなということではないかと思います。VDTの電磁波の影響で角膜に傷がつくというある大学の研究結果が引用されておりますが、これは、高電場によって微細なゴミ(多くの場合には土ほこり)が加速されて眼球に届くためだと思っております。
 例外的にいやな感じがするのが、携帯電話、特に1500MHz=1.5GHzのもの、高圧線の真下に住むこと、程度で、後はそれほど問題にならないと考えるのですが、いかがでしょうか。 私が主宰している「人間地球系」の研究グループにも磁場の人体影響の専門家がおられますが、マスコミに対して積極的な発言をすることが求められていると思います。一般に、環境分野の専門家には、本当のところは無害であると思っていても、科学者の良心として、100%確実でないと発言しないということが通例ですし、やや悪どい場合には、自分の分野の研究の継続を狙ってなかなか本音を言わないという人すらいるように見受けられます。そのようなことにならないように、各研究者の倫理感が問われているように思います。大学人は、少なくとも「環境問題」に関する限り、「学問のための学問」よりは、「市民のための科学」を目指すべきだと考えます。

  さて、
「水道水の安全性」に移りましょう。これは、水問題の専門家横浜国立大学の中西準子先生からの受け売りですが、「最近環境にすごく関心を持っているのですが、最近の水道水は飲んで大丈夫なのでしょうか」という質問を受けるそうです。こういう発言をする人は、「環境問題に関心がある人」というよりは、「自分の健康だけを求める人」でしょう。欧米などの水の管理は、今や発ガンリスクを10万分の1に管理するという考え方に移りつつあります。すなわち、水道水を飲んでいる人の10万人にひとり(年間)はガンに掛かる確率が高いということを意味します。「こんなことではたまらない、ミネラルウォータを飲むようにしよう」、と思われるかもしれませんが、お勧めしません。なぜならば、ミネラルウォータは、食品の基準で管理されてますが、水道水は水道水の基準で管理されており、水道水の基準の方がむしろ厳しいからです。ミネラルウォータは天然物ですから、様々な不純物を含んでいる可能性が高く、ある種のものでは発ガンリスクは水道水よりも高いからです。それでは、10万人に一人というリスクではなく、100万人に一人の発 ガンリスクで管理をすれば良いではないか、ということになりますが、それには、実に膨大な装置を用いて、莫大なエネルギーを注ぎ込んでやればできるかも知れないという技術です。しかし、有限な地球上では、膨大なエネルギーを注入することは、今や罪悪なのです。すなわち、将来世代にエネルギー供給不足の危機を与え、場合によっては、温暖化を加速していることになるからです。
 それにもう一つ。他に発ガンリスクの大きな問題が多く残ってますから、一つの要素だけを極端に改良するのは、社会全体としての効率が悪いのです。例えば、喫煙です。本人の発ガンリスクは、数1000人に一人といったレベルで、極めて高いのですが、これは本人の意思ですから許容されます。しかし、同室の人々もやはりリスクを負っており、そのレベルは、数万人に一人といったレベルでしょう。食品の発ガンリスクは高いものが多いです。食品添加物や残留農薬よりも、通常の食品の発ガンリスクの方が高いことは、余り知られていませんが、事実です。また、ガソリン中に含まれるベンゼンを吸うこともリスクとしては高いでしょう。
 ということを総合的に考えて、10万人に一人の発ガンレベルで水道水の安全性を考えるのは、妥当なことなのです。

 それでは、市民として、何をどう考えればよいのでしょうか。本当は、専門家を信用することが第一です。しかし、残念ながら、霞ヶ関や銀行などの不祥事を見ていると、専門家だけに任せる訳にはいかないと思うでしょう。私もそう思います。しかし、人間は、くよくよしてストレスを感じると発ガンリスクが極めて高くなるということが知られています。ですから、まず、個人としては、ある部分を良く良く勉強して真実を知ることを試みてください。完全にものごとを理解すると、不要な心配は少なくなります。中途半端は一番いけません。そして、勉強の過程で、どうしてもおかしいと思うことが見つかったら、積極的に発言しましょう。それ以外の部分に関しては、誰が本当のことを言っているかを調べておきましょう。一度、完全にものごとを理解できた人には、誰が本当のことを言っているか分かるはずです。 そして、「XXXの恐怖」といった本や記事などの挑発には乗らないで、のんびりと楽天的に暮らすことです。それが長寿の秘訣です。

 以上