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プリウスを買った理由
         98.06.09
  






 ハイブリッド車 プリウスのエンジンルーム、右の白い箱がハイブリッドコントローラ


C先生:とうとうプリウスが来てしまった。まだ、1週間も使っていないので、本当の実力は分らないが、それでも、他の車と雰囲気が相当異なることだけは事実だ。

A君:まあ、C先生の立場だと燃費の悪いRVや、スポーツカーという訳には行かないでしょうから、プリウスで当然なのでは。

B君:いやいや、本来、車を買うべきではないのでは。

C先生:諸君らは勝手なことを言っている。環境ラジカリストではなく、まあ、インダストリアルエコロジストを目指している人間にとっては、環境を最大限優先しながら、経済の失速を招かない方法を探る必要がある。経済活動が死んでしまうと、それがまた環境問題を引き起こすのは確実で、現在のような不景気は、環境マインドにとっても良くない。
 車を買い換えることによる環境負荷、特に廃棄物の増大が気になっていたのだが、幸い、前の車(7年もの)を貰ってくれる人がいたもので、プリウスに変えた。自動車産業もアップアップしているから、景気上昇のお役に立てればと思って。もっともトヨタは好調のようだが。

A君:先生は昔からジャガーが理想と言っていたではないですか。先生の立場も分るけど、20世紀最後の贅沢として買うこともアリだったのでは。

E秘書:(お茶を持ってきて)先生のお宅の近くの道路は狭いから、もともとジャガーは無理でしょ。まあ、プリウスが分相応で良いところですよ。

B君:日本のような消費社会では、個人の欲望が無い状況、これが現在の不景気の原因の一つでもある。欲しい車が無い。勿論、銀行の体質の悪さや、不良債権問題など色々と直接的原因はあるが。

C先生:まあ、なんとでも言いなさい。プリウスの感想だが、一言で言えば、こんなに特殊な機構を持った車の割には「普通の車」である。ブレーキを掛けると回生ブレーキなるもので発電をするから、電車が止まるときの音がする。信号で止まっているときには、エンジンも止まっているから、全く無音である。燃費メーターがあるから、燃費を気にしてしまう。そのため余りアクセルを踏む気にならない。都内の車生態系ピラミッドの中では、前の車に比べて数段ヒエラルキーが下がったので、偉そうな車に割り込まれるようになった。そのためやや危険かも。感想は、こんなところだな。性能的には都内では困らないが、高速道路や山道では苦労するかもしれない。まだ分らないが。

A君:プリウスは6月から2000台生産体制に入ったようですが、売れるのでしょうか。

C先生:余り悪口を言いたくはないのだが、やはり「伊達と酔狂」で買う車だろう。
 もっとも心配なのが、ニッケル水素電池の寿命だ。5年あるいは10万キロ保障なのだが、もしも、それ以後に交換するとなると、値段が40万円以上すると言われている。この値段のために、結果的にこの車の寿命が短いものになるとしたら、本当に環境負荷が低いと言えるかどうか、これは問題だ。
 「伊達と酔狂」の意味だけれど、トヨタとしても原価を切って?(トントン?)販売をするような車、すなわち、社会的実験としての意義(勿論、広告塔としても意義もあるだろうが)で売るような車にだから、その社会的実験に参加してみるという「心意気」だと受け取って欲しい。

B君:それは少々格好付けすぎですよ。

C先生:ところで、今日本政府は、温暖化防止のための大綱を決めようとして、各業界に二酸化炭素削減の計画を出させている。この話しもプリウスとは無関係ではない。自動車業界も、10%とか20%とか言う削減計画を出したようだが、それはあくまでも産業部門における二酸化炭素削減計画であって、要するに、製造時だけが対象だ。しかし、ライフサイクルアセスメントの思想をこの分野にも持ちこまなければならない。要するに、ライフサイクルCO2という考え方、すなわち、車を作る段階、使用段階、廃棄段階のすべてにおけるCO2排出量を下げることが重要なのであって、車の場合には、使用段階の排出量が最大であることが知られているから、燃費の良い車を作ることが最も有効な方策なのだ。
 プリウスの場合には、バッテリーだとか、モーターだとか余分なものを積んでいるから、製造時に排出する二酸化炭素の量は増えているはずだ。しかし、使用段階で公称燃費が倍だから、二酸化炭素の排出量は半分ということになって、ライフサイクルCO2で見れば相当下がっている。もしも、産業部門の二酸化炭素排出量を下げることが至上命令になってしまうと、ライフサイクルCO2は低いが、製造時には排出量が多い製品は製造されないことになってしまう。
 単に、産業部門の排出削減をするだけでは駄目で、ライフサイクルCO2を下げるような社会システムが必要なのだ。この意味では、燃費の悪い車には重加算税を課すとか、燃費の良い車は、自動車税を特に割り引くとかいった措置が必要。

A君:ところで、プリウスに通産省が補助金を出すという話しを批判しましたよね。個人にはやはり補助金は出なかったのですか。

C先生:出ない。先に言ったような、半分は「伊達と酔狂」かもしれないが、「心意気」で社会実験に参加する個人にこそ、補助金が必要。特に、バッテリーの交換といった不安を解消できるような補助金だったら最高。企業イメージを上げるためにプリウスを導入した企業を知っているが、このような企業にも、また同様の動機をもっている地方自治体などにも、補助金を出す理由は無い。
 補助金は社会システムを変えるために使うべきだ。